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式典が行われていた場所から離れた場所。今回の惑星同盟国家に参加すらせず、最後まで戦争を仕掛けて相手にされず国境線を引かれ、二度と故郷に戻れなくなったと知った傭兵たちが酒場で飲んでいた。
「おい!もっと酒、持ってこい!」
飲んだくれ1
「こっちにも寄越せ。俺たちはこの国の屋台骨だってことを理解してんのか?」
飲んだくれ2
「まぁまぁお二人さん落ち着いて。あ、僕はビールで」
飲んだくれ3
この3人はここの所、仕事が無く国からも傭兵の退去命令が出されるのは、時間の問題だと理解していた。だが彼らは大手企業の傭兵団では無くフリーランスで活動していた。その方が危険度は高いが手取りも多かったからだ。マージンを取られなくて済むということから、傭兵たちの間で金か命か、天秤に掛けて金を取った者たちの末路がこの酒場の有り様である。
まだ彼らは仲の良い3人組で活動しては居たが、この酒場のカウンターにも数人、傭兵の姿があった。彼らは本当のソロで活躍していた名うての傭兵たちだ。
なぜそんな彼らが、場末に近い酒場で飲んでいるかというと、この国の経済と外交問題により、これ以上の戦闘を行うと国家運営ができなくなると判断出来たからだ。戦争によって財をなし世界を裏側から支配できるだけの権力と兵力の送り出しが、天才的にうまかったことでどの国も彼らの言うことを聞いて戦場に彼らの言った戦力を投入する代理戦争で勝ってきたのだ。
そんな影の国は、一つの同盟によって脆く崩れ去ろうとしていた。今ある外交手段には、どう足掻いても手のひら返しの様で、誰も手を貸してくれないからだ。
そんな影を落とし込んだ、現在の膿は傭兵たちだった。自国の兵士たちも多数抱えている現状、これ以上彼らに払う金も、新たな稼ぎ場所も存在していない。早急な国外退去をさせたいが、時期尚早では金を持っている傭兵たちが国外に国が支払った資金を持っていかれる。ならこの国でどう言う経緯でも、どれだけ少なくても身一つのみの退去しか許さない、仕組みを早い段階で作り上げた。その仕組みに気付いた大企業は即座に撤退を決めて逃走。独自の情報網を持っていた一部の傭兵達も逃げ切ったが、情報に疎かった者たちはもちろん逃げれず、国のお抱え輸送船に詰め込まれるその時まで、各地の酒場でたむろする事になったのだ。
「まったくコレだから嫌なんだよ。傭兵だからと毎日毎日同じ酒場で飲んで、気に食わなければ暴れるとか。故郷に帰れなくなったからと荒れるのは勘弁してほしいぜ」
「ほんとほんと。いつまでも我が物顔で飲みやがって。こっちだって泣きたいんだぞ。俺たちの兵器工場も当面の間閉鎖するとか言ってるんだもんな。国の連中、安い工場でも手に入れたのかな〜?」
「かもな。この国の上層部のやる事だからな」
国民の焦り声は聞こえてこない。彼らに取って国の批判をするのは酒場か家であれば許可されていた。それ以外で喋れば拘束されるが、場所を区切れば問題なかったからである。お国柄というやつもあるのだろう。
そして、彼らの様に自分の仕事場が奪われたり一時的な工場閉鎖などはよくある事なので気にしなかった。年中どこかの戦場に物資を、戦力を送り出しているんだ。占拠した惑星の兵器工廠を報酬がわりに人材ごと確保すると、国の兵器工場もストップする。
傭兵たちと違って一般市民のお気楽ぶりはこう言うとこから来ていた。
だが、国民も傭兵たちも誰も知らない。この国の外で大掛かりな平和運動活動で周辺国家から煙たがれる存在でどの国も一時的な戦闘の中止を決断した事により、彼らの稼ぎ方が無くなってしまっている事に。
今国の外交部は兵器の出荷では無く、兵士たちを治安活動目的で出せないか、交渉中ではあったが、交渉は難航していた。それはそうだろう。彼らも機密エリアもあるのだ。他所から来られた傭兵以外でも他人を入れさせたく無いのは当たり前だろう?
それにより彼らが国家運営出来なくなっていく事が遠目でも分かったからだった。
この国は屋台骨すら抜かれて、死にゆく国になりつつある。199年、現在の政権は全てを国民に報告して惑星規模でも経済破綻手前で、耐えてはいるが、この先戦争で飯を食うことはもう出来ない、と報告して政治を戦争から平和路線に舵切りした。
その後の混乱は分かるだろう。それでも彼らはやり遂げるべく動いた。腐った政治は誰もしてはいなかったのだ。そう言う彼らを惑星同盟国家ゼルセタル航空宇宙軍の新設諜報部は見逃してはいなかった。
「この国の傭兵などを排除すれば、良い国になりそうだな」
「残念。やはりどの国も政治は清廉潔白ではなかったらしい。さっき裏取が終わったと連絡があったが、今回の件相当闇が深そうだ」
「マジか。期待して損した気分だが何があった?」
「聞くと腹立つことしかないが良いか?」
「構わん。ここは諜報機関のエリートとは違うとはいえ、新設された正規の諜報員ばかりだ。教えてくれ」




