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次元断層帯の裏で蠢めく謎の物体。
それこそがこの世界に現れる現象として次元震を引き起こす。
今まで誰にも知らなかったのは何故か。答えは簡単だった。単純に一箇所にとどまってはいないからだ。
人々は突然起こる絶望に恐怖し、国も星も全てが死に絶えた事すら数え切れないほどだ。
では、何故今まで誰も考えなかったのか。
理由がある。それは考えを告げても証拠がないため自力で探しに行くが見つからず、見つかればデータを収集しようとする。するとそこには大きな次元の割れ目から覗くギョロッとした目玉がこちらを見るや否や割れ目を強引に割って突き出た口。その大きな口を開け、そのまま食べてしまう。そうするとある程度は残るかもしれないが化け物は船を咀嚼しつつ残骸は次元断層の中で吐き出す。吐き出されたものは一生次元断層と外の世界の間を漂流する、宇宙空間には出ない、一切痕跡を残さない。だからこそ存在が闇のまま、噂という妄想だけは語り継がれてきた。
『特別警備警戒態勢』
災害の発生を予期し前もって対処にあたれた時のみ発令される星系内共通命令書をこの時この時間発表された。
その命令が発行されたことで本来の被害の1億分の1にまで被害が抑えられたことを3年後の研究で明らかになった。「発行した時は、どれほどの被害が及ぶかが分からなかったが大規模な被害が少しでも減るならと発行に踏み切った」と特殊特務大隊所属第七大隊の智也大隊長は3年後の研究成果発表時に語った。
時を戻そう。発令されて15日ほどが経過したころに戻ることにしよう。ちょうどこの辺りから事態が動くのでちょうどいいタイミングだろう。
「隊長」
ソナーを見ていた交代要員が何かに気づき、隊長に報告した
「どうした」
「次元震を確認。ただしミッドガルツ宙域ではなくノルトキツキア宙域との間で多数の反応を確認しました」
「!?どういうことだ!次元震が、動いている?宇宙にも地殻みたいなのが存在するのか?確かに次元断層というくらいだからあるとは思っていたが・・・なら、地震は断層全域で行われるかもということなのか!!」
「落ち着いてください」
「すまない」
指揮官があせれば部下も焦る。落ち着け。まだ大丈夫だ
「ゆっくりとノルトキツキア星に近づいてはいますがまだ時間があります。現在の場所で起きたとしても避難は間に合いますが、」
「早めの避難準備は被害の減少に繋がる、か。よし、ノルトキツキアに避難命令出してくれる」
「了解です。というかもう送ってますけどね」
先走りに感じるけどこういう時には二手三手先を進んでくれている方がいいからな。
「隊長、返信が来ました。読み上げます。
こちらはウェルス大佐だ。
貴君の命令を受諾。
被害軽減のための早期警戒と危険地帯からの報告を心から感謝する。
貴君も気をつけてくれ。次に会ったら酒でも酌み交わそう。
以上です」
「返信、了解です。その時は飲みましょう。以上 送れ」
ノルトキツキア方面に何故、地震が近づいて行くのかが全く予想がつかないが、何かきっとよくないことが起こっている気がする。
『特別警備警戒態勢』発令して2週間たっている本来ならこの警戒がここまで長引くことはない。大災害の兆候がはっきり観測されてるのに発生されるであろう場所では地震計の観測が少なくなっている。逆に今度はノルトキツキア方面に地震が近づいてきてる。偶然か?いや、不明ではあるが星と星の間で発生してくれればそれだけで極端な被害は避けられるかな、ただ2つの惑星が確実に被害を受けることが確定したがな。
とりあえず、解析班に現状報告聞くか。
「どうだレティ。現在の観測状況は」
「隊長、何も。現状小さな地震がノルトキツキア惑星に向かっていますがある一定の距離で引き返す動きを見せています」
「引き返す?なんだそれ?」
「さぁ、わかりませんが、今はミッドガルツ周辺宙域に近づいています」
「データ収集してたよな」
「ハイ」
「比較して戻る前と戻ってきてるデータを比べてくれるかな」
「わかりました。やってみます」
「頼んだ」
どういうことだ?地震計の誤作動か壊れたならわかるが、すべてが壊れたということはあり得ないから戻ってきてると。
まるでいつか研究論文の没作品集で見た『次元断層の地震と、鯉についての考察』の中に確か、池の鯉が、池の端を泳いでいて、気分的に反対側に泳ぎに行ったとする。泳ぐとき背びれで水に波を起こし波紋を残す。まるで、次元断層の地震のようではないか。私は池の鯉たちに餌をやるとき彼らは私を認識して近寄ってくる。まるで次元断層には生き物が済んでおり、獲物が近くに来ているので表層に上がってきたときに次元断層の揺らめきが表層と宇宙空間の間のわずかな空間で波紋が衝突し、これが地震として観測されるのではないだろうか。
みたいなことを、今回の資料を漁っていた時に出てきてた。
ん?なんだこの違和感
まるで、今回のことを言っているんじゃ?
論文を書いた研究者は、もう200年前に死んでるらしいし、そもそも次元断層の噂を自分で再構築しただけで、周囲にもネタとして書いたと言っていたが、これが正解なのでは?
次元断層と呼んでいる空間に何か生き物がいると仮定して、んー次元断層とサルガッソーが一緒の意味になるんだが、この場合サルガッソーの意味は確か、二度と抜け出せない墓場だったかな。
次元断層は確か観測されたことはないがサルガッソーがあるのだから存在はしているのでは?現に、次元震は観測されているので断層が確認されていないだけで宇宙にも地殻のようなプレートがあるのでは?から発展した考えだから、正しいのかわからんが。
今回使うとしたら次元断層。それが正しい言葉の用い方のような気がする。
構想の寄り道したかも。戻ろう
まず、俺も仮定をしよう。
1.次元断層には生き物かそれに準ずる怪物的なものが存在する
2.そいつが通常空間に出現、もしくは近くに来た時地震という結果がこちら側にもたらされる
3.今まで、船並びに船員が未帰還なのはそいつが食っていたから
・・・
無理がありすぎるか?
【無理な仮定ではないと思うぞ、智也】
誤字脱字、もし見つかれば報告、よろしくお願いします。