表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰陽学園の鬼神嫁 ~十二天将の力を全て手に入れたら、愛が激しい美少女たちと永遠になる物語~  作者: みなもと十華@姉喰い勇者2発売中
第一章 鬼の少女達

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/281

第八話 妄想と嫉妬

 放課後――――


 人の居ない場所で話したいという杏子の頼みで、春近は彼女と人気ひとけのない空き教室に向かっていた。


 キョロキョロ――


 杏子は何かには怯えるように、周囲を気にしながら歩いている。

 その表情は、まるで男性を誘っているかのようにヒクつき、これでは相手を誤解させてしまいそうだ。


「こ、こっちです」


 目的の空き教室に到着すると、周囲を確認した杏子が恐る恐る入り口を指さした。


 ガラガラガラ――


 二人が空き教室に入ると、杏子は開口一番かいこういちばんにルリのことを訊ねてきた。


「あ、あの、土御門君は、酒吞さんのことを知っているのですよね」


 杏子の質問に、春近は少し考え込む。


 知っている(・・・・・)というのは、彼女は鬼の末裔だということだろうか。それとも何か別の意味だろうかと。

 不用意に答えてしまって良いのだろうかと、春近は返答に迷っていた。


「しゅ、酒吞さんが仲良くしているということは、土御門さんは敵じゃないはず……」


 杏子の口ぶりから、やはり鬼の件についてだろう。


(やっぱり鈴鹿さんはルリと源さんの間の事情を知っているのか……。ということは、鈴鹿さんも……)


 春近は重い口を開いた。


「もしかして……鬼の末裔とか頼光四天王のこと?」

「やっぱり知ってたんですね!」

「う、うん」

「ききき、聞いてください!」


 杏子はグイッと身を乗り出して話し始める。


「実は……私も鬼の末裔なんです……。私は何も力が無いのですが。鬼といっても、強い力を受け継いでいる人と、私のようにほとんど力の無い人もいるんです。でも、ほぼ強制的にこの学園に入学させられるし、陰陽庁の人たちに監視されているみたいだし、クラスメイトも先輩も怖い人が多いし、もう私、どうしたらいいのか……」


 杏子は周りに友達も味方も居ない学園に入学させられて、精神的に疲れてしまっているのだろう。


「それで、酒吞さんと仲が良い土御門君なら話を聞いてくれると思って……」


 偶然にも隣の席の女子が鬼の血を引いており、春近は何か力になろうと思った。


(鈴鹿さんも同じだったのか……。ルリたちの件もあるし、何とか力になってあげたい……)


「その事なら、ちょうどオレも何とかしたいと思ってたんだ」


「そうなんですか! よかった~」


 緊張の糸が解けたのか、ビクついていた杏子の顔が緩んだ。


「ルリたちと話し合って、どうするか考えようと思う。何か決まったら鈴鹿さんにも説明するよ」


「よろしくお願いします。実は、土御門君の苗字が有名な陰陽師と同じだったから、てっきり陰陽庁から派遣されてきた人かと思ってました」


(それで最初は恐がって避けられていたのか……。でも俺も陰陽庁と関わってるけどさ。これ、言った方が良いよな。黙ってるのも悪いし)


 良かれと思って話そうとする春近だが、これがドッキリのようだと気付いてはいない。


「あ、実はオレ、陰陽庁から派遣されたみたいなんだけど。源さんや四天王とも関係があって」

「へっ…………」


 杏子の顔が一瞬で凍った。


「えっ……う、うそ……だ、騙したんですか! は、はひっ……」


 腰が抜けたように杏子が床に崩れ落ちた。


「あ、違うんです。そうじゃなくて」

「あ、あ、あぁぁ――――」

「だからオレは」

「あひぃ!」


 完全に杏子がテンパってしまっている。床を這いつくばり春近から逃げようとするが、手足がバタつくばかりで進んでいない。


「ひいいっ、許してください!」

「だから、依頼が来たのは事実だけど、オレは普通の一般人で何も知らないんだ」

「――――ほんと?」


 青ざめていた杏子に安堵の表情が戻った。ヘナヘナと力が抜けて立てないようだが。


「大丈夫? 鈴鹿さん」


「くぅ……酷いですよ土御門君。て、てっきり私を騙して、あんなコトやこんなコトをするのかと……。そして逆らえないようにして……くっころ展開に……」


「どんな展開だよ!」


 杏子の発言が春近の予想の斜め上を行っていた。


「もう~冗談ですよ」

「冗談には聞こえなかったけど」


 落着きを取り戻したようだが、杏子の顔は紅潮こうちょうし変な笑いが漏れている。


「ふっ、ふふっ……ふひっ……」

「えっと、あの?」

「ふっ、ふひっ、ですよね。しないですよね」

「そうだね……」


 先ほどのくっころ展開(・・・・・・)とやらで彼女の想像力が広がったのだろうか。杏子の顔は涎を垂らしそうなくらいに緩み、体は小刻みに震えている。

 端的に言って変態っぽい。



 こんな場面を他の生徒に見られると完全に誤解されそうだ。

 春近は話を切り上げた。


「えっと、じゃあ戻ろうか?」

「はい……ふひっ」


 空き教室を出ようとしたところ、まだふらついている杏子がつまづいて春近の腕を掴んだ。


「きゃっ!」

 ガシッ!

「す、すみません」

「オレは大丈夫だけど」


 ガラガラガラ――


「あっ!」

「えっ?」


 教室を出た所で、廊下を歩いてきた咲とばったり鉢合はちあわせしてしまった。凄い偶然だ。


「えっ、ハル? って、その女は……」


 咲は、春近とその腕に寄りかかった杏子を見て固まってしまう。


「こ、こ、この浮気者ォ!!」


 咲は凄いスピードで走って逃げて行く。


「茨木さん! 誤解だから!」

「うるせぇええええ!」

「ちょっと茨城さん!」


 春近は杏子をその場に残し、誤解を解くべく彼女を追いかけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ