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第二百四十話  渚と天音のダブル女王様特別編

 春近はシャワーから出てベッドに座る。

 今日一日を振り返りながら彼女たちのことを考えていた。


 やってみたら意外と楽しくてコスチュームの良さも発見した執事喫茶、渚や天音の演技が素晴らしかった演劇、そして阿鼻叫喚コキュートスは……とにかく凄かったが、皆で一緒に楽しめて良い思い出になるのだろう。


 心地良い疲れを感じながら、パソコンで美少女ゲームを起動する。

 ちょっとエッチなゲームだが問題無い。

 今日は、文化祭で皆疲れていて大人しく寝ているはずなのだ。

 演劇の後に渚と天音に捕まって危険な状態になったが、何故かすんなり許してくれて開放されたのだから。



「うーん、序盤をやった感じでは、この龍王院麗羅(りゅうおういんれいら)というヒロインがお気に入りかな……」


 春近は画面のヒロインを見つめながら独り言を呟く。


 主人公が魔法序列学園アークゲヘナという魔法学園に入学し、ちょっとSっぽいヒロインにあんなコトやこんなコトをされてしまう、ちょっとエッチな美少女恋愛アドベンチャーゲームなのだ。

 因みに龍王院麗羅というキャラは、入学直後の主人公に突っかかってくる女王様っぽいツンデレキャラである。

 本人は否定しているが、ゲームでもこういうキャラを選んでしまうところは、やはり春近はアレなようだった。


 コンコンコン――――


 ゲームがちょうど良い感じに盛り上がったところで、何者かのノックの音が聞こえた。

 春近の体がビクッと反応し、脳裏に危険を知らせるシグナルが点灯する。


 ガチャガチャ!

「春近、早く開けなさいよ!」


「こ、この声は渚様! ま、まさか……」


 さすがに春近も学習して、部屋に鍵をかけるようにしていた。


「えーと、何か御用でしょうか?」

「何か御用じゃないわよ! 早く開けなさいって言ってんのよ!」

「はひっ!」


 怖いので開けた。


 ガチャ――

「ハ~ル君!」


 ドアを開けた瞬間に飛び込んで来たのは渚ではなく天音だった。

 神速で間合いを詰めてくる。

 まさか伝説の秘術である縮地(しゅくち)を会得しているのだろうか?


「ちょっと! 何であんたが先に入ってるのよ!」

「ハル君! ハル君! もお~ハル君ってばぁ~♡ あっ、お風呂上りなの? もう、ハル君のエッチぃ~♡」


 渚の文句も聞いていないのか、天音はいきなり壊れ気味だ。

 ちょっとヤレヤレといった顔になった渚が呟く。


「くっ、やっぱりこの女を連れて来たのは失敗だったかしら……」



「あ、あの、どうして二人で……?」


 春近が恐る恐る聞いてみる。

 何となく予想はついているのだが。


「そんなの決まってるでしょ。あたしたちを仲間外れにしてお仕置きプレイを楽しんでおきながら、ただで済まされると思っていたわけ?」


「渚様……あれは、もう許してくれたのでは……」


「はあ? 誰が許したですって。あたしをこんなに興奮させておいて、ただで済むと思ってるわけじゃないわよね」


 言葉は強めな渚だが、その顔はちょっと赤くにやけていた。


「ハル君、あの場では許しておいて、後で一緒に協力プレイで調教しようって作戦を立てたんだよ」


 天音が恐ろしい計画を暴露する。

 修学旅行の夜に少し体験しただけでも分かる。

 この二人の組み合わせは最悪……いや、最強で最高で至高で究極なのだ。


 その魔眼のような恐ろしくも美しい瞳で見つめられただけで体の自由を奪われ屈服させられ、甘い毒のようなキスにより全身を快感を伴う痺れで感度を一気に高められ、カラダの芯までゾクゾクとした淫靡(いんび)な炎で従属させてしまう生まれついての最強女王である渚。


 そして、天音流絶技四十八手という全身を性感帯に変えてしまうような恐ろしいテクニックと、執拗でネチネチとした快楽攻めを繰り返し相手をどこまでもトコトン追い込んでいき、愛する人を徹底的に堕として汚したい偏執的女王である天音。


 この二人のコラボが実現するとは、まさに奇跡のようなことなのだ。


「あの……お手柔らかに……」

 ガクガクブルブル――――


「もう、ハル君ってばぁ、そんなに震えちゃってぇ♡ 大丈夫だよ、優しくするからぁ♡」


「そ、そうですよね。怖くないですよね。ちょっと深淵入滅(アビスニルヴァーナ)混沌輪廻(カオスサンサーラ)するだけですよね」


 ゾクゾクするような天音の笑顔に怯えている春近だが、反対側からギラギラした渚が手を伸ばしてきた。


「そうよ、春近! あたしが、どんだけあんたのことを大事にしているか分かる? もう食べちゃいたいくらい大好きなんだからね♡」


「渚様……そ、そうでした。渚様はいつでもオレに優しかった……足を舐めさせるのも愛情故の行為ですよね」


 ぎゅぅぅぅぅ~っ!

 ダブル女王様に挟まれた春近が絶体絶命だ。


「ふふふっ…………」

「うふふっ…………」

「あは、あははっ……」


 三人で笑い合う。

 ただ、渚と天音の瞳が情欲の炎により妖しく光っていた。


「ところでハル君、アレって何かな?」

 天音がパソコンの画面を指差した。


「し、しまったぁぁぁーっ! パソコンの画面を消すのを忘れていたぁああああ!」


 画面にはエッチなシーンに突入したばかりの絵が映し出されている。


「何よこれ? 興味あるわね。春近、ちょっとやって見せてよ」

「私も見たいな。ハル君って、こういう子が好きなの?」


 春近はパソコンの前に座らされ、両側に美女が密着した状態で少しエッチな美少女ゲームをプレイする事態になってしまった。

 もう、拒否できない状況だ。


「あ、あの……」

「早くやりなさいよ」

「次どうなるの?」


 春近がマウスをクリックして画面内で会話を進める。


 麗羅『ふふっ、いい様ね! ほら、私の足を指の一本一本まで綺麗に舐めるのよ!』

 主人公『くふっ! こ、こんな屈辱的なことをさせられているのに……この心の高揚感は何なんだぁぁ!』

 麗羅『いい感じに仕上がってきたわね! ほらっ! ご褒美をあげるわよ!』

 ぐりっ、ぐりっ!

 主人公『ぐはあっ、そ、そこは……』

 麗羅『あっはっはっはっ! ほらっ、もっとよ!』

 ぐりぐりぐりっ!



「春近……あんた、やっぱりこういうのが好きだったのね……」

「ハル君……こ、好みは人それぞれだよね」


「ぐっはぁぁぁぁぁーっ! これは新手の羞恥プレイなのか? 公開処刑なのかぁああああ?」



 ゲームは更に盛り上がって、麗羅がデレて主人公とくっついてしまう。


 麗羅『あ、あんたなんかに! く、口惜しい! で、でも……好き……かも』

 主人公『麗羅! 好きだ!』

 麗羅『か、勘違いしないでよねっ! あんたが、あたしのコトを好き過ぎるから、仕方なく付き合ってあげるんだから!』



「これ、結構面白いわね。前に黒百合が言ってた『ツンデレ』って、これだったのね。やっと理解できたわ!」


 予想外に渚がゲームを気に入ってしまった。

 そして、ツンデレを知ってしまう。


「ハル君、凄いねっ。日々こうやって女心を勉強しているんだねっ!」


 天音から褒めているのか貶しているのか分からない発言が飛び出す。

 実際、褒めているのだが。

 何でも肯定してくれるところが天音らしい。



 ゲームが一段落したところで、二人は本題に入る準備をする。

 渚が持ってきた袋から何かを取り出した。


 ガチャガチャ――――


「えっと、渚様……それは?」

「これ? C組が文化祭で使った地獄道具セットよ」

「んあっ!」


 コキュートスの部屋にあった手枷と足枷だ。

 渚が忍に言って借りてきたのだ。

 二人は仲良しなのだ。


「ちょっと、それはマズいでしょ!」

「はーい、ハル君っ! 脱ぎ脱ぎしましょーね~」


 手枷だけは止めようとした春近だが、天音の超絶脱衣テクニックにより一瞬ですっぽんぽんにされてしまう。

 そして、渚が満面の笑みをたたえたまま、春近の両手足を枷でベッドの柱へと固定する。


「ううっ、もはやこれまでかぁああああぁああ!」


 メイド服装備で防御力の重要さを知った春近だが、今は全ての防具を解除されバフも無効化され、完全に無防備状態させられてしまっていた。

 すっぽんぽんで手足を固定され、美女二人に上から顔を覗き込まれている。

 学園トップクラスの美女二人に裸で乗られているなど、同級生の男どもが聞いたら羨ましさで暴れそうなくらいのシチュエーションなのだが、今の春近にはそんな余裕などなかった。

 一人でも対処不能は程に凄い女性なのに、二人同時になればそのパワーは何乗にも跳ね上がるのだ。


「ああっ、あたしの春近! 好きよ♡ 大好き♡ んちゅ、ちゅっ、んっ……♡」


 渚の美しくも鋭い魔眼のような瞳に見つめられながらキスをされる。

 全身がビリビリと快感に痺れるような甘い毒に犯され、まるで細胞の一つ一つまで隷属させられそうな、凄まじい快楽の波に襲われる。


「ハル君♡ ハル君♡ あああっ、ハルくぅ~ん♡ 大好き過ぎておかしくなっちゃいそうだよぉ~♡」


 天音の舌技で耳や首筋を舐められながら、羽毛接触性愛(タッチオブカーマ)が全身を襲う。

 渚との相乗効果によって、それは元来の2000%はアップしていた。


「ぐおぉおおおおおおっ! す、凄い! ななんじゃこりゃぁああああ!」


 春近は凄まじいエチエチ攻撃を受けながらも、全く防御ができない状態になっている。


「じゃあ~ハル君……いっただっきまーす!」


 天音の顔が近付いてくる。

 彼女が大きく色気たっぷりの目を細めて、長い舌で少しぽてっとしたセクシーなくちびるをペロッと舐め回す。


「ふふっ、深淵入滅(アビスニルヴァーナ)!」


 諸事情により自主規制だが、アレがコレにああなっているのだ。

 最初の瞬間だけでも人智を超えたような快楽が押し寄せ、春近は一瞬気が遠くなりそうな感覚を覚えた。


 しかし、天音の攻めはそんなものではない。

 長い舌を高速回転させ、まるで生き物のように絡みついてくる。

 何度も失神しそうになるのを、鬼神王の精神力で持ちこたえる。


「んんんんんっーっ! んんんんんっーっ! ぷはっ! 渚様! 少し手加減を」

「ちゅっ、ちゅぱっ、ちょっと、春近! 休んでる暇はないわよ!」


 天音だけでも大変なのに、キスをしまくっている渚がご奉仕を所望して上に乗ってきた。


「ほらっ、コレ好きなんでしょ。忍に聞いたわよ」

「んんんんんふーっ!」

「ほらっ、ちゃんとやりなさい! みっちりとね!」

「な、な、何で、女子同士でエッチな情報を共有してるんだぁぁぁー!」



 この日、二人の美しき女王は、本当に一晩中無双状態で暴れ回った。

 それはもう天国なのか地獄なのか分からないほどに。

 何度か記憶が飛んでいて覚えていない部分もあるのだが、二人は入れ代わり立ち代わりハッスルして、夜が明ける頃には疲れて眠ってしまったのだ。

 今は幸せそうな寝息をたてて春近の両側に抱きついて眠っている。


「まったく、困った彼女たちだなあ……」


 色々と言いたいことはあるのだが、この幸せそうな寝顔を見たら何も言えなくなってしまう。

 とりあえず体力も気力も限界なので、春近も眠ることに決めた。

 今日が文化祭の振替休日だったのを感謝しながら――――


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