表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰陽学園の鬼神嫁 ~十二天将の力を全て手に入れたら、愛が激しい美少女たちと永遠になる物語~  作者: みなもと十華@姉喰い勇者2発売中
第十章 エピローグ~楽園の鬼神王~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

276/281

第二百七十一話 全員と結婚?

「サメだ! 人食いザメだ!」


 ビーチに叫び声が響く。

 翠玉色(エメラルドグリーン)の海にサメの背ビレが突き出ているのだ。

 のんびりと休日を海水浴で楽しんでいた春近たちにも緊張が走った。


「きゃぁぁぁぁ!」

「サメだ!」

「助けてぇぇぇぇ!」


 泳いでいる人々が逃げ惑う。

 サメが背ビレを海面に出して泳ぐのは。獲物を狙っている時だという。

 背ビレを出したサメに出会ったら危険なのだ。

 サメの泳ぐスピードは人間の比ではないほど速く、狙われたらとても逃げ切れるものではない。



「サメが出たのか!」


 春近が海を見ると、逃げ惑う人々の中に和沙の姿があった。

 サメの背ビレの一番近い場所にいる。


「マズい! 和沙ちゃんを助けないと!」


 ザッザッザッザザザザザ!

 春近が海に向かって駆け出す。


「うおぉぉぉぉぉぉぉ! 呪力開放!」


 春近が叫ぶと、体から銀河のような青白い光が放たれる。

 十二の鬼神の根源を持つ春近は、それぞれの根源を掛け合わせ驚異的な力を発揮するのだ。

 まったりスローライフで誰もが忘れていたが、春近は最強の鬼神王であり自称新世界の王である。


鬼神王旋風金剛拳デモニックダイヤモンドインパクト!」

 スバババババババババババババッ!!


 呪力により身体を超強化した春近は、驚異的なスピードで海面を走る。

 どうやら鬼神が本気を出すと、水の上を走れるようだ。

 走りながら周囲の民間人を旋風により浮き上がらせサメから遠ざけて行く。

 青白い呪力を迸らせ海面を走るその姿は、まさに鬼神王デモンベリアルそのものだ。


 ドンッ――!


 和沙のところまで行くと、海面を蹴り上空に舞い上がった。


「うおぉぉぉぉーっ! くらえ必殺の拳、|鬼神王因果律変動空間歪曲拳デモニックカルマディストーション!!」


 ドカァァァァァァァァァァァァァーン!!

 サッバァァァァァァァァァン!


「うっわっ! 危なっ!」


 超強力な春近のパンチにより水面が大爆発してサメも和沙も吹っ飛ばされる。

 サメには命中しなかったのだが、驚いたサメは一目散に逃げ出した。驚異的な力の差を本能的に感じ取ったのだろう。

 当然だがサメが鬼に勝てるわけない。


 何かの偶然で鬼ヶ島の内海に迷い込んだサメは本能に恐怖を刻み込まれ、二度と内海に入って来ることは無いだろう。


 パンチにより波紋状に広がった波も収まり、再びそこに平和な海が戻った。


「ふう、やっぱり平和が一番だぜ」

「ばっかもぉーん!」


 一仕事終えてホッと胸を撫でおろした春近に、和沙が痛烈なツッコミを入れる。


「か、和沙ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫じゃなぁーい! 私まで吹っ飛ばされたじゃないか! サメ一匹に必殺技とか大袈裟過ぎだぞ、ハルちゃんは!」


 そもそも大天狗の力を持つ和沙は、強力な神通力でサメなど簡単に倒せるのだ。

 水を操る彼女にとって、海は最強のテリトリーである。

 自分で何とかしようとしていたところに、空から春近の超強力な一撃が落ちて来たのだから、そりゃビックリするというものだ。


「取り敢えず和沙ちゃんが無事で良かった」


 ガシッ!

 春近が和沙をお姫様抱っこする。


「へっ、あ、あの、ハルちゃん……」


 まさかの展開に、和沙が真っ赤になって春近の体にしがみ付いた。


「あっ、重っ!」

 サブゥゥゥゥーン!


 解放していた呪力を抑え元に戻った春近が、手を滑らせて和沙を海に落としてしまう。

 最強のはずなのに、やっぱり強そうには見えなかった。


「うわっぷ、こら! 落とすな!」


 お姫様抱っこで夢心地だったのに、突然落とされ海水を飲んでしまい和沙がご立腹だ。


「ごめん」

「まったくキミは、途中まではカッコよかったのに」


 二人で砂浜まで戻ると、周囲の島民から歓声が上がり、遥たちが集まって来た。


「和沙、大丈夫?」

「ああ、ちょっとビックリしただけだ。問題無いぞ、遥」


 遥の声に和沙が腕をガッツポーズのような形にして答える。


 実際のところ、凄まじい力を持つ大天狗の化身でも、サメは怖いのでビックリして固まっていたのだ。

 そんなところに大切な彼女を助ける為に駆け付けた春近には、ちょっとカッコいいとか思っているのだが、恥ずかしいので黙っていた。

 きっと夜になったら甘えん坊モードになり、思いっ切り春近に甘えてバレてしまうのだろうが。


 春近が簡易的に建てられた海の家に入ると、さっそく遥が目を輝かせて迫ってきた。


「春近君、さっきの凄かったね。いつもあんな感じならカッコいいのに」


 鬼神王モードの春近が好みの遥なのだ。

 ここはオヤクソクで春近も応えねばならない。


 ダンッ!

 春近は壁際に遥を追い込むと、壁に手を突き顎クイをする。


「遥! オレはいつだって最強主人公だろ。ちゃんとオレの言い付けを守れよな」

「は、は、はい! ハル様ぁぁぁぁ♡」

「まあ、ここまでなんだけど……」

「だから、何で途中でやめるのさ!」


 いつものように俺様系主人公になれるのは少しだけのようだ。

 何だか遥にイジワルしているようにも見えるが、春近としては恥ずかしくて人前では数秒が限界だった。


「ふんす! 春近は最強変態王。異論は認めない」


 黒百合がヤジを飛ばす。


「あれれぇ~黒百合(くろゆり)ちゃん、先日の晩はベッドの中でヘン――ぐわっ」

「ぐぬぬ、おのれ春近! 許さぬ」


 春近がベッドでの話をしようとして、飛び掛かった黒百合に口を塞がれる。


「んんんっ、ぷはっ、ちょっと待て。言わないからっ!」

「もう春近は大天狗旋風磔獄門ブラックリリーエクセキューション! 天網恢恢疎(てんもうかいかいそ)にして漏らさず!」

「ちょ、待て! わけ分からん」


 いつものようにじゃれ合う二人を放置して、他のメンバーが昼食へと向かう。

 和沙と遥は昼食をとりに行くようだ。


「和沙、お昼ご飯は何にしようか?」

「私は断然ガッツリ系だな。遥はどうする?」

「食べ過ぎると太るよ」


 今日も今日とて鬼ヶ島は平和だった。


 ――――――――




 他のメンバーも集まり、港の近くにある定食屋へと入る。

 店の看板には|鬼柴田《ONI-SHIBATA》とオシャレなデザインで描かれている。

 元は定食屋柴田だったのだが、島の名称が鬼ヶ島に変わったのに合わせて変更し、妻の助言もあって店の外観もオシャレになったのだ。


 鬼柴田といえば、織田信長の家臣である柴田勝家を連想しそうだが、ちょっとだけ武骨で勇猛果敢な武将にかけていた。


 ガチャ!

 店のドアを開けると知的な感じのメガネをかけた女性が声をかける。


「いらっしゃいませって、何だ、キミたちか」


「何だじゃないよ、お客だよ。賀茂さん……じゃない、今は柴田さんか」


 春近が話しかけたのは顔見知りの陰陽庁職員で、旧姓賀茂明美、現在は結婚して柴田明美だ。

 この店の店主である柴田孝弘と結婚し、陰陽庁鬼ヶ島出張所で春近たちの世話や監視をしつつ、休みの日は店にも顔を出していた。


「どっちでも良いわよ。でも、明美さんって呼んで欲しいかな」

「明美さん、ちょっとお腹が出て……?」

「春近君! それが女性に会った時の挨拶ってどうなの?」

「い、いえ、違うんです。すみません」

「ふふっ、冗談よ。私ね、赤ちゃんができたの」


 明美がお腹をさすりながら嬉しそうな笑顔を見せる。


「ええっ、おめでとうございます」

「おめでとう!」

「きゃぁ、赤ちゃん」

「おめでとー」


 春近に続いて彼女たちも声を上げる。

 知り合いが妊娠と聞くと何故だか微笑ましくなってしまう。


「もう、孝弘さんったら、凄い喜んでね。今から名前をどうしようか候補を出しちゃったりしてね。まあ、彼ったら料理も上手だし家事も得意だし優しいしで、ほんと良い男を捕まえたわ」


 明美がニッコニコだ。


「明美さん、いくら旦那さんが家事得意でも、全部任せっきりだと愛想尽かされますよ」

「そ、そんなの分かってるわよ」


 一堂に笑いが起きる。


「やあ、いらっしゃい。いつもありがとう」


 店の奥から話題の孝弘が登場する。


「お子さんができたそうで、おめでとうございます」

「もう聞いたのかい。ありがとう。そうだ、今日はお祝いに奢りにしようかな」

「ちょっと待ってください。たくさん食べる子がいるから止めておいた方が……店が潰れちゃいますよ」


 一瞬だけ春近の視線が動いたのを、一部の彼女は見逃さなかった。


「ハルぅ~! 今、私を見たよね? やっぱり私のこと腹ペコ大王とか食いしん坊太郎とか思ってたでしょ!」

「ルリ、思ってないから。そんな変なネーミング」


 やっぱりルリに抱きつかれる。

 ただ、理由を付けて抱きつきたいだけなのかもしれないが。

 その一部始終を見ていた忍も声を上げる。


「春近くん、私のこと、最近太ったよなとか思ってますか?」

「忍さんは、今のままが最高だから。俺の女神だから。太ってないから」

「えへへっ、春近くん大好きです」


 忍がデレデレだ。

 春近に褒めて欲しくて駄々こねているだけのようにも見える。


「オマエら、早く席に着けよ。それ以上イチャイチャしてると渚や天音の嫉妬が爆発寸前だぞ」


 咲にたしなめられた。

 確かに他の彼女とイチャイチャしていると、愛が激しい一部の彼女が爆発しそうで危険なのだ。




 とりあえず全員席に着いて皆で昼食となった。

 大勢でおしかけて店が貸し切り状態だ。

 後から入って来る島民の方々も「鬼神様の貸し切りなら後にします」と言って出て行く。


 美味しそうに料理を食べるルリが、ふと呟いた。


「ねえ、ハル、私とハルの結婚はいつなの?」


「「「………………」」」

 彼女たちに一瞬の静寂が走る。


「えっと、ルリ、まだ学生だけど卒業してからで――」

「えええ~っ、もう結婚したい。ハルの両親からも許可もらってるから良いよね」


 前に帰省した時に『息子を頼む』と言われたことを、ルリは『結婚OK』と捉えていた。

 愛し合い子供を授かった明美を見て、ルリの結婚願望がぐんぐん上がってしまったのだ。


「ハルぅ~結婚しようよぉ~♡ えへへっ、だいしゅきぃ♡」

「あ、あの、皆の視線が……」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


 数人の彼女が凄まじい威圧感を発する。

 正に鬼神の怒りだ。


「春近! あたしとの結婚はどうなってるのよ! 一生側にいなさいって言ったでしょ!」

「ハル君、ハル君、ハル君、ハル君、ハル君、私は? 私のこと忘れてないよね? 私も愛して欲しいの! 愛してくれないと呪っちゃうかもぉ」


 渚と天音が春近にすがりつく。

 このタイミングで嫉妬が爆発した。


「分かってるから。結婚するから。特例で何とかするから!」


 祖父の晴雪に楽園計画の概要を聞いた時に、特例だの何だのと言っていたのを思い出す。

 何やら治外法権的な一定の免除を与えて、重婚を認めるだの何だのと。


 プルルルルルル、プルルルルルル――――


 ちょうど祖父のことを思った時に、その祖父から電話が入った。

 春近は、スマホの画面を見つめて『また面倒ごとじゃないだろうな?』と思う。

 もはや全員の彼女と結婚して本物のハーレム王になるだけなのだ。

 最強の鬼神が勢揃いし、恐れるものも何も無いのだが、厄介な事件だけは勘弁してくれと思う春近だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ