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誤字脱字、もし見つかればご報告、よろしくお願いします。
「それでも、軍事力の放棄で得られるものもあるだろうにね」
「まったくです。何も理解できていないのだけは分かりましたがね。
ですから、今回の交渉にはかなり可能性があるんですよ。なにせもう何年も戦争をしていない惑星なのですから」
ああ~。確かに全然同盟国家が増えない理由がそこに集約しているせいで、今回の交渉はもしかしたら交渉部全体が期待大なのかもしれない。
今回交渉役に選ばれた、グルジェツコ・VBサパスという人物は少し調べただけでもかなり優秀で、同盟国家が増えないというか、有象無象を加入させないようにした立役者だそうだ。普通なら規制緩和措置とかで惑星が軍事権限の移行をずらしてでも参入させたりするのに、彼がそういう規制緩和は好ましくないという結論できっぱりとした回答を持っていき、グダグダにならずそして宙域内の航行に対しても宙賊のような輩は出たとしても戦争のような犯罪行為は行われてこなかった。
惑星国家同盟加入担当という部署はそれほどまでの信念と実績の元にあるのだということだろう。
「それに、直近で入った同盟国家は地球ですがあの星は軍事力の集約と権限移行でだいぶ揉めたそうでして、かなり時間を食ったんですよ。そういう実績が有るので、あの星の参入以降は軍事力を即座に放棄してもらい指揮権を移行してもらわなければ同盟国家に入れない規約に変えたんです」
・・・・あぁ、地球政府のせいなのか。
「すいません。父方の出身惑星が申し訳ない。地球に言った記憶はあるのですが、詳細は分からなくて。今のところ観光に行っていないとも言えますが」
「あぁ、かまいませんよ。あの当時生きていたものとして、かなり大変だったということだけで、今ではいい経験でしたから」
「・・・・」
あれぇ?この人エルフじゃないよね?
「あぁ、私の種族ですか?人種ですよ。まぁ技術的に最後の世代に近い人種ですがね」
※人種限りなく人間に近いが、人工的な遺伝子組み換え技術を使い生まれた人類。人間との違いは多種多様で、基本的に共通しているのは、長寿命・病気になりにくい・生存エリアの範囲が広いの三つくらいだろうか。
長寿命=と言葉のままだが、実際に死んだ人種は少なく、事故や事件がらみなどの特殊な事情を除けば現在の所、長生きなのは間違いない。
病気になりにくい=人類というか生きている者たちがかかる病気への耐性がそもそも遺伝子操作されているので強いが、生まれた後に発生した病気にはかかりやすい。が死ねない。たまに彼らが病気になると世間はLV4クラスの自宅待機扱いで警戒されて彼らから抗体を取り出し、全生物に投与されない限り外出禁止というクラスのもの。だから彼らがかかる病気こそ危険だが、それ以外ではあるていどは大丈夫なのである。ただ、よっぽど体に悪いことをしていればその限りではない。確実に体をむしばむ病であろうとも、痛みと苦痛のみで死に至れない。
生存エリアの範囲が広い=簡単に言えば、宇宙空間以外の環境にはある程度、対応できるだけの力が有る。水の中、火の中、嵐の中、猛吹雪の中、などの特殊空間でさえ人が危険でもある程度は生存できるが、それは個体差になるためどれくらい生き残れるかは謎。
※人種人工的な遺伝子組み換えで誕生した人間を指す。クローンとは別存在。
過去の技術で作られてはいるが、彼らに生まれたときの記憶は存在しない。
(当然のことだが、人間など生き物が急に生まれたときの記憶なんて持ってはいない)
そして、彼らは宇宙大戦争終了後に順次目覚めさせられているため、戦争以前の記憶がない。
このことから、彼らの誕生にかかわった貴重なデータが無い。なので彼らのような人種を生み出そうとするまで人類はあとどれだけの時間と手間をかけなくてはいけないかはわからないということだ。
それだけの文明が何故滅んだかは未だに分からないらしい。
話がそれた気がするが、当時でもかなり大変だったので惑星国家同盟加入申請にどれだけ時間と労力を割いてでも、厳選する必要があるということだ。
「・・・・さてさて、そろそろ行かないといけない時間のようですね。楽しかった時間はあっという間でした。今回はより良いお話を持ってきていただきありがとうございます。これから話をつけに行ってきます」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「はい」
そういって、男の背中が見えなくなるまで見送った。
その後、何分か後に二番艦が出発していった。
俺たちの乗る艦はまだ当分出発は出来ないが、それでも次の旅に向けて準備は着々と続いていく。
平和の宙に漂う宇宙戦艦とは何とも滑稽だろうか・・・・。だが、それでも平和を維持するためにはいまだに武装は必要だ。宙賊もいるが、やはり同盟国家に加入していない非加盟国家にはこちらに進攻しようと今も虎視眈々と狙っていると聞くしな。
俺たちの日常とはかけ離れた場所で仕事をする男の姿にグッと来ただけだ。俺たちは俺たちの仕事をしようではないか。