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誤字脱字、もし見つかればご報告、よろしくお願いします。
そんな信じられない光景を目の当たりにした私の前に、一隻の光すら吸収しているのではと思えるほどの船がやってきた。黒く、鈍い宇宙の光の中でさえ、ポツンとその場所だけ光がないのだから、目を凝らしてみればわかるが、そうでないのならわからないほどの黒さ。
その船に向かって彼はダイブした。私はそれに倣ってダイブする。だけどどうやら彼自身はこの私たちが乗ってきた船を信用していないようだ。そういう立ち回りをしている。わざとだろう。位置情報の発信機タグを船体外装にくくりつけていたのを見て、見よう見まねで私も一緒に発信機タグをくくりつけておいた。
普通なら危険なことをしなくてもいいだろうが、これは敵前逃亡という奴になるのだろう。だから彼自身はそんな敵を目の前にしても発信機の類で自分の位置を悟られないようにしているのだろう。すごく上手いやり方なのか私にはわからないけども、それでもあの場所で彼がいなくなった場所に私のいるべき居場所はない。多分確実に襲われる。そろそろ寝たかったけど、襲われるような感じしかしなかったし、誘ってくれたことには感謝するけどあなたと一緒になることは嫌。もうちょっと私の理想像があるからあなたじゃダメ。ごめんね。助けてくれようとしているところなのに。流石に会って3日は無い。
==SIDE????==
そして時は戻り現在
「検閲するまでも無く、敵対勢力の船なのが丸わかりだな」
【彼らにもレーダーが有るのだろうが、コチラは天体観測レベルの物もあるからだろうな】
そう、完全武装とまではいかなくても、船外に数名ならわかるが、ビッシリと人が船体に捕まっていたことも考えて、コレから襲撃をかけますよと言っているような物だもんな。
「参謀本部には?」
【申し訳無いが、既に発見と同時にこちらの音声を流さない様にしてリアルタイム映像で観てる】
「なら彼らに買収されそうになったら」
【勿論金を貰って、情報を渡せだとさ。一応指定されてる場所としてはグランツフォーン星系辺りの何も無い空間に誘導してほしいそうだ】
「了解」
よかった。みんなが無事でもし被害が人的になっていたなら殲滅でなくて全員を拘束して尋問しなくてはならなかっただろうな。
それにしても、一体彼らは何しにきたのかな?死にに来たにしては装備がバラバラでも人を殺せる武装なんだよな。
ーーーSIDE 雷ノーーーー
今日もたくさんの稲妻が地面に落ちる。
「今日はかなり近いな。まぁこの命の恵みのおかげで我々は生きているんだ。わかるか?※※。・・・そうかわかってくれたか」
そう言って俺の頭に大きく傷ついた手を頭に置いて撫でてくれる。俺の記憶にある最後に笑った親父の記憶だ。
親父は物作りがうまかった。だからだろう。いつか俺にもその技術を引き継がせてくれるのだろうと、いつか伝授してくれるものだと思って親父の肩越しからのぞいていたそれは・・・
今俺が手に取り、人々の集団に放り投げる。
地味に腹に伝わるくぐもった音と共に悲鳴と怒声もセットで聞こえる。
あれから数十年。いつしか親父は物作りをやめて、隠居した。詳しくは聞いていないが、事故で物が作れなくなったそうだ。そして母親はそんな親父と俺を育てるために働き、死んだ。疲労で死んだそうだ。
その後親父の借金は、息子の俺が引き継いだ。
引き継げなかったのは、親父の技術。
なんの因果なのやら、親父が作っていた手榴弾を片手に戦場をかける。命を掛けるこの仕事は親父が作っていた手榴弾一個より高い。
命の方が手榴弾より安い可能性があることなどあり得ないだろうが、今ではそこそこの戦いなら傷つかづに帰って来れる程度には、なった。
こんな生活は望んでいなかったのにな。ははは。今日も空が青い。
そして彼の歩んできた道は、赤黒かった。
彼の故郷は雨が降ることより雷が落ちることの方が多いためで有名であった。
昔々の言い伝えが残っている。
“雷の降る夜、雷雲が雲の中から光と熱を伴って地上に降りてくる。
神秘的だが危険極まりない。
この星では雨は降らない。それでも人々は生きていく。あぁ悲しき運命か。
星降る夜は違う世界で見れても、この世界では雷が降る。
いつの日いつまでも、降り続ける。止むことのない、光の柱。かと思えば満点の星空が顔をのぞかせ雷雲見当たらずの日もある。
不思議だ。
だが、しかしやはり降る。明日も今日のように雷が降る。
いつも降る景色に皆慣れた。
そして雷に打たれる者多くとも、雷が地面を打ち据え死人が出ても人は生きるために行動する。なぜ誰も対策を行わない?
いいや、行った。
行ってもなお、降り止まない雷に皆が辟易していく。
あぁ、雷降る夜より星降る夜になれば平和になるのに。
いつか願う星降る世界。平和になったその時は、雷の夜も晴れて星降るよるが到来しますように。“
雷雲刻物語 抜粋 星降る夜には雷が降る




