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第二十三話 何でもするって言ったよね?

「ええーっ! まだ増えるの?」

「浮気者っ!」


 ルリと咲の口から不満が飛び出した。

 放課後の教室である。

 今朝はトラブルになり話が進まなかった為、改めて放課後に説明しているのだ。


 反対する二人を見た春近が『そりゃそうだろ』と思った。

 他の女子を攻略しよなどという計画に無理があり過ぎる。まるで美少女ゲームのハーレムルートのようである。


「皆さん、これが最良の方法なんですよ」


 栞子が説明を続ける。


「この作戦が順調に進み、鬼の転生者が人と共存でき安全な存在であると証明できれば、先日のような強硬策が採られることは無くなると思うのです。その点では皆さんも共感してもらえるはずです」


「それは…そうだけど……」


 ルリは納得いかない顔をしている。


「それに、まだ他の鬼の転生者が旦那様を好きになるとは限らないですわ」


「いや、絶対好きになっちゃうもん! あと、旦那様って言うのやめて!」


「それは嫌ですわ。旦那様は旦那様です」


「もぉおおおおおおおおーっ!」


 ルリは、平和的な解決には賛成なようだが、他の転生者が春近を好きになると思っているようだ。

 あと、栞子と反りが合わない。


 春近は考えていた。ルリたちと平穏な学園生活が送れる方法を。


(うーん……このままではマズいよな……。また陰陽庁が強硬策をとるようなことになったら……。ここはオレが何とかしないと……。良く分からんけど、鬼の力を持つ女子と仲良くなれば良いんだよな)


 春近の顔に決意の色が浮かんだ。


「みんな、色々と迷惑や心配をかけちゃうけど、この計画を応援してくれないか。オレにできることなら何でもするから協力してほしい!」


「「「えっ!」」」

ピキィィィィィィィィーン!!


 一瞬、皆の目が光った。


 ルリが熱のこもった目を春近に向ける。


(何でも! 今何でもって言ったよね! 何でもというコトは……あんなコトも、こんなコトも、朝まで……あれで……こうして……)


「ふふっ……ふふふっ……」


 ニマニマした顔のルリが笑う。妄想の中で凄いことになっていそうだ。



 咲も熱のこもった目を春近に向ける。


(何でもだとっ! だったら……二人っきりで……デートして……は、初めてのキスを……って、アタシは何を考えてんだぁああああ!)


「ふにゃ……」


 咲が顔を真っ赤にしている。妄想の仲では凄いことになっていそうだ。



 当然、杏子も熱のこもった目を春近に向ける。


(ん? 今何でもするってキタァァァァァー! これは……何でもということは……あんなプレイも……)


「ふひっ……ふひひっ……」


 杏子が危険な顔をしている。妄想の中では当然変態プレイだ。



 栞子は熱のこもった目を春近に向ける。


「何でもですって……もちろん『まぐわい』ですわ! ふふふ……子種をいただきます旦那様!」


 栞子は心の声が漏れていた。



「あれっ? オレ……やらかした?」


 危険な発言をしてしまったと感じた春近だが、もう後悔しても遅かった。今さら取り消せそうにはない。

 彼女たちは、何でもしてもらう気満々でニヤニヤと怪しげな笑みを浮かべているのだから。


(マズい……何か非常にマズい約束をしてしまった気がする……)


「お、お手柔らかにお願いします……」


 もう取り消しはさせてもらいないようなので、春近は半分諦めつつもう半分は忘れてくれることに期待した。



 ◆ ◇ ◆



 下校時間となり、寮までの帰り道に春近は、自然と咲と並ぶようになった。


「あの……」

「あの……」


 二人が同時に話始めてしまい、気まずい雰囲気だ。

 今朝の告白のことを思い出しているのだろう。


「あ、えっと……返事はまだしなくていいから」


 恥ずかしそうに下を向いた咲が、そう言った。

 返事とは、当然告白の件だろう。


「で、でも……」

「いいから……でも、アタシがハルを好きってコトだけ覚えておいて!」

「うん」

「はい、この話はお終い!」

「お、おう」


 ペシペシペシ!


 照れ隠しなのか、咲が春近の背中をペシペシと叩いた。


「ほら、ハル、ふ、普通にしろよな!」

「ええっ、普通?」

「くっ、何かアタシ、弱みを握られたような」

「そんなことないよ」

「お、おい、照れんだろ! 見つめるなよ!」


 ペシペシペシ!


 夕日に照らされた帰り道で、二人の顔が赤く染まっていた。



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