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陰陽学園の鬼神嫁 ~十二天将の力を全て手に入れたら、愛が激しい美少女たちと永遠になる物語~  作者: みなもと十華@姉喰い勇者2発売中
第一章 鬼の少女達

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第二十二話 正妻戦争

 大岡裁きという美談がある。

 江戸奉行の大岡忠相おおおかただすけが、自分が母親だと名乗り出た二人の女性に、両側から子供の腕を引かせる物語である。

 しかし、現在起きている騒動は、美談ではなく不毛な争いであった。


 春近の右手にルリが抱きつき、左手に栞子が抱きつき、何故か背中に鈴鹿杏子が張り付いていた。


 このお互いが一歩も譲らない争いに、巻き込まれた春近が悲鳴を上げる。


「痛い! 痛いって! 二人とも落ち着いて!」

「ハルに触るな! 泥棒猫!」

「いいえ! わたくしが正妻です!」


 興奮した二人に春近の声が届いていない。いや、届いてはいるが、体の底から湧き上がる何かが邪魔して止まらないのだろう。


 ただ、便乗して密着している杏子は意味不明だが。


「ちょっと! 何で鈴鹿さんまでくっついてるの!?」

「むふっぅ……はぁはぁ……これ……イイ! 最高です!」


 杏子は春近の背中でハァハァしている。ちょっと、いやかなりキモい。

 春近の中では、初対面の時の真面目な印象が、最近は壊れつつある。



「えっ…………ハル」


 咲は呆然自失とした表情で立ち尽くしていた。

 

(アタシがグズグズしてたから、ハルが誰かに取られちゃう……。アタシに勇気が無かったから……。アタシが鬼の転生者だと知っても受け入れてくれた人なのに……)


『咲ちゃん! 大事なものはね、失ってからでは一生後悔するんだよ』


 咲の頭の中では、以前ルリが発した言葉がぐるぐると回っている。


(もう、やるしかねえ……このまま何もせず負けるのなんか絶対嫌だ!)


 咲の中で決意が固まった。


「ハル! アタシもハルが好き! 大好き!」


 突然、大声で愛の告白をした咲は、ハルの胸に飛び込んだ。


「えっ、咲?」

「アタシもハルが好きだって言ってんだろ! ちくしょー!」

「ええええっ!」


 咲の突然の告白に驚いたハルだが、四人の女子に揉みくちゃにされて大変なことになっている。


「ぐわぁぁぁ……くるしいぃぃぃ」



 ◆ ◇ ◆



 学園内で大騒ぎをした春近たちは、色恋ネタの恰好の的にされ、あっという間に噂が広がってしまった。


「恥ずかしい……」


 春近はつぶやく。


 騒ぎは収まったのだが、ルリも栞子も掴んだ腕を離さない。

 咲は春近の胸に顔を埋めたままだ。

 杏子は離れたものの、妄想して危ない発言をしている。まあ、最近はいつものことだ。


 こんな状況だが、春近は話を進めようとする。


「あの……それで、計画はどうなったんですか? えっと、源さん?」


「源さんなんて言い方やめてください! わたくしたちは夫婦になるのですから、これからは栞子しおりことお呼びください。旦那様」


 ギュゥゥゥゥーッ!


 栞子の言葉に反応して、ルリと咲が力を強める。


「だから痛いって……」

「咲ちゃんと私で三人で付き合うのは良いよ。でも他の女はダメ! 特にその女はダメ!」


 ルリが、とんでもないことを言い出す。咲と二股なら許されるらしい。


 栞子は何股でもOKらしいのだが。


「わたくしは、側室が何人いようと構いませんわ。旦那様」

「誰が側室よっ!」


 ルリがツッコむ。


 これでは話は一向に進まない。



 結局、授業が始まってもルリと栞子は春近を離さなかった。

 ルリだけならいざ知らず、優等生の栞子までおかしくなってしまい、もう教師も諦めムードだ。



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