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誤字脱字、もし見つかればご報告、よろしくお願いします。
「早く、帰ってこい」
そう呟く男の顔からは涙が溢れ、後悔の念が見てとれるからだ。
彼は、クォーツ。反乱軍のリーダーにして、今医療ポットに入る人物の意識がまたわずかに覚醒する。
誰かが、何かを叫んだ気がする。だが、もう遅い。私は氷漬けにされたものだ。生き返ることは不可能。こうして軽い覚醒を繰り返しながら死に至る。私は、シュバルツ・F・服部。これから死に至る男の名だ。過酷な処刑としては最悪の方法だろう。きっとな・・・
ゴールディルNS地軸修正工作機器の開発者であり住めなくなった惑星や新たに資源惑星を作るために中心軸を調整して資源を効率的に資源収集することを目的にした工作機械。
彼が作ったこの地軸修正機は帝国の研究機関にて平和的利用目的として外部の広報ですら載せられるほどの税金の無駄遣い研究と言われていたほど使えない機械だと認知されていた。
だが、世間と帝国内部との明らかな認識は異なっていた。
帝国内部、主に戦争戦略兵器部にはこの地軸修正機というのはまさしく我々にあるべきものだと言うことを思い参謀本部に使えるが世間に公表されているため兵器転用が難しい代物。と上申した。そして参謀本部はこの兵器転用に際し反対されるであろう人物の割り出しを開始するように命令され、買収できるものは買収しろとお達しが出た。
そして、シュバルツ・F・服部以外は全て買収されてしまい、彼だけが兵器転用に最後まで反対をした。結果彼だけは殺害することを認可された。
認可されたとしても世間に公表するとまたややこしくなるため、シュバルツのみ自分の開発した地軸修正機を転用した兵器の倉庫に拘束された状態で冷凍保存されて、送り出すことにした。
最初に地軸崩壊兵器を使用することになった星は、資源を独占している属国。あんな属国が我が物顔で街中に歩かれる方が気色悪い。歩かなければいいのに。そう思った参謀本部所属の将校たちは皇帝に有る事無い事を吹き込んで暴走を始めた。
彼らがこの暴走の果てに自分で蒔いたものを刈り取るカウントダウンがこうして始まった。
その後の未来は想像に難しくない。あの属国がなけれ帝国に未来はないとなぜ気付かないのか。利益独占の末の暴走だな。私もその独占に享受していた側なので一緒なのかもしれないな。
裁判を受けるまでもなく、私は死刑になるのかもしれないが、誰も真実を知ろうともせず平和だと勘違いして属国の未来など誰も憂いることもしなかった。自業自得なのだ、私とともに未来のない。
そして未来のない世界を憂い、帝国に虐げられた者たちが明日を掴むために立ち上がったのだろう。
私も今気づいたが、きっと同僚のあいつはこんな未来を知っていたから反乱軍に与したのだろう。
俺を誘ってくれていたのに、研究に夢中な私には周りに興味はなかった。すまない。だが、あれから広報記事には彼が討たれたという記事は出ていないからきっと生きているのだろう。こんな私と違い運命に抗った君には私にはない前を見る機敏さがあったのだな。
あぁ。なんでこんな過去を思い出してしまうのだろうか?涙が出てくる。これから入る場所は牢獄ではなく棺桶だ。死刑にするのはダメだと判断してコールドスリープでどこかに隠すのだろう。この時代でさえ、いまだに人類はコールドスリープ技術だけは確立できていない。人工冬眠システムは危険と判断して液体スリープに漬け込む。あれはせいぜい200年が限度らしいがそれでもそれくらいの時間が経てば病気の治療が確立されているはずだと言う期待から眠る者たちも少なくない。
だが、コールドスリーブだけはダメだ。冷凍保存を人間に施してしまうと組織が崩壊して傷口が壊死して解凍中に臓器の腐敗で死んでしまう。そんな危険な代物で寝かされるのだ。私は死刑も同然だろう。
「よかったな、自分の作った最後の作品とともに死んでこいよ。二度とこの国に関わることを禁ずるらしいぞ、お前」
「・・・・」
「何とか言えよ、俺だけが喋ってるなんて腹が立つだろ?」
「喋れないんだよ。すでに麻薬を打たれて呂律が回っていないし意識も朦朧としているんだからさ」
そうか、この過去の走馬灯のような現象は薬物投与のせいか。
さらば、帝国。さよらな、我が故郷・・・・
意識の覚醒で目が覚める。あたりには警告音が鳴り響く。ガヤガヤと周りがやけに騒がしい。
光が瞼とを通して目に届く。痛いと感じる。これは助かったのか?いやそんな筈は無い。あの技術が数百年規模で確立出来るはずがない!ならこれは機械の不具合か冷凍される前に誰かが助けてくれたのか?
「おい、いい加減に起きろ。何年経っても貴様を起こす役割が俺にあるとは思わなかったぞ!?」
懐かしい声音だ。彼が助けてくれたのか。何と声をかけるか。
「やぁキミが助けてくれたのか?ありがとう。あの時さよらなと言えなくてすまなかった」
「後悔してたみたいだな、私的にはキミがなぜこんなところにいたのか理解できていなかったんだから生かしておくさ。だから早く元気になれ」
その後また意識が朦朧となって寝た。次に目を覚ましたら驚きの連続だった。
何と研究員と偽って潜入していた人物だったとは気づかなかったな。
そしてさらに驚いたのはこの時代は冷凍睡眠の解答技術が確立されていたことだ。これによって私は何処にも欠損部位なく生き返れたのだ。
あれから帝国時代は無くなり歴史自体が古いのか葬り去られたのかは分からないがあの時代を知る者はいないそうだ。磁器兵器を撃ち込まれたこの星とハイネ君とカナン・・・・クォーツ君以外は歴史が伝わっていないそうた。ある程度の技術の端々に過去に使われた技術の片鱗は感じたらしいが、この時代はかなり大々的に戦争をしていたらしいから、そのときに歴史書も燃えたのかもしれないと言っていた。
私はその後、クォーツがいなくなった後の現状を教えて、囚われたと教えた。
「何気に彼は生き残って帝国に一泡吹かせるかもしれないと研究所の皆が噂していたが、もっと大ごとに動いていたんだな?」
びっくりしたぞ全く。
今は楽しんで老後を楽しむつもりで活動しているそうだ。一緒に行かないか?と誘われた。もう身内もいないし知らない仲じゃないから着いて行くことにする。これまで彼と共に一緒に行動していたハイネ君はこれから新たな場所に行くらしいから彼は私を誘ったと教えてくれた。
ありがたい。今度は暗い場所だけで無く綺麗な景色やこの世界を見て回ることにしよう。いつか夢見た外の世界に目を向けてみることにしよう。
「歓迎するよ。シュバルツ」
「これからよろしく、クォーツ!
さよらな!人生。初めまして新たな人生!」
輝く目を彼に向けると一つ訂正が入った。ずっとき気になっていたらしい。
「さよらなじゃなくて、サヨナラ。だからな?目をつけられたく無くて訂正しなかったけど“な“が抜けてるんだよ!」
知らなかった。誰も注意してくれなかった新情報!!
「マジかー」
私が頭を抱えるのを見て皆から笑い声が上がるいつか夢見た景色は今ここにやってきたのだろう。
この世には、悪意があれば善意もある。それをどう生かすかはその人次第。
私はシュバルツ。シュバルツ・F・服部。帝国自体の研究者。今の世を見て回ることに全力を注ぐ者。友と共に、あの日夢見た景色を今見ることにしよう。
私たちは、あの日夢見た世界を共に歩くためにこの医療ポッドを出たのち、皇地球という惑星で新たな人生を謳歌することになった。
~*~
第十二章までの登場した人物紹介。(更新データ含みます)
1.クロ(本作主人公の相棒)
ここにきてアンドロイドボディを手に入れてともに歩むことになったAI。初めて任務で使用された人型ボディー
ロクシェルタ王国
・タージ姫
本名(タージ・バシュリカワーズ・フィ・グラ・ロクシェタルタ王女殿下)
ロクシェタルタ王国の王族。姫ではなく女王。王国国民からたまに女王陛下と呼ばれるくらい姫呼びが多い。
・クォーツ・インバシ・ナウ
愛称:クォーツ
ゼス惑星での出会いが最初であり、最近は皇地球にて生存が確認されていたが、なぜか知り合いの可能性が高いという理由でこの惑星に降り立った。そして王家ともかなり交流があった模様。
つらい過去の独白をして、身の潔白さを示すが、不審がられてしまったが、皇地球の皇帝の目回しにより不問にされることになった。
シュバルツとはクォーツの帝国潜入時に接触した人物。偽りの友情とはいえ、それなりに絆は結んでいたことで時間が立った後でも絆は深かった。
・ハイネリック・アリアン・V・ラングストン
愛称:ハイネ
つらい過去の独白をして、身の潔白さを示す
記憶喪失だったことを智也に報告して一緒にその場所を目指さないか聞く。そして新たな船の乗組員になることを決意する。
・シュバルツ・F・服部
帝国の開発者。クォーツと共に今後行動を共にすることを決意して、皇地球に一緒に戻ることに。
・神流将嗣諒
皇地球の皇帝
38歳という若き皇
なぜか、クォーツとハイネのために力を使い、目回しを行って彼らの未来を後押しした人物。今回はそれ以外にはあまり活躍しようとしなかった。
・タオ
智也たちと合流した若者。
ロクナデ歴やガルシオン帝国歴など過去の人物に相違なし。
智也の持つ光剣、ラジェソードで時代をある程度把握した模様。
人物以外の解説。
・超弩級戦艦 蒼黒リヴァルヴ(R,EVOLVE)
略式記載は蒼黒R
本章最初に今まで一緒に活動していた戦艦が沈んでしまったために、新たに製作された艦。
ただし最近初期不良に近いものがあったが、無理して使用していたがここに来て再発。緊急修理のためドックに入ることを決意し、港に戻るため大至急で準備を進めている。なお、必要な部品は幻想鉱石で作られた部品を代用して使われることが決まっている。
*~*~*
惑星国家同盟の加盟国をさらに二つ追加した智也たちが新たに向かう場所。それは彼らの持つ港。その場所において艦の修理を行うことが決定した。これに伴い準備を行っていたが、運悪く貴重で重要な部品がある程度損傷していることが発覚し、幻想鉱石というかなり希少な金属での加工品を取り付けることになった。
[To Be Continued]
次回、第十三章過去編