356
誤字脱字、もし見つかればご報告、よろしくお願いします。
「さて、君たちには三つの選択肢を与えてあげよう」
「3つ?」
「そう、3つだ。
1.里親制度を利用し君たち全員の人生を豊かにするという養子縁組制度。これは完全に全員がバラバラになる。
2.ここに残って自分たちで生活する。その場合大人たちの助けは無いが、自分たちで好きに生きれる。代わりに死ぬ可能性も高い。
3.私の所属する軍隊への入隊が絶対条件にはなるが、全員バラバラになることは防げる」
「つまり、死ぬか生きるかの選択肢をくれるってことですね?そして、あなたにはメリットしか残らない」
「そうなるね。それに君たちには常にデメリットが付きまとう。
1.その後の人生を約束された未来ということにはならない可能性もある。
2.死が早まる可能性が高い。
3.軍人として戦争に行くため戦死の可能性も大いにありうる」
「僕たちは死ぬ運命なの?」
「私は生きたい!だから1の里親制度でもなんでも利用して生きるわ」
「ぼくも1がいい。みんなと別れるのはさびしいけど、また会えるように努力する。だからまずは生きることを目標にする!」
この意見を聞いていた子供たちは1の里親制度を利用した一時的でもいいから避難できる人生を選ぶことにしていったようだった。だが、やはり直感を信じていた少年だけは違ったようだ。彼だけは3を選ぶようだ。そして彼に追随する者は居るのかと期待していたが、いないようだった。
「悲しいな少年」
そう一言掛ける私の目を顔を見ずに子供たちの方をずっと見ている少年は独り言のようにしゃべり始めた。
「いいんだ。あいつらとはこの船に乗った時に知り合っただけだったから。僕たちはうちゅうでせんそうを始めた大人たちの命令?で両親から引き離された子供なんだ。だから彼らには居場所が欲しいんじゃないかな?
ぼく?僕は、父親の借金返済を無くす代わりに船に乗せられた口だからまたあんな目になるよりはココで居場所でもなんでも作って二度とあんな父親のもとにさえ帰らなければいいんだから」
「そうか、少年はそういう選択肢をするのだな。ならば了承した。行こう、彼らとは今生の別れになるだろうが、君は今日から私の部隊の一員になる。勉学は必要だし体力も技術も必須となる。しっかりと磨いておいで。戦力にならなければ放り出すがな」
そういい、子供たちをもう一度見てから艦に乗り込む。少年は未練を断ち切る思いをしてみることなく私の艦に乗る。
「で?勝手にこの船に乗せる許可出しましたけど、いいんですか?」
「いいとは?」
「この船って」
「我々が居なくなっても一人で生き抜く術だけは身に着けられるだろ?私は独り身なんだから、彼一人くらいの学費は出せるだろ?」
そう。私はココで少年を助けて船にいつか乗ることを前提に話してはいたが、受けた命令はただ一つ。
『最前線に行き敵艦隊の足止めと殿を命ずる』
つまり死んで来いということだ。今日わたしたちは死ぬだろう。だが、彼にとって命の恩人だということを私たちは肌で感じ取ってから死んでいきたい。いい人で死ねるのであれば。それで・・・
「少年。ココが軍事学校だ。能力のないものは裏方、つまり事務方に回されるんだから死ぬ気で頑張れよ」
「はい、師匠!」
「師匠!? 私がか?・・・・・ハハハ、はっははっは。そうか、君にとっての師匠は私か。なら死ねないな。部下にもそう命じておこう。死ぬな!生きろ!と命じて任務に向かうとしよう。ではな、少年」
彼は私が港を出て宇宙に出るまでずっと見上げてくれている。こんなにも汚れた人生を歩んできた私を彼は師匠と呼んでくれる。
「生きて帰ることを目標に」
「艦長。私たちも、死にたくないので、生きることを目標にしてもよろしいでしょうか?もちろん。次はあの少年を乗せてこの船で一緒に教えましょう!」
「そうだな」
3週間後・・・・・
「師匠はやはり・・・・・・生き残ることはできなかったか。俺を生かすために。俺を生き残らせようとしてくれたのは顔に出すぎなんだよ。こんな学校に入れられるんだもの。師匠たちがあの後どうなったかなんてすぐに分かったさ、それでも師匠たちなら生き残ってくれると信じていたんだよ。師匠、俺はココで軍人になる。きっと師匠はなってほしくはなかったんだろうけど、俺は軍人になります。師匠たちから貰ったこの命を燃やし尽くすように、しぶとく生き抜いていきます」
少年は軍人になるための軍学校に入隊し、その後ベテランの軍人として各地を転々としながら、そのすべての命を無駄にしない精神を見た同胞たちは同じ思いを胸に一緒に駆け抜けていくことになる。
時は少しだけ遡り、
3週間前。
『新たな命令を与える。貴様たちには死んだことになってもらい、こちらの提示する人物との接触を図ってもらいたいのだ。この件には君たちの人生より重いものが乗っかていると思ってもらって構わない』
「と、言いますと?」
「君たちは、この果てしない宇宙戦争をどうにかして止めようとは思わないかい?」