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第二百五十一話 濃厚こってり

 小惑星アドベルコフトゥスは、太平洋上まで到達しバラバラに砕けながら海面に墜落した。

 墜落直前の爆発で大規模な空振が発生したが、隕石軌道の直線延長上から船舶を避難させていた為に被害は出なかった。


 また、東京上空を超音速で隕石が通過したことによる衝撃波(ソニックブーム)が発生し、窓ガラスが割れたり建物の外壁や看板が剥がれる被害が相次いだが、軽症者が出ただけで奇跡的に死者は出なかったのである。


 春近と彼女たちは、首都壊滅の危機から人々を救ったのだ。


 夜光雲のような紫色に光る空も割れたガラスも、すぐに回復しいつも通りの毎日が訪れることだろう。



「危機は去った。オレたちが……この街を守ったんだ。さあ、帰ろう! オレたちの戦いはこれからだ!」


 春近は、何かイイ感じにまとめて帰ろうとする。


「ハル、何で帰ろうとしてるの? これからがお楽しみだよ~っ!」

「春近! あんた、いつも都合が悪くなると綺麗にまとめて流そうとするわよね! そうは行かないわよ!」


 ルリと渚に両肩をガッチリと掴まれる。

 完全に逃げるのは不可能だ。


 ルリは、目がハートマークになって欲情している。

 いつも欲情していると言えるのかもしれないが、今は更に数ランク上の欲情で期待で目がギラッギラだ。


 渚の方はというと、いつもの威圧感ではなく笑顔でニッコニコだ。

 わざわざ発射前に言質(げんち)を取ったのは、恐怖や不安でいっぱいなのを春近とのイチャイチャなイメージで紛らわそうとしたのである。だが、結果的に超サービスをしてもらえるのだから嬉しくてしょうがない。


「春近くん! 春近くん! 濃厚こってりな超エッチなご褒美って気になります! わくわく」


 忍が凄い前のめりになって春近に迫る。


 両側をルリと渚に固められているところに大きな忍の体が迫り、春近の顔が胸に埋まりそうになってしまう。

 高身長女子に見下ろされるのはプライドが傷付く男性も多いのかもしれないが、元々高身長女子にフェチ心を抱いていて、ビキニアーマーを着たムチッとした女戦士キャラが好きな春近にはご褒美なのかもしれない。

 忍の方も見下ろすつもりは無く、愛しい春近が可愛くて仕方がないだけなのだ。

 背が高いのをコンプレックスにしていたのに、春近がいっぱい褒めてくれるが嬉しくて、もう春近しか見えないほど超好きなのだ。


「は、春近くん、あ、あの……今日はすっごくエッチな気分なんです……。いいーっぱいお仕置きしちゃいますから、覚悟してくださいね!」

「ええええっ…………」


 ううっ――

 忍さんのお仕置きが、結構エグくてキツいんだけど……

 こんな可愛い笑顔と声で言われると、断われないどころか更にキツいのを求めてしまいそうで怖い。


 ヤル気満々の忍に春近がビビッていると、天音がそっと耳打ちしてきた。


「ハル君、四人女王様が実現したねっ♡」

「ああぁああっ……」


 ゾクゾクゾクゾクゾクゾク――――


 背後から天音に抱きつかれ、耳元でやたらと色っぽい声でささやかれる。

 最近は天音の声が益々エロくなってしまい、もう普通に話しているだけで前屈みになりそうだ。


「なっ、なななっ、四人女王様だと! マズい、マズい、マズい、マズい! 一人でも超エッチ攻撃力なのに、エッチ四天王全員で攻められたら……。先日の二人女王様でも常軌を逸した快楽で天国と地獄を行き来したくらいなのに、それが四人同時だなんて……」


 動揺する春近に追撃の彼女が迫る。

 あいと咲だ。


「はるっち、四人じゃないよぉ。うちも、すっごくエッチな気分なのぉ~」

「ハル、十二人だって言ってんだろ。もう、諦めてやるしかねぇんだよ。全員満足するまで帰さねえからな」


 そうなのだ。

 四人女王様どころではなく、十二人同時攻撃なのだ。

 あの隕石を破壊した十二の鬼神の同時攻撃が、エッチに名を変え春近に炸裂しようとしているのだ。


「うっわぁぁぁぁぁぁあああああ! もうダメだぁぁぁぁぁ! エッチなのは好きだけど、全員同時なんて無理だぁぁぁぁぁ! いや、待て、まだ希望はある! アリス!」


 春近がアリスの方を向くと、彼女は自衛隊員から0.01ミリの製品を受け取っているところだった。


「ありがとうです」


 ズコォォォォォォォォ――――


「し、しまった、あまりの驚きに昭和っぽい擬音になってしまった。あの、アリス、何でソレ受け取ってるの?」

「もう我慢できないです。早くエッチするです。ぐずぐずしている暇はないですよ。この、すっとこどっこい!」

「あああっ、アリスが不良になっちゃった」


 自衛隊員は『無事、任務は果たした』といった晴れ晴れとした顔になっている。


「確か賀茂さんからの差し入れって……? あの人、緊急事態だったのに何やってるんだよ!」


 0.01ミリを持ってきた隊員が答える。


「いや、それがですね、『あの子は淫獣クソガキ……じゃない、豪胆な性欲の持ち主なので大量に用意しておくように』とこちらを頼まれまして。支払いは先方持ちという事らしいのですが。従って、我々は最高級0.01ミリを現地調達した次第であります!」


「いやいやいや! 淫獣クソガキって言ってるじゃん! 賀茂さん! 変なデマを広げないでよ!」


 春近が、今頃庁舎でホッと一安心しているであろう賀茂明美に向けて文句を言う。

 聞こえてはいないだろうが、言わずにはいられない。



「気を付け! 救国の英雄に敬礼!」

 ビシィィィィィ!


 隊員が一列に並び春近たちに敬礼する。


 ジャンジャカジャーン!

 何処からともなく音楽隊まで現れ、借り上げているホテルまで連行される春近を見送る。


「いやいやいやいや! おかしいよ! 何だこれ、何だこれ!」


「どうもどうも」

「ありがとー」


 春近の文句は無視して、ルリたちが周囲で見送る人達に軽く挨拶しながら春近を引っ張って行く。




 ホテルに入ると料理長の田中や残って働いていた従業員一同が出迎えてくれた。


「よくぞご無事に戻られました。我々を救って頂き誠にありがとうございます。」


 田中と従業員一同は深々と頭を下げた。


「このような状況で満足してい頂けるか不安ではありますが、ガラスが割れていない部屋の中から一番広い最高級のスイートをご用意致しました。存分にお楽しみくださいませ。また、行為の終わった後には昼食をご用意してお待ちしております」


「ちょっと、何で皆協力的なの? 何だこれ!」


 最高級スイートルームに連れて行かれる春近を見送る田中は思った。


「あれが救国の英雄、ハーレム王か……。古来より英雄色を好むと言うが、さすが巨大隕石を撃墜し多くの国民を守るほどのハーレム王! アッチも夜の生活も最強なのか。何ともはや……羨ましいばかりで」


 若い女性従業員も噂する。


「きゃぁぁーっ! 彼女を十二人も連れてエッチですって!」

「きっと、アッチもすっごいのね! 見てみたいかも?」

「やだぁぁ~エロ過ぎ」


 春近のハーレム王伝説が、勝手に広がって凄いことになっていた。




 最高級スイートルームに連れ込まれ、春近は大きなベッドの上に乗せられた。

 まるで、エッチな鬼神たちに捧げられた生贄みたいだ。

 ただ、本人は大変だと思っているが、クラスメイトの男子が聞いたら、『あんな可愛い子全員とエッチできるなんて羨ましすぎる!』と嫉妬されそうではある。


「えっと、とりあえず落ち着こう」


 美しくも淫靡に輝く鬼神女子たちを前に、春近は少しの期待と大きめの心配で後ずさる。

 しかし、反対側にも回り込まれてしまい、完全にエッチな女子たちに包囲されてしまった。

 十二人の最強ヒロインに囲まれ逃げ場も無く、これから始まる濃厚こってり超エチエチな行為を想像すると、春近は腰の辺りがゾクゾクと震えドキドキが止まらなくなってしまう。



「は、は、ハルぅぅぅ~良かったぁぁぁ~」

「春近ぁぁぁーっ! 生きてる! 生きてるわぁぁぁーっ!」

「ええっ!」


 ルリが渚が彼女たちが、次々に春近に抱きついて泣き出した。

 本当は、怖くて怖くてたまらなかったのを、無理して頑張っていたのだ。

 気を張りつめていたのが、部屋に入った途端に(せき)を切ったように溢れ出して止まらなくなる。

 本当に死んでしまうのではないかと、極限状態から無事に全員帰還したのだから。


「みんな……良かった……全員無事に帰ってこれた」


 春近が全員を抱いて頭を撫でる。


「ハルぅ~! 最後、もうダメだと思った時に、ハルの言葉が力をくれたんだよ」

「たとえ生まれ変わっても、絶対に見つけ出して好きになるってね。春近にしては良い心掛けじゃない」


「ルリ、渚様……」


 ルリと渚の頭を撫でていると、自分もとばかりに咲が入ってきた。


「えへへっ、ハルってば、相変わらずアタシらのコト、好き過ぎだろ!」

「ううっ、咲……もう、実際その通りなので何も言えない……」


 後ろから抱きしめていた忍がギュッと力を入れた。


「春近くん、私、大事にされてるって思えて、心の中がポカポカ温かいです」

「忍さん……」


 次々に彼女たちから温かい言葉を貰える。

 生命の危機を乗り越えて、更に絆は強くなったようだ。


「はあーっ、良かった。一時はどうなる事かと思ったけど、本当に安心したよ。じゃあ一休みしたら昼食に行こうか?」


 そう言って春近が部屋を出ようとするが、渚が腕を引っ張る。


「は? 何言ってんのよ春近! 濃厚こってり超エッチに決まってるでしょ!」

「あ、あれ? 何かイイ感じにハッピーエンドになりそうな感じだったのに?」

「それはそれ、これはこれよ!」


 良い感じに大団円にしようとしていた春近だったが、そうは問屋が卸さないようだ。


「ハル、濃厚こってり超エッチ楽しみだね」

「る、ルリ……だよね! スルーは無理だよね……」


「ハル、アタシ……何かもうガマンできそうにないから……」

「咲ちゃーん、二人っきりじゃないとダメじゃなかったの?」

「うっせえ、ハル! そ、そういう時もあるんだよ!」


 照れ隠しにぶっきらぼうな態度だが、咲も目がハートマークになってモジモジしている。


「うふふふふっ♡ ハル君、いーっぱい調教してあげるからねっ! 大丈夫、優しくするからぁ~」

「あ、天音さん……ちょっと深淵入滅(アビスニルヴァーナ)混沌輪廻(カオスサンサーラ)するだけですよね」

「ううん、全部するよ~っ、もちろん四十八手全部! うふふっ、えへへへへっ……じゅるりっ♡」

「あああっ! これ絶対ダメなやつぅぅぅぅぅ!」


 もう恒例となった、嫌よ嫌よという感じを出しながらも誘い受けしてしまう春近と、そんな態度に更に刺激されて燃えてたり萌えてしまう彼女たちとの、激しくもエチエチな熱い時間が迫っているのだった。


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