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伝承が終わり、ココから本編に戻ります。
――――ビー。ビー。ビー。
突然響き渡る警告音。かなり耳に残るほどの甲高い警告音だ。そして、周囲には警告を知らせる赤いランプが回転しながら点灯し、その警告音とともに視覚でも聴覚でも知らせてくる。そのせいか船内に張りつめているのは緊張と焦りそして怒号のみ。
一体何が起きているのかは外部の人間からは一切不明だが、それが内部の人間ならば分かるのだろう。
その意味することはもうすぐ分かることだろう。一体彼らは何に怯えているのやら。
「警報。ゼルセルタ航空宇宙軍が国境沿いにて警戒中。これより検閲の可能性があるため大至急内部換装を行え。繰り返す・・・・」
すでに十数分ばかりこの連絡がどこのスピーカーからも聞こえてくる。
今わかっているのは確実に違法なことをしていることが伺える。
そしてこういう奴らを摘発するのが・・
『そこの未確認船止まれ』
「・・・・機関停止」
『お前たちはどこから来て、どこに行こうとしているんだ?』
「ナ・グジェリュシュから来ました」
『・・・船内を検閲する。かまわないな?』
「ハイ。ドウゾ」
「何かおかしいな。一応ゼルセルタ航空宇宙軍に連絡して身元確認を」
――――――――――バン!
「フゥ。コレで少しは時間が稼げるだろう」
「よかったのか?明らかに次はこちらを狙われないか?」
「大丈夫だろう。向こうさんは連絡を取ろうとしていたところだっただろうが、まだ通信回線を開く手前だったようだしな。今の内に取れるだけの部品や物を確保して偵察を続行するぞ」
「了解した(すまないな。俺たちに合わなければ、死なずに済んだのに。それにしてもコイツはどこを敵に回しているのか分かっているのかな?分かっていないんだろうね。ナ・グジェリュシュなんて名前を私の目の前で使うなど言語道断だが、今は使われておいてやる。)」
「オイどうした?戦利品を漁りに行こうぜ!」
「ボス!」
「どうした?」
「女が一人もいなかったそうですが、どうします?男は数名生きていたそうなんですが」
「女がいないなら、殺せ」
「了解です!」
「ただし!惨たらしく殺すなよ。後で調べに来た奴らが、宙賊とやり合ったことに出来る程度にしておけよ」
「わかってますって、そんなことより、食い物と酒!だぜ、やっほい!」
・・・・君たちの方がよっぽど野蛮な宙賊と似たり寄ったりだと思うがな。
そう、彼らは宙賊ではない。同盟国家に敵対する国家がこの宇宙にはある。
戦争を続けるよう求めた国
玉王政国家 卜刺
戦争を常に常勝としている負け知らずの国家
敵対国家 バルシミオン
ただ物を作り続けるだけで満足している国家
統一国家 ナ・グジェリュシュ
この参加国は停滞を望まない。戦争という場所こそ彼らの生きがい。
常に勝つことだけを目標に人殺しの道具を開発し続ける国
人口の上昇を抑えられないために生存範囲を広げようとする国
物で溢れないために販売して売る。そのために戦争こそ最高の処分場と勝手に思っている国
この三カ国が結集して作った先遣隊。
彼らに名前は無い。ただただ言われたことを、命令されたことを、実行するだけ。
彼らへの命令はシンプルだ。
『惑星国家同盟に対する宣戦布告と大規模な混乱を。平和など脆いガラスのような地面に住んでいただけだと思い知らせて来い』という内容だ。
その実行者たちはすぐそばまでやってきている。
彼らの行く手を阻むものなど、もう存在しな・・・
【一瞬の煌めきの中にわずかな戦闘の光を発見。至急現場に飛ぶ。各艦は所定のコースを辿り目標地点に向かわれよ】
知らなかったとはいえ、戦争君からの熱烈なアプローチを見逃す寸前に、クロが何気なく監視していた国境沿いにて戦争の火花を確認したそうだ。だがこの時俺は一切知らなかった。艦長室で久しぶりに風呂の湯船につかって、疲れを癒していた。
・・・・俺の名前は、智也。
ゼルセルタ航空宇宙軍の特殊特務大隊に所属している。
今現在クルーは誰も居ない、戦艦蒼に乗っているのは俺とクロの二人だけ。。静かなものだ。だからこそ久しぶりに一人をエンジョイしていたんだが、先ほどからかなり艦が揺れる。というか、そもそもこの艦の隣に僚艦が居るはずだからこんなに揺れるような挙動を許すはずないのだが、一体なってるんだ?
正確には今現在、他のクルーは一時的に帰省中だ。だからこそ俺もジジババと言って怒られた陽平とともに戻ろうかとも思ったが、先日の航海がやはり決め手となったのか、無理が来ていたところに強引に走らせたのが行けなかったのだろう。各所でオーバーホールの作業が必要とのことで、クロと蒼海を両方一辺に点検させるべく、イオの居る小惑星に向けて移動中の出来事でした。
まさか、あんなことになるとは夢にも思わず。
誤字脱字、もし見つかればご報告、よろしくお願いします。