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陰陽学園の鬼神嫁 ~十二天将の力を全て手に入れたら、愛が激しい美少女たちと永遠になる物語~  作者: みなもと十華@姉喰い勇者2発売中
第十章 エピローグ~楽園の鬼神王~

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第二百六十八話 楽園の鬼神王

 遠く寄せては返す潮騒の音を聞きながら、春近は穏やかな気持ちでハンモックに揺られていた。

 都会にいた時には気付かなかった、ゆっくりと流れる贅沢な時間。


 何かに追い立てられるようにあくせくと時間に追われ、線路から脱落(ドロップアウト)したら戻ることができぬ誰もが奪い合う競争社会。

 虚飾と自己顕示欲に塗れマウントの取り合いに終始している人々。

 そんな現代社会から遠く離れ、この緑ヶ島に移住し数か月の時が流れていた。



「ふいぃ~平和だぜ……」


 春近が呟く。


 海が見える高台に簡単な小屋を建て、ハンモックやロッキングチェアを完備し、秘密基地のように改造して使っていた。

 隣には何故か自動販売機も設置され、喉が渇けばジュースも飲めて至れり尽くせりだ。

 陰陽庁に言って色々手配してもらっているのだ。


 東京圏3000万人の命や財産を救った救世主にしては、これでも控えめな要求なのかもしれない。


 なにしろ春近ときたら、世界最強の力を手に入れ小惑星アドベルコフトゥスという巨大隕石の落下から世界を救ったというのに、本人は目立つのも威張るのも苦手ときて、静かにアニメや漫画やゲームをしてオタ生活をしたいだけの人間なのだ。

 世界征服して絶大な権力も、世界の富を独占して豪遊も、春近には何一つ価値を見出せない。

 平和に静かな暮らしがしたいだけなのだ。


 と、言っても――

 彼女が十三人も作ってしまい、夜は凄まじく大変なのだが。


 十二天将と呼ばれる十二人の鬼神少女だけでも大変なのに、結局後を付いて来てしまった源氏の姫まで彼女に収まってしまう。

 もう限界で毎日がフラフラなのだ。


 アリスの作ったエッチローテーション表で、毎日一人ずつ彼女がイチャイチャしに来るのだが、たまに一人飛ばして休みにし別の日に誰かと一緒に『二人女王様』などと、とんでもないプレイをしたがる彼女がいるのも困ったものだ。


 ゾクゾクゾクッ!


「うっ……こ、腰の辺りに悪寒が……」


 某女王二人による無慈悲で執拗で徹底的なドS調教を思い出し、春近の腰の奥の方がゾクゾクと震えた。


「ま、まったく……渚様と天音さんには困ったもんだよ。でも、仲良くなってケンカもしないのだから良いことなのかな?」


 出会ったばかりの頃は、ルリと渚が呪力でバトルしてしまったり、渚と天音が対立しそうになったりと心配だったが、今では仲良しになって一緒にドS攻めしているのだ。

 ドS攻めには困ったものだが、彼女たちが仲良くしているのは嬉しい限りだ。


「だ、大丈夫、オレはMじゃないはず……」


 完全にドMなのに、まだMじゃないと言い張っている春近だった。

 もう認めてしまえば楽になりそうだ。



 あれから島は様変わりした。


 町長と黒百合が主導して、島の名称を『鬼ヶ島』と変更させたのだ。

 一時期インバウンド目当てで開発し、失敗してゴーストタウンのように放置されていたホテルや商業施設には、新たに多くの店が入り華やかになる。

 鬼神王や彼女たちを慕って集まった人々が街づくりに協力し、港周辺の開発地域は息を吹き返した。


 黒百合の発案のレジャーランド計画により、鬼神王の住む島という振れ込みと、綺麗な海などの豊かな自然とのコラボにより、多くの観光客が訪れるようになったのだ。


 くどい様だが、東京圏3000万人の命を救った英雄たちである。

 それまでの鬼だの何だのと恐れ忌み嫌われていた頃とはがらりと変わり、今では鬼の少女たちは感謝される存在なのだ。


 ただ、当の春近は目立ちたくないので、殆ど観光客の前に出ることも無いのだが。




「ふいぃ~やっぱり大人の秘密基地は最高だぜ!」

 ちょっと大人ぶって春近が呟く。


 ゆったりと流れる極上の大人時間を堪能し、時間を忘れてのんびりするのが贅沢なのだ。

 あとはガレージでも作って趣味の道具をいっぱいにし、漫画に登場するバイクでも置きたいところだ。


黒百合(ブラックリリー)と、島をツーリングとか楽しそうだな」


 黒百合は自分のバイクを取り寄せて寮に止めていた。

 黄龍王イエロードラゴンロードという中二っぽいネーミングのバイクだ。

 春近も黒百合に影響されてバイクが欲しくなっていた。

 あまり大きな島ではないので、すぐ一周してしまいそうだが。



「ああぁ~ハルいた!」

 小屋の外からルリたちの声が聞こえる。


「あっ、見つかっちゃった」


 観念して皆を中に入れてあげる。

 ルリと咲と和沙の三人がいた。


 のんびりしたい春近だったが、最愛の彼女たちとあらば話は別だ。

 いつでもどこでもイチャイチャしてしまうのだから。


「ハルぅ~! 私も遊びたい~私の番まだなの」


 ルリが駄々をこねる。

 大きくセクシーな体で子供っぽい仕草が可愛い。


「ルリさんや、この前エッチしたばかりだから、ローテーション表だと大分先だよ」

「ええ~毎日したい」


 毎日したいお年頃のルリなのだが、十三人の彼女に春近は一人なのだ。

 あまりムリさせると春近の体がもたないのだ。



「へぇ、ここ見晴らし良いんだな。アタシもここでのんびりしたいな」


 咲が窓から海を眺める。


「おっ、咲も大人の秘密基地の良さが……」


 春近が咲の隣に並ぶ。


「へへっ、ここから海を見ながらハルとエッチしちゃたり……って、アタシなに言ってんだよ」


 違う意味の大人だった。

 それを見ていた和沙が何か言いたそうな顔をする。


「まったくキミは、もっと私を可愛がるべきだと思うぞ。ルリや咲にばかりデレデレしてからに」


 和沙も相変わらずイチャイチャするように求めている。

 猛烈に甘々エッチをしたいのに、他の子とイチャイチャしてばかりでご立腹なのだ。


「くっ、オレの彼女はエッチ女子ばかりかよっ!」

「さっきからルリの胸や太ももをチラ見しているハルには言われたくねぇぞ!」


 春近の文句に速攻で咲がツッコむ。

 男の視線には敏感なのだ。


「しまった……本能には打ち勝てないぜ……」


 春近の場合はガン見するのでバレバレだった。



「ふふっ、ハルも気に入ってくれたのかな? どお? 新しい服買ってみたの」


 ルリが、そう言ってクルっと回る。


「うおぉぉぉぉ! 超似合ってるよ。凄く可愛い! ルリ大好き!」


 春近がべた褒めする。

 もう最近は、常にラブラブなのだ。


「えへへ~♡ ハルぅ~だいしゅき~♡」

「ルリぃ~」


 二人が抱き合ってイチャイチャし始めて、他の二人がムッとしてしまう。


「ふんっ! アタシだって新しい服なのに、ルリばっかり褒めてズルいだろ……」


 咲が口を尖らせて拗ねてしまう。


「さ、咲も似合ってるよ。可愛い」


 慌てて春近が咲も褒める。


「ホントかよ。どうせアタシは……」

「そんなことないから。咲は最高に可愛いオレの彼女だから。好きだよ」

「だ、大が付いてねぇだろ」

「大好きだよ」

「うっ……嬉しい♡ ありがと……ふふっ♡」


 咲が嬉しくてにやけてしまう。

 大体いつものパターンなのだ。

 わざと拗ねてみせて、春近にいっぱい褒めてもらう。

 最初から二人は超バカップルなくらいにラブラブなのに、毎回これをやっているのだ。



「わ、私もだな……新しい服を……」


 和沙も同じように褒めてもらおうとモジモジする。


「あっ、和沙ちゃんも……まあ、良いんじゃない?」

「おい! 何で私だけ雑なんだ! またわざとそうやって!」

「ははっ」

「待て! とっちめてやる!」


 これまたいつものように、春近が和沙をからかって追いかけっこになってしまう。

 逃げ出す春近を、和沙がムキになって追いかけ回す。

 本当は仲良しなのに、わざとふざけあって楽しんでいるようだ。

 どうせ、この後で甘々な感じになっているのだから。


 そして残されたルリと咲が少し嫉妬する。


「ハルぅ~また、どっかに行っちゃった」

 プク顔してルリがプンスカ怒る。


「あいつら懲りねえな……いつも追いかけっこして疲れねえのかよ」

 咲は若干あきれ顔だ。




 一方、追いかけっこしている二人は――――


「待てぇぇぇぇ! こらっ、捕まえたぞ!」

「ちょっと、和沙ちゃん。お手柔らかに」


 砂浜の方まで走ったところで、和沙に捕まって春近はぎゅうぎゅうと抱きしめられる。

 もう陽射しも温かく汗ばむ陽気だ。

 少し汗ばんだカラダを押し付け、和沙がウズウズと興奮してしまう。


「ハルちゃん……もっと私をだな……」


 和沙は恥ずかしそうに顔を赤くしながらも、決して腕を離さない。


「和沙ちゃん。冗談だって。本当は可愛いから」

「ふ、ふーん。だったら、どこが良いかちゃんと言ってみるのだ」

「えっと、先ず見た目がしっかり者なのに、実は甘えん坊で可愛いところとか」

「ま、ま、待て! そういうのは内緒にしてくりぇ……」


 先ず一つ目で、もう照れて喋り方が変になっている。


「次に、ショートカットでボーイッシュな感じなのに、実は凄い乙女で受け身な感じのギャップが……」

「ふひっ……ま、待つのだ……こんな場所で恥ずかしいだろ」


 自分から要求しておいて、春近が答えると恥ずかしさにフニャフニャしてしまう。


「そして、その服だけど、和沙ちゃんの魅力である少し日焼けして引き締まった脚を大胆に出したショートパンツ。凄く魅力的で可愛いですよ」


「くっはぁぁぁ~♡ き、キミは何て恥ずかしいやつなんだ。け、けしからん」


 何だかよく分からない理由で怒られる。

 ただ、照れているだけなのだろう。


「は、ハルちゃん……なでなでして欲しいな♡」

「もう、やっぱり和沙ちゃんは甘えん坊だよ」


 なでなでなでなでなでなで――――

 今回もやっぱり甘々な感じになってしまう。

 もう恒例行事だ。


「はっうぅ~♡ ああっん、もっとなでなでちてぇ~抱っこもぉ♡」

「あ、あの、和沙ちゃん……人が」


 通りかかりの島の住民が声をかける。


「鬼神様、今日も熱々ですね」

「はっはっは、仲がええのぉ鬼神様は」


 皆、口々にイチャイチャしまくる二人に挨拶する。

 もう島中の人が知っている周知の事実なのだ。

 毎日のようにイチャイチャしまくっているのだから。


「えっと…………どんまい」

 春近は和沙を元気づける。


「うっわぁぁぁぁ~またやってしまったぁぁぁぁーっ!」


 いつものように、人前で恥ずかしいことしまくって自爆する和沙だ。



 今日も平和に流れる島の時間の中で、楽園に到達した鬼神少女たちの物語。

 そして、春近が前代未聞空前絶後の特例による重婚をしてしまう物語。

 エピローグは、もう少し続くのだった。


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