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誤字脱字、もし見つかればご報告、よろしくお願いします。
彼バリグストくんは最後まで話してくれた。少々終わりは気にはなったが。
「ちなみに結果としては成功したそうですよ。今義息達がここに休暇で来てくれた。そのおかげで現状どうなっているのか、今後どう動くのか、守秘義務に抵触しない程度に情報を得ることで私たちの今後の行動目標もできます。ですが、まだこれ以上の話をするにはまとめなければいけませんから、これ以上は難しいですがこんな感じで後世に残していきます。それに私はどちらかというと口伝師にはなるよりも情報を持ってくる方が性に合っているので早期に後継者を見つけてこの仕事からは手を引きたいですね。全てを記憶できたとしても一瞬で頭から引き出すのは私には難しいので」
ハハハハ、口伝師とは本当に全てを・・・記憶できるんだな〜。
「それでも記憶できるんだからすごいことじゃないか」
「そうですかね?ワイはどちらかというとのんびりと生きたい派なんですがね。嫁の方が経験豊富ですからね。私の一族はどちらかというと口伝師という職のおかげでエルフの最初の種族意思決定がまとまったときから生きている古木ですから。ハハハハ、古木とはエルフでは古い血族を意味するんですよ。ワイからしたら老木の方が近いと思いますがね、老害はいないだけマシですが。誰もめんどくさいことを後年になってしたいものはおりません。誰もが役職を得て500年くらいで世代交代です。口伝師は少し長くて7、800年くらいが平均ですがね」
へー、そんなに長い年月するんだねー。年代が一世紀を軽く超えてくるせいで、予想外という言葉しか出て来ないな。
物語に出てくる英雄的存在にはなりたくないからとちょっとだけ駄々を捏ねた。ただ観光したかったんだけどまさか2千年近く経っているとは誰も思わないだろ?世界を少しだけ見て回りたいといえば、是非是非貴殿の発案された探索班にどうぞ、とか言われるし。
それにしても、時差の影響でこの世界の100年は向こうの10日くらいにしかならないので気にしなくて良いとかうちの技術屋もすごい自信と技術力だな賞賛できるほどなのに世間に公表は控えるとかいうし。
流石に彼らとの技術交流はまだ控えるべきだろうな。うちの組織もそれなりに、どんちゃん騒ぎがあったおかげで今動くのは控えろとのお達しが出て、こうして過去類をみないほどの休暇が許可されたことには感謝しているが・・・・。
さて、ワイことバリグストくんにちょっとお仕事の依頼でもしておくか。
もしもに備えて今回から導入された、俺の組織お手製の睡眠学習に細工して記憶をなくした時や必要なデータが取り扱えなくなった時のために緊急回避コードというのが各人に配られた。
このコードと俺の個人コードを組み合わせて記憶が復活する仕組みを・・・なんて言ったかA?B?N?あー、思い出せないが、何かあって帰還ができない時のために信頼できるものか、一定時間保管できる保管施設などに保存してくることを義務付けられた。
こんなこともあろうかと、色々な手段で回避コードを使えるか実験したが、どれもダメ。使えるのは、本人が本気で思い出せない喫緊の緊急事態を対処するための専用コード。一般や犯罪者がこれを入手しても個人個人で配布された専用コード。それに、戦争を始めるためのスイッチでも始めるためのコードというものでもない。
ただ本人に必要な記憶が蘇るというだけ。
俺の居た世界とは、関わりが一切ない世界に来る事にした俺に用意されたコードは3つ。
一つは、個人コード。軍人のための認識番号はこの世界の人に発音できない可能性を考慮に入れられていたが、言葉や文字の解析を持ち帰ったお土産やビデオから検証した結果、問題がないとのことで、これは大丈夫。
二つ目は、パスワード。前記憶のバックアップデータを脳に高負荷をかけて思い出す仕様にするのか、今まで体験してきた事柄も覚えて置いて、過去の情報もすり合わせて思い出すか。
どちらか選べるパターンになっていたが、もちろん後者。
誰も前者を選ぶものなどいなかった。
三つ目が、個人の認識コードとパスワードを本人に言わせるのは確実なんだが、もし言えない場合。例えば口が聞けなくなった場合に備えて、視覚聴覚を利用した特殊な神を渡されていた。これには光を利用した俺には一切わからない特殊仕様で、聴覚も同様にいまだに誰も使用できたものはいないというのは嘘ではないだろう。
誰も、そんな状態になってまで辛い記憶を思い出したくないだろうし。
俺は流石に嫌だけど、必要に迫られたらやってしまうかもな。目の前で困っている人がいれば、助けたいし。
というわけで、これを口伝師で語尾にワイと言っているおじいちゃんに頼もう。
俺にとってこの世界は唯一、世界を救った場所だ。二千年という長きにわたる戦争を無くし、平和路線一本でやってきた世界なんだから、この世界に降り立った瞬間から本気で観光してみたかったんだ。どんな感じになっているか大変気になるな。
人類は、100年。獣人種族も一緒ぐらいと聞いた。ドワーフは少し長めで、エルフが1000年生きれば年寄りに片足を突っ込み、2000年生きれば、古木を地で行っていると言われる猛者。俺にはわからない世界が広がっているが、ドラゴン種族は1万年生きるものもいると言われている。いつかは、ともにあの時戦ったもの達に会いたいものだ。
だからこそ、
「口伝師に一つ依頼したいことがある」
「ワイにか?」
「あぁ、俺にとって大事でこの世界に来た意味を思い出すためにも、次会った時に言ってもらいたい言葉がある。頼んでもいいか?」
こうすれば、何も知らなくてもいけるか?何、心配するな。俺のは短いからすぐに覚えられるさ・・・・。ちょっと呪文みたいに聞こえるかもだけど。
「____________、___________」
「わかった。これを言えばいいんだな。任せろ。
何か、君にとって重要なことなのだけはわかった。人には言わない。いつかまた会う日を楽しみにしているよ」
「頼んだ」
こうして、口伝師のワイと嫁が見送る中、娘家族が見えなくなるまで手を振り続けた。
[To Be Continued]
次回、第十四章__編