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誤字脱字、もし見つかればご報告、よろしくお願いします。

 


 ふー。やっと書き上げた報告書を見て、満足に頷いた。そして周りを見たときハイネがこちらをずっと見ていた。


「何見てんだよ?」


「え?だってずっとキーボードでカタカタ言わせながら、フヘフヘへとか言ってるんだぞ。不安にあるのはこっちだ。何を笑ってるんだよ。気色悪い」


 ハイネは報告書を書き上げている俺がおかしな反応をしていたことで怯えた姉と弟に訴えられて様子を見に来たらしい。


「えっ?なんて、俺が気色悪いって、なんでだよ!ただ報告書を書いていただろ。なんだよ、ちょっと思い出し笑いしていただけだろ」


「はぁ、それでなんて書いたのさ。報告書はこれまでの感想文じゃないんだぞ」


 そう聞かれれば、答えるしかない。今までの経緯を改めて話すことになるとは、な。



「まず、書類を書き上げてサインを書き上げ、部屋に戻ろうと扉を開けたら宇宙船にいた。振り返ったら俺のいた世界は消え失せ、倉庫になっていた。

 その宇宙船は、もうすぐ消えてなくなると言うことで乗組員と一緒に船を脱出したため、」




「・・・待て待て待て、え、え?本当にそんなことを報告書にして出しちゃったの?

 まじか?おいおいおいおい」


 ハハハハハ、嘘に決まってるだろ。報告書にそんなこと書けるかよ。無理に決まってる。俺はそんな馬鹿なことを書いてクビになりたくない。


 まぁ、今さっき語ったことは俺の胸のうちの本当の話。

 うろ覚えになりつつあるせいで、ちょっとだけ最初の方とか、行った行動の精査はできないことで嘘は言っていないが、ある程度帳尻を合わせた感はある。


 だけど、これだけは言える。これはデカいSF作品として世に出してもいけそうなくらい小説を書ける気がするが、俺にとっての思い出話で終わればいい。それがあの世界と俺との絆になるのだから。


「それで、本当はなんと書いているんですか?不思議なんですよ。変な想像をしながら書いたから不気味な笑いを起こしてたんでしょ?俺だって素直にはいそうですかとはいきませんよ。 ちょっと!横みて視線も逃げない。こちらを見て!」


 ハイネ、うるさい。俺はまだあの世界での話を語りたくはないの。

 それに一応書き上げは終わったから、この後少しだけ眠りについたら話してやるよ。本当の俺が体験した話を・・・・。


「本当だな!あんたの独り言が嘘じゃ無い証明をしろよな!

 おい!なんで俺の思ったことがわかるんだとか言うなよ!お前、口に出してるからな!こいつ馬鹿じゃねとか言うなよ!!」



 ははは、先程までのことは全てバレてた。眠気に負けて言ってることと思っていることをテレコにしてたらしい。なら、しばらく寝て起きたら話すとしよう。


 長い長い、物語のような、平和を作るための礎になった者たちの奇跡の物語を・・・・









 遠く、そして過去から未来永劫。その星において、誰もが一度は思い描いた奇跡の物語。

 戦争のない世界を思い描きながら、銃弾の雨を避け血煙の中をくぐる生活をしている。


 我々の見てきた世界は等しく戦場だった。


 戦争のない世界は、首都や生産を主にした惑星で、中立を謳う国ほど怪しさ満点の星系が存続できた試しはなかった。


 そう思っていた。


 俺たちは、若き頃にそんな夢や野望を描いて、星を飛び出し世界を見回したが、どこにもそんな希望のかけらも存在しなかった。

 この世界で唯一気を許せる友との出会いだけが俺のカサついた心に潤いをもたらしてくれる。


 それから数十年が過ぎた。

 友は世界を変えるために星系のトップになるものや、自ら軍を率いて独立国家になるものや、世界では異端だとされていた中立国の長にまで出世したものたちがいた。俺は、そんな彼らを誇らしい気持ちで見ているが、俺だけは、この心にポッカリと穴が空いたように感じていた。


 彼らは自分の未来と世界の行末を見届けるために頑張っていた。もちろん俺も頑張ってはいたが、それでも彼らの情熱を俺の故郷に届けるには至らず。それでもなんとか次期国のトップになれることだけは確定した。



 世界は、いまだに色濃く残る闇。彼らはそんな運命をも決して屈せず、闇を切り裂くものとして誰にも悟らせずに、自分の思い描いた夢に向かって歩んでいく。


 俺にはそんな世界が眩しく見えて、絶望していた。彼らは着実に世界に影響を与えられるほどの権力と力を持ち始めたのに、未だ何も持たないただの子供。


 俺は、エルフ。彼らとは時間も人生もゆっくり進んでいく。


 転機が訪れたのは、彼らが脂の乗り切ったいい中年になった頃だった。


 俺の前に現れたのは、いつどこから乗り込んだかわからない人族。今も昔も平和を謳いながら、平気で戦争を起こしているものや、俺の友のように戦争を反対する意思を持って立ち向かう勇気ある種族。


 果たして、彼はどちらに傾くのか、俺は黙って見守るのも性に合わない。だからこそ、彼に聞いた。その答えは、単純んいして明快だった。



 友の星や世界を平和にしたい。


 ただそれだけが願いだ。だから力を貸してほしい。俺には、未だにそんな実力も備わっていないと知りながら、送り出してくれる仲間に感謝を述べて、世界をもう一度なんとかしようと旅に出る。


 まずは、この友の世界をどうにかしたいと思っている人族と、俺の仲間を引き合わせないとだな。

 運命の歯車は、それから回さないと。




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