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消滅プログラム起動から3時間後
周りが一斉に真っ白になった。
一瞬周りがまぶしくなり腕で目を覆った。
次に目を開けると見たことがない景色が飛び込んできた。空が瑠璃色なのだ。それもだんだん明るくなってきた。
そして海と空が一体化していた景色から境界線が生まれた。太陽だ。ひとつじゃ無いふたつある。大きいオレンジ太陽と小さく淡い色の青い色の太陽が同時に上ってきた。
“綺麗だ”
もうその言葉しか思い浮かばない。
感動して眺めていると後ろから歩いてきた気配がだんだん近づいてきた。砂を踏みつける音と共に。
後ろを振り向く。誰がきたかを確認するために。
遠くからライトが見えてきた。ぼんやりとした人影がだんだんと大きくなってきた。そして彼らの格好を見て思った。人数は二人。腰には拳銃。肩からはスナイパーライフルとアサルトライフル二丁を二人とも所持している。
「オイ!手を挙げて、名前と目的を言え!」
「智也・ルルーシュ・ラングストン。目的はゼス惑星の実験物質の消滅プログラムを走らしていたところ辺りが真っ白に、」
「おい、待て!ラングストン?」
「あぁ。ラングストンだ。それが何か?」
「ラングストンの身内ならそういえ。悪いが一時的に拘束させてもらうぞ。だが、ラングストンのあいつのところに行ったら拘束は解かせてもらうから心配はしなくていい。それでいいか?」
「いいか?と聞かれてもここがどういうところかわからないし殺されないなら指示に従うよ」
「当たり前だ。俺たち有志同盟はあんなガルスモ帝国の奴らとは違うんだからな」
「ガルスモ?有志同盟?」
「知らないで、訪ねてきたのか?お前よく無事にここまで来れたな。まぁいいや。ほら、行くぞ」
「あぁ」
「あと、あの遠くに見える山、海岸沿いの崖の上のでっかい城には近づくなよ。」
「なんで?」
「時間研究所だ」
「時間研究所?」
「そうだ。お前さん、AからBの地点に行くにはどうすればいい?」
「_A___B_これを_AB_こうすればいいだけだろ?」
「そうだ。それが、ワープ技術だ。理論的には0地点から100に瞬間移動って感じなんだが、実際には通常空間で飛べば1年かかる距離を半年で行ける距離にするという技術しか完成していない。それで起こる問題とは?」
「星で生活している人たちとの時間差が大きく開くだろ。」
「そういうことだ。だからこそ、時間研究所は0から100に地点を移動できるワープ技術を進化させるため日夜研究に励んでいたんだが、この前失敗してな。あのあたり一帯の時間が2~10日ほど早く時間が回っているらしい。一応時間が周りに悪影響を及ぼさないようにして、あの研究所とこちら側を時間が飛ばないように設定したらしいんだが、今度はこの大陸のさらに下の下の階層を飛んでいた大陸が、毎時100kmのスピードで移動しているらしい。しかも、予測不能な一定の高度で飛び回っているらしいから気を付けてくれと周知メールが来てたほどだから近寄るなよ」
「わかった」
「そこは青い瑠璃色の空、白い大理石が砕けてできた砂浜、そしてマリンブルーの色をした海。う~ん。最高な休暇だな。そうは思わないかい?マッスル兄弟?」
「いや、海は海だし、空は空だろ。俺たちは戦争をしてるんだ、こんなところにいるより仕事しないでどうする?」
「仕事なら72時間してたよ。今は休憩中。で、そちらの兄さんは誰なの?見たとこガルスモ帝国のスパイって感じじゃなさそうだけど。」
「ラングストンらしい」
「は?フルネームは?」
「智也・ルルーシュ・ラングストン」
聞いたことがないな?身内にではなさそうだが。人間か。
「お前さん、エルフじゃなさそうだけど、親は?」
「俺の親父は地球人で、母親がエルフ」
「母親の名前は?」
地球人?聞いたことが無いな。
「クリスティーナ・セレス・V・ラングストン」
「オイ、大丈夫か?人違いなら」
「いや、大丈夫だ。事情はこっちで聞いとくよ。ありがとう。連れてきてくれて」
「いいんだよ。こっちだって、資材物資の増殖研究の第一人者に来てもらってるんだ、これくらいのことはさせてくれ。」
「あぁ、ありがとう。今度一杯奢らせてくれ」
「あぁ、それでいい。じゃぁ、俺たちは巡回に戻るわ」
「サンキューな」
「で、お前さんは一体誰だ?敵ではなさそうだが?」
「ゼルセルタ航空宇宙軍の元帥をしている。」
「ゼルセルタ?どこのテリトリーを防衛しているんだ?今戦争しているのは、うちの所とガルスモ帝国しかいないが」
「聞いたことがないぞ。そんな帝国の名前。ここはどこなんだ?」
「知らないのか?ここは宇宙一文明の発達した惑星。超文明国家ゼルス公国の首都惑星、ゼス惑星だぞ。この宇宙で宇宙船造船率も98%がここが製造もとだと言われるくらい造船業も発達している国家だぞ。」
「俺が知っているのはさびれたゼス惑星だぞ。座標も抹消されるくらいの。」
「?お、お前何を言っているんだ?」
「今何年だ?」
「バルクス歴1854年8月31日だ」
「バルクス歴?U.C.じゃなくて?」
「U.C.?」
「?」
「?」
「なぁ智也?、、智也って呼んでいいか?苗字一緒みたいだし。ちなみに俺はハイネリック・アリアン・V・ラングストン 研究者だ」
「あぁ、よろしくハイネリッ」
「ハイネでいいよ」
「ありがとう」
「で、智也?つい最近変わったことなかった?」
「実験物質を消すプログラムを走らせた」
「・・・」
「どうしたんだよ、そんな渋い顔して」
「なぁ、実験物質って?何?」
「岩石だよ。ゼス惑星を覆っていた岩石を消滅させるための」
「俺、昨日、違うな、ついさっき消滅プログラムを完成させてこれからボスに説明に行くとこだったんだよな。なんで俺が作った実験物質を知っていて、消滅プログラムも知っているんだ?それに走らせた?つまり・・・」
つまり暴走した?実験物質岩石増殖プログラムが?
「なぁ智也?俺は1年で固まるようにプログラムを頼んだんだよ。ココ、ゼス惑星の職員に。」
「・・・固まる日数は1年とかそういうレベルじゃないぞ1万年かかる。」
「・・・」
「・・・」
「き」
「き?」
「緊急脱出の準備を急がせなきゃまずい!!」
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