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誤字脱字、もし見つかればご報告、よろしくお願いします。

 

「ならこのデッカく開いた場所に大きめのエンジン何個か仕込めばいいのさ!」

 と、何とも豪快な答えが返ってきた。



「あ、それ無理。現在の生産ラインの進捗情報なんだが、何処かのピンに不良品が紛れてたらしくて危ないから、一時的に生産停止中だって」


「じゃあ、どうするんだよ。既存のエンジンじゃこのデカブツは動かないぞ」


「何個も乗せる仕様は無理だって話。

 この艦のエンジンは既に発注済みで既に生産ラインを終了して今は検査の段階。

 何個もと言ってもせいぜい4、5個くらいだろ。今頼んでるのは2つだが中々良い感じに仕上がっているって話だから多分大丈夫だろう」



 中々に重たい空気をさっぱり切り抜ける事で皆が一瞬“えっ?”って雰囲気にはなったのに覆したな。恐ろしいやつ。



 それでも検査が少し長引くらしいので、3日の猶予があるとのことなので、それ以外の場所に行って検査を続行することにした。オレと工房長の2人で。


「他のメンツが見たって言ってたのに信用もしないのか」


「亡霊さんよ。何事にも二重チェック三重チェックという点検のしすぎというのは良いことなんだぜ。これ以上ないってくらいの点検をして送り出すことが、俺たちは開発局の局員の誇りさ」



 安っぽいホコリだな。


「なんか意味違う気がするのは気のせいか?」


 鋭いコメントありがとう。


「それで、どうだ?初代が作って、俺たちが内装をちょこっと弄っているこの艦は?」


 感想を求められてもなぁ。


「そこまで乗っていないから確実に何処がどうとは言えないが、案外無茶をしても何事もなく帰って来れる艦だとは思う」


「そうかそうか。それは最高の褒め言葉だ!

 よく艦は仲間と一緒に海に沈むとか馬鹿な事を言い寄る奴も中に入るんだ。だが、そんな事はない。艦の最後は船員に見送られながらの廃船になり鉄屑になるかその後の人生を再出発できるように整えてやりたい。

 もちろん軍艦だから難しい事は理解しているし、どんなことがあろうと乗組員の命には変えられない。だがどうしても港に戻ってくる船には“おかえり”を言いたい。

 逆に出発する船には“いってらっしゃい”コレだけで良いのさ。本当にそれ以上の感情を込めるなら、乗組員の身内や仲間だけで十分なのさ」


 工房長の思いが十分に伝わってくるな。

 それでもその思いや優しさの少しはオレにも少しだけ欲しい。





「ちょっとしたヘコみやキズなんかも修理対象だから、今のうちに治すぞ!

 ほらさっさと手を動かさんか!

 遊びで連れてきたわけじゃないんだからな!」



 聞いて驚け。

 何と周りの職人さんたちに聞いた工房長のイメージも呼び方もまんま、親方。


 オレもそう呼ぼうとして一回だけ呼んでみたら、急にお客様態度止めるとか言って、暴力ではないが言葉遣いが変わった。


 ぶっちゃけ怖い。


 誰だよ、呼んでみたらとか言った奴。・・・出てこい。オレが成敗してやる。面白半分だったな。



「オイ、手が止まってるようだな?

 そんなにオレと一緒に残業したいなら言ってくれたら良かったのに。

 オレはどんな事があっても親方呼びはまだ嫌なのに呼んだお前が悪い。働け、エルフ」





 それから2日間は地獄の修復作業になったトイレ以外常に一緒に活動させられるという地獄だった事だけはここに明記しておく。




「本当に寝る時も一緒だとは思わなかった」


「お、エルフの旦那!お疲れ様っした」


 オレを旦那と呼ぶコイツがこの2日のデスマーチを引き起こした張本人である。


「出たな、諸悪の根源。ここであったが100年目」


「どしたの?いきなり。初対面に近い人に向かって呼んじゃダメだよ。リサーチして呼んで良いのか聞かないと、ね!」



 あぁコイツ本当に腹立つな。

 そしてワハハと言って手を振りながら去ってい











「オイ、亡霊に馬鹿な事を言ったのはお前だそうだな。亡霊の顔に書いてあるぞ。逃げたな、と」


 鋭い視線から、飛び出たのは・・・心臓を鷲掴みにして逃がさないように話しかける、工房長。既に怖いのに顔を寄せない。

 軽く青ざめているところに、お告げがもたらされる。


「お前、トイレ掃除な。この艦が出航するまでの間、この艦のトイレ全室。

 逃げたら、わかるよな?」




 その後、彼は出航するまで姿を一切見せる事は無かった。

 因みに余談だが、出航後最初にどのトイレを見ても白い陶器製なのに自分の顔が映り込む現象が多数報告された。



 その後、智也が直接出航携わる事なく試験航海をするたび、エンジンの不調や異音を聞き漏らさずに調整する事で得られるテストデータ取りを満喫して最終確認に電子判子が押されて、修理完了。




 長かった修理に対して我がことながらみんなで酒盛りして、翌日正式に艦を引き渡した。

 一瞬だけ自分が昨日までいた場所に未練を感じながら、智也が出航を宣言する。


 錨が巻き取られ、艦を固定していたガントリーロックも解除されることで、船体が徐々に右に傾くが、補助エンジンをスタートさせてスラスターで微調整。




「さぁ、万全の準備が整った。そろそろ出発しようか」


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