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陰陽学園の鬼神嫁 ~十二天将の力を全て手に入れたら、愛が激しい美少女たちと永遠になる物語~  作者: みなもと十華@姉喰い勇者2発売中
第一章 鬼の少女達

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第五十八話 デート編Ⅳ 杏子

 咲とのデートの翌日――――

 予想通りクラスの女子の間に『熱愛発覚』の噂が広がってしまった。

 何しろクラスの女子達が見ている前で、思い切り濃厚で熱々なキスシーンを見せつけてしまったのだから。とはいっても、元から教室内でイチャイチャしまくってはいるのだが。


 ハーレム王や変態といった変な噂に加え、春近は新たな称号を獲得してしまいそうだ。


 ホテル前で会った男子は、無言で春近の肩を叩き『オマエ、なかなかやるな!』と目配せをされる。どうやらクラスの陽キャにまで一目置かれてしまったようだ。

 いや、まだやってはいないのだが。



 そして今日は杏子とのデートである。

 鈴鹿杏子、他の強気女子のように激しかったり積極的ではなく、大人しくて物静かな女子で安全そうだ。

 たまに変なスイッチが入ることがあるのだが……。



 こうして春近と杏子の平和なデートが始まった。


「土御門君、今日は買い物に付き合ってもらいますね」

「うん、よろしく」


 平和で良かったぁ!

 鈴鹿さん、本を買うって言ってたけど。

 彼女はオレと似ている気がして安心感があるんだよな。



 激しく迫られることもなく、穏やかなデートは続く。

 街の商店街に到着すると、彼女に続いてアニメショップに入る。


「あれ、本屋じゃないんだ……?」

「はい、ここのコーナーが充実しているのでありますよ」


 まっすぐ目当てのコーナーへと杏子は進む。


「まあ、オレもアニメや漫画が好きなので良いけど。女子と一緒にアニメショップを見て回れるなんて新鮮だな」

 春近は独り言を呟きながら後を付いて行く。




 本がたくさん並んでいるコーナーに入り角を曲がると、そこは肌色多めな表紙が多い作品が並んだ場所だった。


「こ、ここは……BL系漫画のコーナーじゃないか……」

 うっ、ちょ、ちょっと気まずいような……


「あ、オレあっちの方を見てますね」

「ダメですよ。今日は付き合ってくれるって言いましたよね」


 春近が移動しようとすると、手を引っ張られて捕まってしまう。


 ああっ、何だか落ち着かない……

 周囲の女性客から、『なんで男が居るのよ』みたいな視線がする気が……

 いや、気のせいだろうか……


「あ、これ、土御門君に似てませんか?」

 漫画の表紙を春近に見せ笑顔になる杏子。


「えっ、そうかな?」

「似てますよ。雰囲気とか」


 ううっ!

 けっこう過激な描写で恥ずかしいのだが。


 春近が恥ずかしがって顔を逸らそうとすると、すかさず彼女にツッコまれる。


「それ! それですよ! その表情!」

「ええっ、何が……?」

「その、ちょっと怯えたように恥ずかしがる表情!」

「そんな顔してた?」

「してますよ。その表情に大嶽さんや羅刹さんが刺激されちゃうんですよ」

「そうなのか……」

「それ、絶対誘ってますよね!」

「誘ってないから!」



 漫画やグッズを色々買って杏子は大満足のようだ。

 二人で店内を回りながら、今季のアニメの話をしたり好きな漫画の話をする。

 春近も、女子とアニメの話が出来るのは新鮮で楽しくテンションが上がった。




 その後、ファミレスで休憩しながら、更に会話は盛り上がる。


 何故か、長篠(ながしの)の戦の話になり、長篠城籠城を巡る武田勝頼(たけだかつより)鳥居強右衛門(とりいすねえもん)の話になったり、戦いに敗れ撤退する勝頼を逃がす為に殿(しんがり)をした、武田四天王である馬場信春(ばばのぶはる)の話で盛り上がった。





 二人は色々と趣味や話が合って、お互いに楽しい時間を過ごす。

 そんな春近は、もっと杏子のことが知りたくなり考える。


 そういえば、鈴鹿さんって知り合ってから結構経つけど、知らない事が多いんだよな――


「鈴鹿さんって、入学前はどんな感じだったの?」

「え……っと……あの……」


 あっ……聞いちゃいけない感じなのか……?


「まあ、俺も似たようなもんだったし、ぼっちでも……」

「ぼ、ぼ、ぼっちじゃないですし」


 余計な事を言ってしまう春近。ぼっちは禁句である。


「ふふっ、でも、前も言ったけど、土御門君には感謝しているのですよ」

 彼女は特に怒ってはいないようだ。


「学園に入って誰も知り合いもいないし、怖そうな人達ばかりでどうしようかと思っていたのです。しかも、勝手にクラス委員長にされてしまうし……。話しかける人もいなくて、完全に学園デビュー失敗したと思っていたのだけど、勇気を出して土御門君に話し掛けてから毎日が楽しくなって。あの時、もし土御門君と話さなかったら今でも一人だったのかもしれません」


 ポニーテールを揺らしながら話す杏子が本当に楽しそうだ。


「オレは何もしてないよ。ルリや咲のおかげだよ」

「まあ、まさかこんなハーレム男だとは思いませんでしたがね」

「ううっ、申し訳ない……」

「ふふふっ」


 ちょとだけイタズラな目になって見つめられる。


「そ、そういえば、土御門君は酒吞さん達の事を……どう思っているのですか?」

「えっ」

「恋愛的な事ですよ」


 いきなり恋愛トークになってしまった。


「他にも茨木さんとか大嶽さんとか羅刹さんとか……あ、源さんもいましたね」

「うっ、多すぎる……」


 通常なら何人もの女子と付き合うなど許されないだろう。しかし、春近とルリたちは不思議な関係で結びついているようだった。


「うーん、好意を寄せられるのは嬉しいのだけど、こんなに大勢からなんて思いもしなかったからな……。正直な所、どうしたら良いのか分からないというか……」


「ふふっ……皆、凄く激しい性格をすていますから、選ばれなかった人が許さないかもしれませんね」

 そう言いながら、ちょっと楽しそうな顔をする。


「もう、笑いごとじゃないですよ。刺されるのはごめんです」


 でも、皆良い子なんだよな……

 怖くて避けていた大嶽さんも、デートしてみたら意外と常識人だったし。

 人って分からないものだな――――



「じゃあ……私のことは、どう思ってます?」

「えっ……」


 彼女は、唐突に聞いてきた。

 目を合わせると、真面目な顔をしている。


 これは冗談じゃなく、本気で答えないといけない気がする……。


 鈴鹿さんには告白もされてないし、他の子のように迫られてもいない。

 旅行の時の鈴鹿さんは、皆のドタバタに巻き込まれてキスしちゃったけど……。でも、とてもフレンドリーに接してくるし、時々変態っぽい冗談も言ってくるし、けっこうボディタッチも多めな気がする。

 仲は良いと思うのだけど――――


「す、鈴鹿さんは、とても話しやすくて趣味も合うし、一緒にいて楽しい人だよ」

「そ、そ、それって、私に好意を持ってくれてるって事でありますか?」

「う、うん」


 その時、彼女のメガネがキラリと光った気がした。


「つまり、私にもチャンスが有るって事ですよね」

「え、えっ、それって……」

「わ、私も、土御門君の事、す、好きです……」

「えっ……」


 突然、杏子に告白された。


「えっと……その……」

「そんな困った顔しないでください。べつに酒吞さんや大嶽さんを差し置いて付き合おうなんて言いませんから」


 両手をパタパタした杏子が赤い顔をしている。


「あ、あの、困ってるのは他の子からも告白されてるからであって、鈴鹿さんのせいじゃないからで……鈴鹿さんの好意は嬉しいから」

「ふふっ、そういうのもですよ」

「えっ?」

「私、前はあまり男子と話さなかったし、男子の事は苦手だったんです。あ、二次元の方は好きですけど!」


 そこは強調するんだ……


「でも、土御門君は怖くないし話やすいし優しいし……その、私の変な話にも合わせてくれるし。ここ重要ですよ! いいなって思ってたんです。でも、教室だと酒吞さんや大嶽さんが激しすぎて、近寄れないから観てただけなんですよ」


「そうだったんだ」


 そこで唐突に杏子がメガネをキラリと光らす。


「あ、そういえば……私って、実はけっこう変態なので覚悟しておいてくださいね!」

「えええええ……これ以上変態なのはちょっと……というか自分で変態とか言うんだ……」

「ふふっ、くふふっ」


 顔の前で腕を組み、杏子は不敵な笑いをする。




 学園への帰り道、杏子は春近の腕を掴んだ。



「そうだ! 思い出しました!」

「えっ、なに?」

「あの旅行の時、あれ私のファーストキスだったんですよ! あれじゃあんまりなんで、もう一回ちゃんとしたのをくださいよ」

「う、うん。そうだね」


 二人は夕日の見える通りの建物の陰でキスをした――――


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