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で、少し話は遡りレイたちが艦隊から離れ敵拠点を叩くために降下準備に入ったところまで遡る・・・。
「で、本当に隊長はこれでいいと思ているのかよ?」
「仕方ないだろ。兄さんのあの顔はすでに死ぬことを覚悟した眼だった。ならもう俺には兄さんの覚悟を変えることはできない。だからこの任務を必ずやり遂げるだけだ・・・」
と、まぁ何を揉めているのかはさっぱりなんだが、とりあえず彼ら特殊部隊の隊員たちとのコミュニケーションをとらないことには始まらないのは理解していたから、彼らの今の話に混ざりに行くことにした。
「そう不安がることは無いと思うが、実際にこれから行く場所のことを考えると楽観視できないのは事実だ。すまんな、危険な場所に一緒に行くとはいえこれからの戦闘に関して一切の不安を取り除いてやれることはむずかしいんだ」
俺はそういって皆との会話に混じった。だが、彼らには彼らの思いがあることは承知していたが、これは俺が思っているほどに根深い問題なんだと思っていたんだ。でも実際は違った。
「違うんです。こいつのアニキはこの船の艦長をしているんですが、あの人は俺たちの国でも超頑固者として知られているくらい、こうと決めたら絶対にやり遂げるほど凄い方なんですが、自分が間違っていないとわかれば突き進んでいってしまう御仁なので・・・・・いやはや参りましたね。あの人は我々を降下させて脱出に必要な時間と手段を確保したのであとはどれだけ過酷でも例え我々の救助のために自分の身を差し出してしまうほどの大胆さをも持ち合わせているんです。だから彼は思い悩んでいるんです。たぶんですが、今生の別れになることが決して決まったわけではありませんが、」
重くのしかかる重責と彼らの重い決意に心底、心を打たれる話ではあったが、今ここで断念することの方が危険だということは彼らでさえ理解しているのだろう。誰一人作戦の中止を言ってくるものさえいない。たとえ兄だと口にしている本人でさえ任務の内容だけは理解してくれているのだろう。
天井を少しだけ見上げてから思ったことを口にする。
「・・・・・行ってこい。まだ出発までは時間があるだろ。話してこい」
そう伝えたところいきなり立ち上がって敬礼してから走り出そうとしたところで、懐にしまってあった酒を持たせてから兄のもとに向かわした。
お優しいことですね。そう皆から言われた気がしたが、彼が兄のもとに駆け出して行った背中を見送ったので、誰も口にはしなかった。当然彼が抜けた一時的な穴は誰かが埋めなくては出発の準備は当然終わらないが、皆思いは一つになったと言わんばかりに彼の開いた穴はみんなでカバーして準備に邁進した。その甲斐あって彼が戻ってくるまでにはすべての準備と出発までのチェックリストの確認を終えて、大気圏降下用の機体に着席していたところ、兄の元に向かっていた隊員が戻ってきて皆に感謝とありがとうの言葉を何度もつぶやくように涙目で話しかけてきてくれた。
「さ、別れは済んだ。俺たちはこれから当初の目的通り、敵拠点を攻撃して敵の撤退を進めたいと思う。先ほどから我々を惑星内に下すための作戦が決行されたようで、艦が結構な頻度で揺れ始めている。この船の艦長を兄に持つ彼が自信をもってこの話を締めてくれ」
いきなりの無茶ぶりだが、構わない。俺だってたった数時間で彼らのような特殊部隊の絶対の信頼を勝ち得たわけではないが、それで多少なりとも信用されなければ、味方の背中を打ち放題の殺し放題になってしまう。だから俺の持っているすべてをさらけ出すことによって自分の信頼性を底上げしていった。どうなったかはこの後の戦闘で実施されるだろう。
「えー。いきなりの無茶ぶりですが、そうですね・・・・・。かえるひt・・・帰る場所、帰れる居場所のある者。なくても俺たちは兄弟だ。誰が死んでもおかしくない状況でこれから大交戦が行われるかもしれないし、極秘に動くのでスパイのように陰に隠れて行動しなければいけないかもしれないが、それでも生きて帰ることを俺は、俺たちは、未来を平和で満たすために全力をもって挑もう。
平和は俺たちが作る。ムーバルウェイシャー隊、総員戦闘開始!」
これが名だたるムーバルウェイシャーだと言っていたが、のちに聞いたら特殊部隊の中でもピンからキリまである部隊の最高峰に近いと目されていたあの場所に居たメンツの中で一番力を持っていた特殊部隊だったようだ。俺には彼らとそれ以外の違いは実力差かと思っていたが、そんなことはなかったようだ。
その連携の中に一人だけ異物が入ることを許してほしいと伝えたかったが今はそんな余裕はなさそうだった。
そして、後部甲板がすべて開き切り、見えるのは漆黒の宇宙空間と、青く大地の白い巨大な惑星に降下するのだ。
『幸運を。ムーバルウェイシャー隊、必ずの生還を!生きて戻れ、我らはココを死守する。以上
総員降下せよ!』




