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誤字脱字、もし見つかればご報告、よろしくお願いします。



『射出します。本当によろしいのですね?』


「あぁ頼む」


後方ハッチのところに宇宙服を着て手を振る護衛たち。彼らとの別れは先ほど済ませた。こちらも手を振りかえしたいが、この脱出艇の構造上窓自体が少ないから彼らをディスプレイ越しに見るしかない。


『英雄の帰還を心よりお待ちしております。お気をつけて』

「ありがとう。さらばだ、みんなにもどうぞよろしく。体には気をつけてな」


そうして、脱出艇は射出された。


前面に見える景色は、宇宙。煌めく星々を記憶しようと目を見開き、この一瞬一瞬を記憶に焼き付けていく。彼らの乗る船が見えなくなった瞬間に衝撃と共に急制動。レーザーで捉えられたのだ。俺の脱出艇はトラクタービームの牽引柵で簡単に捕まえられて曳航される。そして、今本来の仲間達のもとに戻る。



「ただいま」


『全くだ』

『おかえり』

『おかえりなさい。隊長』


こうして、この世界ともお別れの時間が近づいたという実感が湧いてきた。



「さぁ帰ろう・・・・と思ったが、なんだこの暗い機内。何があったんだ?」


「えーと、問題はありませんよ」

「そうそう」

「大丈夫だから、隊長はこの部屋でゆっくりと休んでてと言いたいけどさ。この機内にそんな上等なお部屋がなくてね。航空機のシートくらいしかないんだ。だからそこで寝てて。もうすぐ、動くはずなんだ」



あぁと答えてシートに深々と座る。そして最後にハイネが発言していた言葉をリピートする。

もうすぐ、動く()()・・・はずだと!?どういうことだ?すぐに動ける状況でないのに、このポイントでずっと待機中だったのか?それとも他にトラブルがあって今身動きが取れないだけなのか?



「隊長」


真剣な態度と表情で近づいてきた弟の顔を見るとそこまで絶望的な表情ではないが、油断はできない。だからといって憶測で叱るわけにもいかないので、続きを促した。


「隊長。今現在機内の状況が暗い理由と、動かない理由があるのでご説明します。


俺たちの故郷に戻るための時間と位置の調整をしていることが一つ目。

次に二つ目が機内の電圧が安定するまでは機内の照明を落としているということ、この機体を借受した時に言われたのが、地上でのエンジン点火は大丈夫だが、宇宙空間では電圧の不備でエンジンが点火できないか、機内の照明各部に逆電流が流れて壊れることもあるので、一時的に機内の落とせる電源は落とせとマニュアルにあるんです。

すいません。結構めんどくさい船で来てしまいまして。ですが、エンジンの点火はもうまもなくいけます。もうしばらくお待ちください」


エンジンの点火に必要な電力の確保はわかったが、過電流や逆電流なんかが起きる理由は、まともな整備をしていないからこそ起きるということなのかな?わからんが。

それにしても、ヒーターすら切られて皆が作業していることに驚きだな。


『まもなくエンジンを点火します。現在出力89%にまで上昇中。

点火5秒前、3、2、1、点火完了』


エンジン点火からおおよそ中数秒で明かりも温度調整のファンが回り始めた。


これで移動を開始できるので、良しとしよう。


「隊長」


おっと、今度はハイネが来たようだな。


「ハイネ、お前はこの機体で仕事があるのか?」


彼は首を振った。


「ない。ないが、原鵺と俺には報告義務という重大なことが待っている。今ここで今までに有ったことをまとめるのが得策だと思うのだが?」


「確かに。今までのことを要約するための資料を作るか。大変だろうけどやるしかないな・・・。何笑ってるんだよ。まるで俺が真面目に何もしていないかったわけではあるまいし」


ちょっとだけハイネが俺を睨む姿に今は、イラっとする。

それでも喧嘩はもちろんしない。淡々と原鵺が語った話の内容を1から記録にまとめていく。


原鵺の個人データはしっかりとした機関にて調査を開始する。


今はその機関に入れていいかどうかの洗い出しをする。もちろん原鵺にその仕事はしない。

不都合なデータを掃除するのが得意な人たちもいるから彼らに頼むことにした。



「ちょっと、私が整備と修理を頑張っている間に何?あんた達は仲良くココで今後のお話合いをするのではなく、お茶でもしに来たの?まさかだけど、お菓子を選ぶためにここへ来たと言うのか?」


思っていますと言う顔を今しやがった。


「今は報告書のための前段階をしていたんだ。そう切れるなキレるな。あまりにもたくさん切り捨てたから、問題なく書けるはずだよ」


「本当に省けるとこは外したんだよ」


そう豪語するが、この資料を見ながら書けば間に合うと、そう信じて、それ以上は考えないようにしていたら、船はゆっくりと星達が見守りながら、発進を確認した。


これでもゆっくりしたつもりはないと後で艦橋に上がったときに教え込まれた。教えてもらっただけでないのは、弟の頬に、蛇が絡みついたかららしい。


「さぁいよいよ、お別れですね。また来るからそれまでは、元気でやんな」

手を振りながら、ずっと遠くに見える惑星を眺める。


最後の一瞬たりとも見逃すもんか。これから帰るあの場所に行く最後のお別れなんだから。


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