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第二百五十二話 鬼神超絶合体十二連?

 ことわざで『英雄色を好む』とあるように、歴史上に名を残してきた英雄と呼ばれる者は、女性関係にも精力旺盛であり、何人もの嫁や愛人がいたとされる。

 実際に覇者となった英雄は、大きなハーレムを作り多くの子孫を残したのだ。

 しかし、ここにいる英雄は少し事情が違うようで――――



 そう鬼神王春近である。

 グイグイ迫る彼女たちに、春近は覚悟を決めようとしていた。


 これはマズい――

 本当に十二人全員同時なのか。

 いくら鬼神王になって体力が向上したといっても、最強エッチ女子を十二人も相手できるのか?

 くうっ、今でこそハーレム王などと呼ばれているが、昔はただの陰キャの草食系男子だったこのオレに!

 だが、オレは生まれ変わったんだ!

 隕石撃破では彼女たちが必死に頑張ったんだから、ご褒美エッチで満足させてあげなければ!

 オレはヤルぜ!

 全員と、やってやんよ~!


「ツンッ!」

 ビックゥゥゥーン!


 やる気満々で男の威厳を見せつけようとした春近だったが、天音にツボを押されてヘナヘナと崩れ落ちる。

 エッチマスター天音は人体のツボを熟知しており、房中術(ぼうちゅううじゅつ)まで自由自在に使えるのだ。

 技術に於いても天賦の才に於いても、百年に一人の逸材であるエッチの天才天音に勝てる者など存在しないのだ。


「えへへ~♡ じゅるりっ……ハル君っ♡ やっとハル君を徹底的に堕とせる日が来たんだねっ! 男に生まれたコトを後悔するくらいの、無慈悲で徹底的で終わりのない快楽地獄にしてあげるからねっ!」


 天音が笑顔を浮かべたまま凄まじい迫力で、とんでもない調教宣言をする。


「えっ、えええっ! も、もしかして、天音さんって……実は怖いお姉さんなのでは……?」


 さすがにお人好しの春近でも気付いた。


「あんた、今頃気付いたの?」

「ハルちゃん……だから、前から天音は怖い女だと言っていたのに」


 渚と和沙にもツッコまれる。


「いえ! それでも……天音さんは優しくて親切なお姉さんです!」

「あああ~んっ♡ ハル君、だ~い好き!」


 結局、いつもと同じ感じに落ち着いた。

 いくら天音が腹黒いところや性格悪そうなところを見せても、春近の中では永遠に優しくて親切なお姉さんなのだ。


「もうっ、ハル君ってばぁ♡ えへへぇ♡ でも、調教は手を抜かないからねっ!」

「で、ですよねー」

「手始めに感度が何倍にも上がるツボを押してあげるねっ!」


 ビックン、ビックン、ビックン――――

「ぐっ、ぐわああっ!」


 何やらよく分からない天音のテクで追い込まれる。

 しかし、そんな二人をルリは黙って見ていられない。


「ちょっと、ハルぅ♡ 天音ちゃんとばっか話して楽しそうでズルい!」


 天音と仲良くしているのに嫉妬したルリが、春近の上に乗ってきた。

 当然のように生まれたままの姿だ。


「他の子とばかりイチャイチャしているハルは、ボッコボコじゃなくエッチエチしちゃうからね」

「ルリ……何だか意味が分からないけど、とにかく凄そうなのは分かる……」

「ハルぅ~だいしゅき~ちゅっ♡」

「んんっ、ルリ……」


 春近は夏休みにハッスルしたルリの激しい攻撃を思い浮かべて戦慄した。

 天性のサキュバスのような魅了と催淫を同時攻撃してくるような特性が、今は全ての想いを乗せて春近だけに向けられる。

 更に天音の妖しげなツボ押しにより高められた感度が相乗効果になる。


「ほらっ、春近! あたしにもサービスしなさいよ!」


 渚も黙っていない。

 当然、ご奉仕のキスを要求する。


「はむっ♡ ちゅぱっ♡ 春近! 好きよ! 大好き! ちゅっ、んっ♡」


 渚の甘い毒のようなキスで、更に感度は高められる。

 そうしている間にも、天音が羽毛接触性愛(タッチオブカーマ)で全身を刺激しまくり、更に快楽地獄へと春近を追い込んで行く。

 今の春近は、ルリの催淫スキルと渚の女王スキルと天音の性技スキルにより、感度5000%アップしていた。(当社比)


「春近くん……ふふっ、お仕置きしちゃいますね」


 トドメとばかりに忍が春近のカラダをマッサージし始めた。

 手だけではなく腕全体を使うような、ダイナミックでありながら繊細なタッチだ。

 春近のことが大好きで、気持ちよくなって欲しくて色々してくれるのだが、毎回エッチな気分が暴走してやりすぎてしまうのが困ったところである。


「ほら春近くん♡ お仕置しちゃいますねっ♡」

「んんんっ、んんんーっ! ぷはっ! ひぃぃぃぃぃぃーっ!」


 際限なく押し寄せる強烈な快楽の波に、春近は体が飛び跳ね暴れ回りたいくらいなのだが、彼女たちに手足を押えられていて全く身動きできない。

 他の子にもマッサージされたりペロペロされ、もう何が何なのか分からないくらいだ。

 鬼神王になり体力もドM力も飛躍的にアップした春近だからこそ耐えらえているが、常人ならは絶対に耐えられない攻めなのだ。



 んんんんんっ――――――――

 何だこれ! 何だこれ!

 死んじゃうぅぅぅぅぅぅぅぅーっ!

 あっ、これは天国かな……?


 春近は、快楽無限地獄の最深部で天国を見た。

 それは極限の快楽の中で見た幻影だったのかもしれない……


 ――――――――

 ――――――

 ――――




「不本意です! 納得できないです!」


 アリスがプンスカ怒っている。

 小さな体を目いっぱい使って怒りを表現しているのが、逆に可愛らしくて微笑ましくなる。


「もう機嫌直してよ。ほら、アメ食べる?」

「子供扱いするなです!」


 アリスが怒っているのも頷ける。

 あの後、暴走したエッチ女子四天王により春近が搾り取られてしまい、全員に順番が回らなかったのだ。

 大人しい系の何人かの彼女は、肉食系女子がハッスルしているのを見せられただけで、更に欲求不満が溜まっただけだった。

 だが、春近にも限界というものが有るのだから仕方がない。


「あ、あの、アリスちゃん……ごめんね……」


 忍がシュンとなっている。

 実は忍が絶倫過ぎて止まらなくなってしまい、他の子より多くハッスルしてしまったのも原因なのだ。


「むぅ……忍、お肌つやっつやですね」

「はうっ、ご、ごめんなさい」


 お肌つやつや系彼女の忍が、大きな体を小さくする。


「し、死ぬかと思った……エッチし過ぎで死んだら恥ずかし過ぎるぜ!」


 一日に二度も死の恐怖を味わうのは春近くらいだろう。

 一つは隕石直撃、もう一つはエチエチ地獄だが。

 結局、順番が回ってこなかった彼女たちには、後で満足いくサービスをする事を約束して開放されたのだった。


 ――――――――




 昼食は贅沢な高級食材と料理長の技術の粋を極めた豪華な料理となった。

 しかし、春近は非常に居心地の悪い状況になっていた。


 ぷふっ、ぷっ、ぷーくすくすくす――――

 女性従業員の視線を一身に集め、何やらクスクスと笑い声が聞こえてくる。


「ちょっと、ホントに十二人全員とやったのかな?」

「やだーっ! すっごい絶倫!」

「そんなに凄いテクなのかな?」

「そりゃ、あの子たち全員を虜にしちゃうくらいだから、すっごいモノを持ってるんじゃないのかしら?」


 聞こえてる――

 聞こえてるから。

 恥ずかし過ぎるだろこれ。

 何の羞恥プレイだよ。


 飲み物を運んで来たウェイトレスのお姉さんが、さり気なく連絡先の書かれた紙を春近の前に置いて行く。

 巨大隕石から東京を救った英雄であり、十二人の女性を虜にしたハーレム王に興味津々なのだ。


「あれ? これって……」


 凄い殺気を感じて横を見ると、ルリが無言の圧力で春近を見つめている。


「ハル? それ、コッチに渡そうか?」

「ち、違うから! こんなの連絡するわけないだろ」

「ほんとかなぁ~」

「ほんとだって! オレはルリたちしか見てないから!」

「ふふっ、ハルならそう言うと思ってたよ。冗談だって」


 冗談にしては、ちょっと殺気が強い気がするが、ルリは連絡先の書かれたメモを受け取るとクシャっと握りつぶした。


「お飲み物のおかわりは宜しいでしょうか?」


 別のウェイトレスのお姉さんが春近のところにやって来て、今度はバレないように連絡先の書いたメモを膝の上に落として行く。


 ちょっと!

 何なのさっきから!

 こんなのバレたら変な誤解を生むだろ!


 春近が、バレないようにさり気なくメモを開くと、そこには携帯電話番号とメッセージアプリのIDが書かれている。

 顔を上げると先程のウェイトレスと目が合い、意味深にパチッとウインクされた。


「おい、ハル……それ、どうするつもりなんだよ?」


 咲が横から覗き込んでいる。


「ち、ち、違うから! だから、連絡しないって!」

「あやしい……」

「あ、あやしくないし。そもそも、オレみたいな二次元好きなオタク男子は浮気しないんだよ!」

「じゃあ何でカノジョをたくさん作ってんだよ?」

「ううっ、そういえばそうだった……」


 二次元好きなオタク男子は浮気をしないと巷で呼ばれているが、毎シーズン二次元の嫁が出来るので実際のところはどうなのだろうか。


「咲みたいに可愛い彼女がいるのに、他の女なんかに目移りするわけないって!」

「うっ、そ、それを言われると……えへへっ♡ も、もう、そうだよな。しないよな」


 結局ちょろい感じになってしまう咲だった――――




 食事も終わりホテルを出ると、すでに自衛隊も撤収の準備を進め、まだ空の色が戻っていないだけで街は日常を取り戻しつつあった。

 上空には報道ヘリが何機も飛び回っている。


 絶体絶命の危機を乗り越えたことで、決死隊の春近たちに対する報道は勝手に加熱していた。


「あっ、出てきました! 今、自衛隊が借り上げているホテルから、決死隊の少年少女たちが出てきました」


 某テレビ局の女子アナが中継の映像を見てアナウンスしている。

 孤軍奮闘して窓の近くからの避難を呼びかけ続けた女性アナウンサーだ。声を枯らしているが、最後の力を振り絞って救国の英雄の姿を伝えていた。

 その瞳は、国民の命を救った大英雄として、羨望の眼差しで涙をためながら見つめていた。


「ああっ! 少年が膝から崩れ落ちました! 今、ホテルから出て歩いて自衛隊のヘリコプターに向かう途中で、力尽き崩れ落ちたのです! 大丈夫でしょうか? ああっ、私たち市民を助ける為に、あんなにもボロボロになって……。ぐすっ……ありがとう! 貴方は命の恩人です! 視聴者の皆様、一緒に、あの少年少女たちに、心からの感謝を送りましょう!」


 女子アナが号泣しながら春近たちに賛辞を贈る。

 春近が膝から崩れ落ちたのを見て、市民を守るためにあんなにも力を使い果たしたのだと感動していた。




 一方、春近たちは――――


「ハル、大丈夫?」

「ルリ……足腰が立たねえ……」


 ルリと忍に両側から抱えあげられる。


「だ、大丈夫ですか?」

「忍さん……な、何とか……」


 ううっ、言えない――

 ルリや忍さんが激し過ぎて足腰が立たないだなんて……



 女子アナやテレビの視聴者が感動している中、当の春近はエッチな理由で足腰ガクガクなだけだった。

 とにかく、色々あった隕石騒動も春近たちの活躍で危機を回避した。

 これまでと違うのは、人知れず人々を救っていた鬼の少女たちが、一躍救国の英雄として日の目を見た事だった。


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