386
誤字脱字、もし見つかればご報告、よろしくお願いします。
【後は任せます。一当てしてから離脱します】
「わかりました。そちらにすべてお任せします。こちらは気にせず」
通信内容的に傍受されているとして必要最低限の通信のみで後の行動は察しろとのことだが、ベテラン艦長として長年この席に座れる実力を持つ者ならわかる。彼女たちの艦はこれから敵を引き離し、まるで戦線離脱を実際に行ったように敵を振り払ったタイミングで転進して降下部隊に合流する部隊を下すのだろう。私たちの艦にも乗っている特殊部隊の方たちには大気圏突破用のブースターも持って行ってもらわなければいけないが、もしこのブースターが敵の手に渡ったと考えるなら二番目三番目くらいの先読みくらいしなければいけないが、向こうもそれくらい考えているだろうし、どうしたものか?
「艦長!」
考えていたことがバレたのかと一瞬冷や汗をかいたが、どうやら違ったらしい。彼女たちの艦は、即離脱ではないことが立証された。
あの女艦長は肝が据わっていたという証明にもなってしまったが、まぁいい。
「だが、あのタイミングと場面でよく右舷に砲撃を集中させつつ左舷を通るルートを選択するものだ。あの位置取りだと向こうに誰か乗っていれば気づいて撃ち返してくるものだが、やはりあの船には誰も乗っていないことの証明がされてしまったのかもしれないな」
そう思うとホッとする気持ちも多少はあったのだろうが、彼らの送られてきたメッセージは異様なほど重厚感を増した内容であったことに変わりない。ココは慎重に進もう。
「goajodviとは一体どんな組織なのか見当もつかないが、この作戦終了時には少しは情報が確保できていればいいな~・・・・・そんな未来を掴むためにも今はやるべきことをだな。
こちらは先行した艦の周りに居た敵艦を落とすぞ。右舷側は他の艦に任せてこちらは左舷側を徹底的に潰そう。いいな、あの左舷の大型艦には気を付けろよ。嫌な予感がする。先ほど第一陣を下した艦が落とされたときに感じた嫌な予感と一緒の種類の匂いがする」
「艦長のその匂いは馬鹿にできないですもんね。了解です。艦首下げて砲塔をすべて上方にセット。左舷の敵方を殲滅するより艦長の最初の危険リストナンバーワンをまずは攻撃します。
レーダーはすべての攻撃を見逃さないように・・・・・」
私の考えと意図をくみ取った長年ともに艦橋で一緒だった相棒の副艦長が猛威を振るう砲撃指示を出してくれた。一体どれほどの年月戦っていたのかは今となってはわからず仕舞いなところはあったが、それでもこの戦争に終わりが見えるほど実感できるリーダーに巡り合えたんだ。生きて必ず生きて未来を見てやる!
指示は一度きり。私の合図がこの戦いの火ぶたに幕を開けさせる第一声。常々思う。私という一個の存在より国に居る家族や友たちとの深い絆を守るために戦いに明け暮れてきたが、それも近く終わるだろう。その礎でありながら生きろと命じてくれたリーダーに習い、
「全砲門、撃ち方・・・・・始め!」
「!?ッ、てぇー」
副艦長が私の発砲の合図を一瞬聞き逃したのかと思ったが、どうやら彼とのタイミングと意思相通の齟齬が出てしまったくらいだろう。たまにある彼とのタイミングのズレ。このズレがあるときは最高なのだ。次は確実に勝てる戦となるからだ。
『CICから艦橋!相手はビームを防ぐカーテンのようなものを展開!これによりこちらで発砲した砲撃は全弾命中せず手前で消滅した模様』
「副長。次の次弾は何秒かかる?」
CICという現状すべてのエリアを見通し戦場を俯瞰できるほどの仕事量が存在している我が艦最大のトップシークレットエリアはビームの消失を確認したということ。これを聞いて次の攻撃にもたついてはいけない。次はすぐに来る。こちらも牽制射撃は行いつつ、本命を撃ち込むように指示を出す。
「あと6秒で何とか。再充電が必要な物は今の砲撃では使用していないので純粋なエネルギー体を前方に飛ばしただけではありますが、次射で撃つときは実弾も紛れ込ませる予定にはしてます・・・・・・。準備が整ったようですね。それでは、撃ちます。指示を」
「撃て」
一瞬艦橋から白というか緑っぽい色が混ざった閃光が走ったかと思うと敵艦が燃えているのが分かった。これで二隻撃墜ということにはなるが、まだ足りない。星の周囲にある敵艦からの奪還は想像以上に大変なことになるのかもしれない。だが、それでも我々に残された時間はあまりない。
~その頃の地上部隊と言えば~
「ぺっぺっぺぺ。」
隊員たちが降りた先は砂漠ではないが、石が砕けて砂になりかけた砂浜もどきがちょっと多めに存在していることが分かる大地だ。
「ダッシュで降りるからこんなことになるんだ。少しは自重しろ」
降下ポッドから降ろされた俺たちは基地から少し離れた位置に着陸と言っていいのかわからないが、まず間違いなく遠いことだけは理解した。そして着陸してすぐに周囲の状況を確認しに行った若手隊員は飛び出し、降下ポッドの最初の出口で出鼻を砕かれて、顔面から砂埃の中に入っていった。




