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第三十八話 変態さん

 ゴールデンウィークも終わり、今日から登校日だ。

 春近は寮を出て学園内を校舎へと向かう。


 旅行では全員と一緒に寝てキスまでしてしまうという、とんでもない展開になってしまった。

 ますますハーレムでハレンチな感じになってしまったのだが、この後に残り二人を攻略しなくてはならないのだ。



「今日から、また百鬼さんや阿久良さんに接触しないと……」

 独り言を呟きながら登校する春近。


「おはようございます。旦那様」

「うわっ! あっ……お、おはようございます」


 突然、気配を消したままの栞子に挨拶され、春近はビックリする。

 いつの間にか隣に来ていたのだ。


 ここ最近の栞子の言動で、春近は気になっていることがある。


 尾行、鍵開け、侵入の隠密スキル……

 もしかしたら、自分の秘密が全部バレてしまっていないかと。

 このままでは、部屋にエッチな本を隠していたら、すぐに見つかってしまいそうだ。

 まさか、『自分が不在の間に部屋に侵入している……なんて事は無いよな……?』などと考えてしまう。


「旦那様……どうかなさいましたか?」

「いや、何でもないよ」


 とりあえず春近は栞子の件はおいておくことにした。

 教室まで歩きながら、次の対策を考える――――

 やはり、C組近くに行ってあの二人と接点を持つしかないのかと。

 



 昼休み――――


 春近はC組の教室前まで行き室内を見回す。


「二人共、居ないみたいだな……居ないのか……」


「何をしているのです?」

「うわああっ!」

 突然、後ろから声をかけられ、春近がビクッとなる。


 振り向くと、そこには黒髪ロング姫カットの小さな女の子が立っていた。


「あ……ひゃ、百鬼さん……」

「今、ちっちゃいって思いましたですね!」


 ――なっ、心を読まれたのか……?


「心は読んでないです! 顔を見れば分かります」


 ――びっくりした……心を読む呪力があるのかと思った。

 いや、やっぱり心を読んでいるような気も……しないでもない……

 心を読まれていたら、エッチな事を考えていたり胸とか脚とか観てるのが筒抜けになってしまうぞ……


「最近、わたしの周りをウロウロしていますよね!」

「い、いや、ウロウロだなんて」

「今日は忠告しにきました。わたしに関わるとアナタも悪い事が起こるですよ」

「えっ?」


 ――何だろう、何か彼女の呪力に関わる話なのかな?

 とりあえず、このチャンスに自己紹介だけでも。


「あ、そうの前に、自己紹介まだでしたよね。つち……」

「知ってます」

 こちらが名乗る前に(さえぎ)られた。



「変態さんですよね!」

「ぐふぁぁっ! へ……変態じゃないよ……」



 突然の変態扱いされる春近。


「噂は聞いてます。何人もの女を手あたり次第にモノにしている最低のハーレム王だと」


「うわぁぁぁぁぁーっ! ほぼ初対面から印象最悪だったぁぁぁー!」


「しかも、女の子の足を無理やり(はずかしめ)める変態だそうで」


 更に変なデマまでアリスは信じている。

 しかし、ハーレムや足で踏まれたのは事実なので、完全に否定も出来ない。


「あ、あの、違うよ…… 無理やりとかしてないから……」

「近寄らないで! 変態さんがうつるのです!」


 アリスは一歩下がって春近から離れる。


「わたしも変態ハーレムの一員にするつもりだろうけど、そうはいきませんです! 今日はそれを言いに来ました。では」

 アリスは、それを言うと逃げて行ってしまった。



 彼女が去って行った後に、呆然と立ち尽くす春近だけが残される――――


「そ、そんなぁ……」

 百鬼さんが逃げるのは、オレが変態とかハーレム要員にされると思って警戒しているからなのか?

 何とかして誤解を解かないと。




 放課後になって、再びC組に行く春近――――

 教室内を見ると、丁度アリスが帰宅しようと出て行くところだ。


「百鬼さん!」

 追いかけようとする春近だが、何処からともなくボールが飛んできて命中する。

「痛っ!」


「誰だ? 何だコレ? 校内でドッジボールでもしてるのか?」

 辺りを見ると開いた廊下の開いた窓からボールが入って来たみたいだ。


「偶然……?」

 春近が考え込む。


 いや、百鬼さんの言っていた……近づくと悪い事が起きる……

 前にも同じような事があったし、何かの不思議な呪力が関係しているのか?

 でも、まさか……


 ぼよんっ――――

 考えながら歩いていると、柔らかな壁のよなものにぶつかった。


「えっ!」

「きゃっ!」

 

 柔らかくムッチリとした感触の中見上げると、そこには背の高い女子が立っている。


 残るターゲットの少女である阿久良忍(あくらしのぶ)だ。

 春近は、ちょうどいい機会だと思い、彼女に話しかけようとする。


「あ、あの、すみません」

「い、いえ……私の方こそ……」


 先日も春近からぶつかったのに、また申し訳なさそうにしている彼女だ。

 そんな忍に、春近はもう一度謝罪した。


「この前も、すみませんでした。二度もぶつかってしまって」

「いえ……」

「あ、あの、ちょっといいですか?」

「……」

「えーと……少し話とか……」

「でも……」


 会話が続かない……


 春近ピンチである。

 今までの女子は積極的にグイグイくるタイプで、コミュ力の低い春近でも仲良くなれた。

 しかし、阿久良忍は人見知りなのだろう。

 コミュ力が低い同士で会話に困ってしまう。


 最近のルリ達との交流で、自分のコミュ力が上がったと勘違いしていた春近だが、本当はコミュ力は高くなっていないのを自覚したようだ。

 何とかしなくては――――


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