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グゴー、グゴーと大きな口を開けてイビキをしている青年は、疲れが溜まって居たのかなと心配になるレベルである。ついでに、今回の実験結果は少々思って居たのと違ったため不満は残った。しかし此処で登場したある人物によって今回の実験を継続させることになる。その人物とは、ハイネである。彼は正真正銘この世界の住民であるからして、もしかしたらさっきの弟さんのようにはならないだろうと、研究者とよく話し合い、ハイネにカプセルに寝てもらい実験を続行した。
結果は、成功。ハイネは無事資格試験を通過できるだけの知識の植え込みに成功したので、これ以上問題を起こされてほしくない研究者やスポンサーから即刻この場から立ち去るよう言われた。これ以上の難癖はいらないとの一言ももらった。
「酷い奴らだったな、智也」
「あぁ・・・。その名前呼び、固定になるのか?」
「当たり前だろ?おまえさんはこの世界で爪痕を残しすぎたんだよ。今じゃレイという名前は静かに広がっているんだ。いまだに顔が出回って居ないうちに呼び名だけでも変えておいた方がいいだろ?それに彼らからもらったこの世界で通用する名前で俺はいいと思うがな」
そう、先ほど研究者兼伝言係から言われていたたった2人しか家族の居ない彼らの資産と名前をそのまま俺に継承という形で引き継いだのだ。ただ、名前だけ引き継ぐという意味がわからなかったが、これについてはハイネの方が詳しかった。
「一部の惑星というか、地域での風習で亡くなった人に家族や親族がおらず身近な人に自分の全てを引き継げる者が居ない場合、遺言状に全ての資産と名を引き継ぐという物があるんだ。通常は、戦場に出る前に書くんだが、時々戦場でこの遺言状が更新されることがある。もちろん戦場に行くための船に乗り込んだら更新はできないが、船に乗り込む前に更新を変更して居た場合に限り、更新が認められるんだ。
今回智也がその資格を手に取ることとなったわけだが、通常は、遺言状に名が乗ることは伝えられない。そして、戦時下でなければ、第一から第三くらいまでの順位づけで遺産を渡す順番が決められる。
ただし、戦時下でさらに最後の更新機会で遺言状を記載変更したのち、更新した場合に限り遺産相続税が50%という取り決めがされているんだ。
そこで今回智也が貰った遺産は、遺言状を認めた者の出身惑星にある企業のすべてが智也に委譲された。だが、智也がこの星に暮らすわけもないから、資産はすべて現金化。それをすべて運用という形に変更して相続権が与えられる。そして智也の資産が現金化と運用を行なって利息が手元に入り、受け取れる最初の一年目はこの世界の3年後から。なら、この場はすべて頼んでとっとと帰還する方が得となるわけだ。そして次に戻ってくるまでに税金関係は先に納めてもらっているから、こちらの世界に来たら遊べるという寸法だな。どうだ?これで分かっただろ?」
俺に見ず知らずの人間がくれた資産をすべて貰えるということか。ならこの世界に戻ってきて遊ぶのではなく、この世界に還元できる仕方での資産運用をしてもらった方が良いような気がする。
「その資産運用にはこちらから口出しは、可能なのかな?」
「もちろん、ある程度は聞き入れてもらえるから心配しなくても大丈夫だと思うが、どこにするんだ?」
なんで疑問形で聞くのか、謎だが答えは単純だろ?
「ゼルセルタ航空宇宙軍に全額回して貰うんだ。この世界の平和のために一役買ってもらうためにも、そして何より最初の資金はどの世界でも一緒だろ?給料を支払うのも、備品を購入するにしてもな」
俺がそう答えると、目から鱗だと叫び始めた。
「それは確かに!盲点でったわ。いきなり戦争を終了してそして平和を勝ち取ったとしても、領土の増減も資産の増減もない状況で、お金のやり繰りも気持ちのモチベーション維持もできないわけだから、最初の活動資金だけでも莫大な資金を君が出すというのか。確かにいずれは元に戻せる金額に・・・・それ以上の金額が利子込みで帰ってくるな。君は天才なのか?それだけのことをすれば本当に後戻りできないくらい有名になって、行くが君にはもう別の名前が用意されているから大丈夫か。ヨシ、任せろ。すぐにこの話を上に持っていって俺が交渉してくるから、弟くんを任せた」
急に納得したように統一組織の本部事務所に走り出したハイネ。置いて行かれる俺と、弟はのんびりホテルに向かって歩き出す。途中からハイネの熱量に負けて起きていた弟を背負い投げで目覚めさせて歩かせる。俺は女の子を抱くのはいいが、良い年した男を抱えるのは嫌。
「それで、名前変えるのか?」
「まさかおまえにまで突っ込まれるとは思いもしなかったが、少し黙ろうか?そしてなぜまだ寝れたのか聞いてもいいか?」
全く、ハイネといい弟といい、こいつらは俺が真剣に悩んでいることを平気で掻き回しに来やがる。まだ保留中にしておきたいことなのに。