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「退却ー、退却ー!」


 悲鳴が聞こえる。逃げ惑う人々が脱出艇の場所に辿り着く。脱出艇には船の乗組員がお客さんを随時乗り込ませて定員になったタイミングで、運転手として乗組員が1人搭乗して船から離れていく。

 続々と脱出艇を使用して船から逃げ出す。



 そこに現れる船は・・・・誰も現れない。救難信号を発信しても誰も答えてくれない。


「なぜだ、なぜなんだ!今すぐに誰か来てくれないと」

「ダメです。この空間は通信ができないのはわかっていましたが、ここまで酷いとは・・・・通信は絶望的で、脱出艇は流されています。たとえこの空間に待機できる船が来れたとしても、脱出艇を回収できるほどの待機時間は確保できません」

「ならどうしろというんだ?副長!この空間から通常空間に復帰出来る案は?今も多くの乗客が脱出艇という名の棺桶に乗って死ににいく船に乗っているというのに」

「乗員もですけどね。今確認できてるだけで、機関科から数名が乗り込んでますが他は客室乗務員の皆が先に乗り込んで脱出艇を接続させているみたいです。一応ここから見える範囲では一隻も漏れはなさそうですが、いつまでそうして置けるか」


 どうすれば良いかなんて俺にはわからない。だが今わかることは全員脱出と決めたからには脱出を遂行させないといけない。

 機関科はエンジンを止める作業の真っ只中。

 客室乗務員の皆は脱出艇で乗客の全員を脱出させている最中・・・。そして我々艦橋にいるメンツは、


「私と副長はこの場に残る。皆は残った乗組員を探し出して機関室に向かいつつ残った乗客の最終確認を。君たちが機関科についたと同時にエンジンを停止作業をやめて脱出作業に変更。速やかに船を捨てて逃げろ。


 副長、彼らが捜索の末に機関科に辿り着くまでどれくらいかかる?」


「15分。捜索に10分、3分でまとめ上げて船を脱出する最終便を出すのに2分」


「我々のいる場所はたとえどんなことがあっても、最後になるはずだ。この船は確か艦橋が脱出艇にもなると聞いたことがある。脱出艇が外で集結しているなら合流もする。そしてその場所で次の指示を出すぞ。行けるか?」


「やってやりますよ。船長!さぁさぁ、みんなは早く乗客の捜索を頼みますよ!船長が最終確認するには時間が確かに足りませんが、航海長が責任者ですからやれますよ。任せましたよ。私たちは早々に脱出せずに船をなるべく遠くに移動させます。理解していると思いますが、我々が合流するまでは航海長が責任者ですからね!頼みましたよ」


「エレベーターの最終確認はできた。君たちがそのエレベーターを使用して下に降りた時点でこちらからロックするから早く行ってくれ。次の指示は君の携帯端末に送信してある。時間差で全乗組員の携帯端末にも指示を出してあるが、我々の次の責任者も責任者順は指示通りにな」



 エレベーターの閉まる音と共に副長のため息が聞こえてきた。


「俺も行きたかったけどなー」



「悪いが、お前はどっしりとしているからな。混乱している連中よりもこういう時はやはり部下が俺にとっては信頼性が高いんだ。それに家を出て行かれた俺と違って、こないだフラれたお前と一緒にいる方がいいだろ。独り身同士なんだから」


「ま、そうなんですけど、なんか腹立ちますよその言い方。この職場に一緒に来はしましたけど、カップル成立多くないですか?職場恋愛OKにしては俺、告られてないし告ると笑いながら断られるし」


「あ、お前彼女欲しかったの?こないだ俺に聞きに来たやつにしばらく彼女いらないみたいなこといちゃったよ。ごめんて、そんな鬼の形相だけはやめてって。次の船の時には紹介してやれるやつ見つけてきてやるからさ」



「毎回思うが、なんで船長って俺を最後に毎回残すんですか?前回の厄介ごとの時も最後まで残らされたし」


「だから言っただろ。元部下としての絶対の信頼があるんだ。お前以外に阿吽の呼吸を合わせられるやつなんかいないし、諦めろ。

 それに結構絶望してるけど、お前もなんか安心してるところあるだろ」


「あ、わかっちゃいました?実を言うとこないだ救援で来てくれた船が来てくれる気がするんですよね」


 あー、こないだっていうと俺たちが船を一回降りた時の話にまで遡るやつかな?あの時応援で来てくれた奴は結局船が損壊して廃船扱いになったと聞いたが、あれだけの優秀な乗組員たちがまた来てくれるっていうのか?


 確かに今の現状から見ても絶体絶命ではある。なんたって、宇宙空間の中でも結構上位のワープ空間での加速中の事故。1秒の何分の1というレベルでの加速中の出来事だ。通常空間からこの空間に飛び込めば最大船速になるはずだからこの空間で停止することはできない。どんな船でも無理だろう。我々の常識にはわからないが、昔聞いたことがあるのは、このワープ空間で1cm動くだけで時間だけは1年動いているのでは?と言っていた。だからこそこれだけゆっくりと動いているのだ。何百年と過ぎ去って、私たちが通常空間に出るまでに私たちの体は干からびている可能性の方が高い。


 だからこそ、最後に共に死ぬなら共に苦楽を共にした戦友と決めていた。あいつがどう思おうと


「艦長、後方から猛スピードで迫る物体観測。急制動をかけている模様ですが、この空間でそんなことをすれば・・・」


「ワープから出るための行動だろうな」


「・・・・ん?あの、キューセードーかけてましたが、大きな網を展開しました。

 そして他にもケーブルアンカーが・・・・いや錨ですね。どこに打ち込む気?この船に打ち込んできてる!」



「何!?」



『見つけたぞ!どの行方不明船かわからないから、大きな網で脱出艇を確保するからこれ以上、脱出しないように!そして船に乗っている連中は、どっかに捕まれ!このまま通常空間にまとめて復帰するぞ!』


【緊急制動、ワープ空間から通常空間へ緊急脱出。脱出先の位置情報サーチ準備開始。

 急制動まで3、2、1】


『復帰!』


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