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誤字脱字、もし見つかればご報告、よろしくお願いします。
「で?」
今やっていることの根幹全てが消えて無くなる恐れがあった。それは・・・。
「すいません。まさかこのタイミングで素破抜かれるとは思っても見なかったので・・・。この星どころか他の惑星で政府の弾圧からも持ち堪えていた記者たちの行動力に驚かされてばかりです。本当にすいません。一応情報統制を行なうことで合意して貰ったタイミングでしたので、記事になったのは三流の情報誌でして、他の情報関係者から否定してもらうことで今回の癒着疑惑と個人情報偽装疑いのある英雄の隠蔽を無かったことにはできませんが、ある程度誤魔化してもらうことになりました」
はぁ、今まで俺がいなかったことにしようとして居たのに、まさか報道関係者に全ての悪事というわけではないにしろ、戦争の英雄とは人々が語り紡ぐことでこそ英雄であれば良いのに。その結論を掘り起こそうとはしないでほしい。
「了解した。君たちがこれ以上こちらの手を煩わせないのなら良い。
それで、君たちはこれからどうするのかな?」
「一応、貴殿の護衛を兼ねて最終的な調整に入ります」
「そうか、ならこちらも変える準備を行おう」
これがこの世界でできる最後の仕事。確かに世間に大っぴらにされるのはいただけないが、世界の平和を揺るがす存在には、俺が次にどこに向かうかをそれとなく情報を流してもらっている。
この最後の仕事で俺はここを去るとはいえ、感慨深いな。数ヶ月と経った世界に別れを告げるのは、悲しいかな。大切な人たちとの出会いと別れ。出会いをせずとも、ともに戦場を駆け回った同志たち。戦場を共にせずとも同じ目標を追いかけるために別の場所で戦い抜いた戦士たち。
俺の役割は、明日から目標座標に向かうまでの敵勢力の根絶と殲滅。
だからこそ、今できることをする。まずは、彼らの墓標に挨拶してこようか。
「よう、久しぶりだなおまえら?いや、2度と顔を見せるなって言いたいのか?」
無言で見上げるのは、かつてこの世界でこのどうしようもない世界をゼロから再構築するという意味不明で理解不能な負の恨みや妬みを全て排除するというこの世界では最も克服できない物だったのに。
なに言っているんだろうか、あいつらが最後になにを思ったのか理解に苦しむな。全く、最後の最後に遺言を俺に渡してくる気概は認めるが、俺にとっておまえらとはそんなに接触ないんだけど。
大体どの遺言状にも俺宛にはこう書いてあった。
“俺たち私たち死人になった者たちの前に顔を見せるな。2度は言わない。悲しむな、忘れるな、俺たちはおまえの心の中にいつまでも居る。存在する。だから、誰かが忘れるかもしれない、だがおまえは覚えてくれているだろ?
俺たちより強いお前なら。だから良く覚えておけ、俺たちの墓標には一回だけ来い。それ以降はもう来なくて良い。俺たちはお前の重荷にはなりたくない。さらばだ、英雄。俺たちの世界を平和に導いた英雄を我々は誇りに思う”
どの遺言状にも最後のメッセージだけはこう書いてあった。彼らの思惑は一切わからなかったが、俺が永遠に覚えておけば他のどんな奴らの記憶より良い的なことが書いてあった。意味は俺に理解しろと言われてもわからん。この世界の言い回しなのかどうかも聞ける人間に心当たりもないし、これを聞いて良いのか理解に苦しむ。彼ら彼女らはなにを思ってこの一文を残したのか
「・・・・頼むから、謎解きを最後の最後に残していかないでほしかったな・・・・。
ん?墓標の1番下に何か書いてあるな」
なになに?
“我々は英雄に全てを託した英雄に使える真実を知る者たちだ。世界よ、我らは英雄から託された思いを胸に、この平和を守り続けることを誓う。
だからこそ、誓え。
「私は世界を戦争から遠ざけ、未来に平和をもたらす世界の礎になるもの。そしていつの日か英雄の帰還を望むもの。我らは世界を共に守る同志たちと同じ道を征く。いざ制約を果たそう。盟約と制約のもと、英雄が帰還するその時まで、時代を進めることを切に願うものとして、平和を享受する者に。
世界よ。我らを認知しろ!
世界よ。平和を認知しろ!
世界よ。英雄を認知しろ!
我らは、英雄になり損ねたのではない。
これから世界を守る影の英雄の一族になるのだ。
この世界を守るのは、我々影の英雄たちに他ならない
臭いセリフの言い回しは、気にしない。我ら、世界を見守るために、英雄と肩を並べるために研鑽する者たちなのだから。
だからこそ、英雄よ。我らが貴殿と肩を並べる時が来たときは、共にさらなる平和を目指そう。
いつか夢見た、あの世界を。今度こそ平和になった世で!」”
かたっ苦しく書いてはいるものの、誰かの趣味が満載になった文章だな。
「レイ殿、その文章。読んじゃいましたか。すいません。そこにある墓標の1人に少々拗らせた方が、いらっしゃいまして、自分の死後墓標が置かれるなら、最低でも一年くらいは、その場所に自分の考えた最高のセリフを飾ってほしいと言われまして・・・・
遺言状を読まれてここにこられたんですね。彼らは、あなたがいつも笑って居てくれることを願うということを伝えたかったんでしょうが、皆が急いで出る瞬間に文章を新たに追記してもらう時間は足りなかったので、拗らせ人に頼んだのが、行けなかったのでしょう。見なかったことにしてください。それと、墓標への墓参りは一回で十分な理由は、本当に単純でして、この場所にある墓標は1年後には各自の墓に渡されるそうでして、この場所は記念公園にはなるでしょうが、墓参りには不向きになりますから・・・・。まぁそんなところです」




