第二百三十一話 最後の勝者は?
三人の肉食系女子に囲まれて絶体絶命に見える春近だが、まだ諦めてはおらず余裕の笑みを浮かべて見せる。
春近には、まだ隠している最終手段、中二っぽい最強主人公春近キャラがあるのだ。
あの呪力が暴走し鬼神王へと変貌を遂げた時、ちょっと調子に乗って攻め攻めなキャラになってしまったアレである。
今、春近は攻め攻めな最強キャラな感じで彼女たちをメロメロにして、その隙に脱出しようと企んでいた。
上手くいくのかは誰にも分からないが。
とりあえず春近は、横でギラギラした目を輝かせている渚に声をかけた。
「おい渚ぁ! 悪い子にはお仕置きするって言っただろ」
「はあ? 何よ偉そうに」
「そんな我儘ばかりだと、渚だけおあずけだぜ!」
「ぐっ、ぐぬぬ……」
意外と効いていた――――
やたらと迫力があって恐怖の女王様に見える渚だが、完全に春近にベタ惚れで完堕ちしている上に意外と素直な性格なのだ。何となく嘘っぽいと分かっていながらも、言うことを聞いてしまいそうになるのだ。
「ああっ♡ 無理やり奪ってしまいたいのに……もし春近に拒絶されたらと思うと……」
渚の動きが一旦止まる。
だが、迷っている渚とは違い、天音は余計にテンションが上がってしまう。
「もうっ♡ もうもうっ♡ 強がってるハル君が可愛すぎっ♡ そんなハル君にはぁ……キッツイお仕置きしちゃうよっ♡」
「ぐわぁああっ! 何だコレ逆効果かよ!」
そんな付け焼刃の戦法では天音には効果がなかった。
少し前までドーテー王である春近が、百戦錬磨の天音に勝てるはずがないのだ。
そもそも鬼神王になった時にも、天音にだけは攻め攻めモードは効いていなかったのに。
ただ、天音にとっては小手先の戦法などよりも、普段の春近が何気なくしている優しさの方が刺さりまくっているのだが……
「ほらほら、ハル君、無防備な浴衣姿だとドンドン奥まで攻め込まれちゃうよ」
「ぐわっ、ちょっと、何を……」
天音の手が浴衣の裾からドンドン奥まで入り込んできて、春近の敏感な部分をフェザータッチで刺激しまくっている。
羽毛接触性愛という天音の超絶技法だ。
指先をまるで羽毛のような感触に仕立てて、性感帯ではない部分までもまるで性感帯のようにしてしまう恐ろしい技である。
それを敏感な部分に集中攻撃しているのだ。
超絶技法のテクにより凄まじい快感を与えながらも、繊細な調整で絶対に絶頂させない悪魔のような恐ろしさ。
フェザータッチのもどかしさなのに、春近は腰の芯がゾクゾクするような快感に打ち震えていた。
「ふふふっ♡ うふふふふっ♡ ほらほらぁ♡ ハル君……他の女子に、ハル君の恥ずかしいとこを見られちゃってるよぉ」
「ぐあっ、ダメ! 見るなぁああ!」
天音に攻められっぱなしの春近の顔を、B組女子が興味津々で覗き込んでいる。
「す、凄い……」
「ああっ、何かピクピクしてる……」
何だか天音が酷いことをしているように見えるが、これも愛故の暴走なので大目に見て欲しいのだ。
「何じゃこの羞恥プレイはぁぁぁぁぁーっ!!」
さすがにMっぽい春近も無関係の女子に見られるのは恥ずかしいようだ。
「ちょっと、春近! やっぱり演技だったのね!」
攻め攻めキャラ演技がバレ、渚のエッチ戦闘力が急上昇してしまう。
春近の作戦は、完全に裏目に出てしまったようだ。
「もうっ! 我慢できない! あたしにもサービスしてもらうわよ♡ はむっ♡ ちゅっ……んっ、んんっ♡」
我慢できなくなった渚が情熱的なキスをする。
渚の甘い毒のようなキスで、春近の体が全身性感帯のように敏感にされてしまう。
それにより、天音の超絶テクが相乗効果で上昇する。
実は、渚と天音の要注意エッチ女子の組み合わせが最悪、いや最高なのだ。
天性の素質を持つ渚と超絶技法の天音の力が合わさることにより、お互いの力を急上昇させ相手にとんでもない快感を与えてしまうのだった。
しかも、天音は前回のように皆の前で恥をかかせてしまうのは可哀想だと思って、春近が絶頂しそうになると手加減したりを繰り返し、絶対に絶頂しないように仕向けていた。
それが逆に延々と続くエッチ無間地獄のような、終わらない快楽を与え続けてしまうのだ。。
「はるっち~♡ スっゴぉくイイ表情~♡ れろっ、ちゅぱっ♡」
後ろに抱きついているあいが、春近の耳や首筋に舌を走らせる。
もう、食べちゃいたいくらいに美味しそうな感じに舐めまくった。
「春近……近くでそんな声を出されたら……」
静かにしていた黒百合まで我慢できなくなって参戦してしまう。
春近に甘えたい年頃なのだ。
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!」
春近、まさか四人の女子に襲われ絶体絶命である。
――――――――
春近たちが凄いコトをしていた頃、C組のグループは――――
「んあ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ……」
「ふふっ、アリスちゃん、お爺ちゃんみたい」
アリスがロビーのマッサージチェアに座ってモミモミされていた。
小さな体がマッサージ器の振動で上下している。
それを微笑ましい表情で見つめている忍。
すごぶる平和で健全だった――――
「今頃、春近君はどうなってるのかな?」
横でくつろいでいる遥が春近を心配する。
「あ、あ、あ、もしかしたら、他の女子たちに捕まって襲われているのかも……です」
アリスが答える。
「何だか、心配ですね……」
「ん…………」
忍と一二三が心配する。
普段は無表情の一二三の顔が、少しだけ心配そうな表情に変わった。
ただ、忍は春近を心配しながらも、皆に攻められる春近を想像すると、カラダの芯がムズムズと疼くのを感じた。
再び、B組グループ女子の部屋では――――
「んっ♡ 春近ぁ♡ 好きよ♡ 大好き♡」
「ハル君♡ ハル君♡ ハルくぅ~ん♡ 大好き過ぎておかしくなっちゃうよ~」
「はるっち~♡ ちゅぱっ♡ 大スキぃ~♡」
「ぐへへ~♡ もうたまらんのじゃぁ~♡」
何か凄いコトになっていた。
「はわわっ、す、凄っ!」
「えっ、ええっ、もう、私まで変な気分になってきちゃう……」
B組女子は手で顔を隠しながら、指の隙間からしっかりとガン見していた。
そこに状況を一変する者たちが突入してきた。
ルリたちA組女子で編成された春近救出部隊である。
ドォォォォォォーン!
「ハル! 助けに来たよ!」
突撃したルリが叫ぶ。
中央にルリ、右に咲、左に和沙の布陣だ。
「来たわね! 春近は渡さないわよ!」
渚が立ち上がる。
「力ずくで奪っちゃうもんねーっ!」
「ぐぬっ……そうはさせないんだから!」
咲が、春近をペロペロしているあいを止めようとする。
「おい、あい! ハルをペロペロすんなっ! 返してもらうからな!」
「んっ、れろっ♡ れろ♡ はるっち~美味しい~♡」
「って、聞いちゃいねえ!」
一方、天音をターゲットにした和沙だが、余りのエチエチさに固まっていた。
「お、おい、天音……な、な、なに破廉恥なことをしてるんだぁ……」
「んんっ♡ ちゅぱっ♡ はむっ♡」
春近の浴衣の裾に手を突っ込んでいる天音に声をかけた和沙だが、天音はチラッと和沙を見て不敵な笑みを浮かべてから、わざと見せつけるように春近に濃厚なキスをする。
「ぐぬうっ、なな、何だあのこれ見よがしな態度は!」
三対三で睨み合い一触即発の状態になってしまう。
皆、修学旅行で春近との熱い夜の思い出作りに必死なのだ。
もはや、京の都で鬼神たちの戦国時代幕開けである。
因みに黒百合は、ルリが飛び込んで来た瞬間に離れて、巻き込まれないように素知らぬ顔をしている。
「いいじゃない! やってやるわよ!」
「おもしろそーぉ! うちもやるぅ」
「ルリちゃんも一緒にハル君にお仕置きしようよぉ~」
「ハルは返してもらうよ! もうボッコボコだから!」
「よしっ、やってやんよ!」
「あ、天音、なんて羨まし……じゃない、破廉恥な!」
両者が睨み合い、まさに戦いの火蓋か切られるその時――――
「ストォォォォォップです!」
アリスが部屋に入ってきて両者を止めた。
「夜遅くに何をしているです! 旅館にも迷惑が掛かってしまうですよ! 修学旅行で問題起こしたら、中止になってしまうかもしれないのに! 反省するです!」
「ぐっ、アリスちゃんの言う通りで何も言えない……」
「そ、そんなの言われなくても分かってるわよ。でも、春近が……」
ルリも渚も、正論をぶつけられてぐうの音も出なくなる。
「そんなに戦いたいのなら、これで決着を着けるです!」
アリスはボードゲームを掲げる。
大人数で遊べる楽しそうなゲームだ。
「良いわね! このゲームでどっちが勝つか勝負よ! ルリっ!」
「受けて立つよ! 渚ちゃん!」
と、いうわけで……
ゲームが始まると、皆で盛り上がって仲良く遊んでいた。
「ふふっ、株で大儲けして1億ゴールドね」
「ううっ、何で私だけ大損なの……」
ルリが大赤字になってしまう。
「設立した会社が世界的企業になったです。3兆ゴールドゲットです。」
結局、アリスが一人勝ちして、他の全員は破産した。
「ちょっと、納得いかない! もう一回やるわよ!」
序盤は一位だった渚も破産して納得がいかないようだ。
因みに春近は――
杏子と栞子がこっそり救出して、A組女子部屋に運び込んでいた。
「た、助かったよ」
「いえいえ、御主人様のピンチとあらば、この不肖、杏子一兵卒……から22階級特進し杏子上級大将が馳せ参じますよ!」
杏子自身も特進しすぎて何階級上がったのか把握しきれていない。一から数えたようだ。
「22階級……えっとよく分からないや。とにかくありがとう」
一方、栞子の方は嫉妬と子づくり的な何かで懇願する。
「旦那様……また他の子とばかり……ど、同衾してズルいですわ。わたくしとも子づくりを」
「栞子さん、まだ学生だから、子づくりは……」
取り敢えず自分の部屋に帰る春近なのだが、先程の凄まじい焦らし攻めにより情欲の炎が消えず寝付けずにいた。
気持ちを落ち着かせる為に散歩に出るのだが、これまた同じようにムラムラが止まらない忍と偶然会い、この後めっちゃエッチすることになる。
そして、大人しくて可愛い声をしながら意外とエグくて激しい攻めをする忍に、春近はフラフラになるまで搾り取られてしまうのだ。
意外なことに最後の勝ったのは忍だった。
当然、その内容は自主規制である。




