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第二百十四話 休息~夏の日の午後~

 朝食を軽く済ませてから、エアコンの効いたリビングでくつろいでいる。

 やはり、真夏の日中は涼しい部屋で過ごすのが最高の贅沢だと思う者が数名――――

 そう、春近たちインドア組である。


 今も杏子、一二三、黒百合とスマホゲームの期間限定イベントとやらを遊んでいる。



「ハル~ 今日も海行こうよ!」


 ラフな格好をしたルリが、春近の後ろから抱きついてきた。

 Tシャツが少し小さいのかルリの胸が大きいのか、胸の辺りがパツパツになって谷間が見えまくりセクシーダイナマイト過ぎる。


 春近が振り向くが、その凄いセクシーさに目がくらみ、すぐに視線を逸らしてしまう。夜の生殺し状態と相まって刺激が強すぎるのだ。


「あっ、オレは……今日はここで休んでるよ。少し寝たいし」

「ええーっ、行かないのぉ? ちゃんと夜は寝ないとダメだよ、ハル」

「うーん、寝かせてくれなかったのはルリたちだぞ」

「うふふっ♡ 私はハルと一緒でぐっすりだったのに」


 あの状態で熟睡できるルリが凄い。


「もうっ、いいもん! 咲ちゃんたちと遊んでくるから」

「うんうん」


 ルリは咲とお出かけの準備を始めた。



「ハ~ル君っ!」

 ヒックゥゥゥーン!


 突然、天音が出現し春近がビクッと飛び跳ねた。


「あ、天音さん、突然出てくるからビックリするじゃないですか? 神出鬼没過ぎですよ」


 春近の言う通り、天音の神出鬼没さは、もはやスキルのようである。

 呪力や神通力を使ったような形跡が無いのに、いつの間にか接近しているのだ。

 スラっとしたモデル体型でありながら、実は肉弾的な接近戦にも強いのかもしれない。


「ハル君♡ そんなにビックリしないでよ。もう、あんなヒドイことはしないから安心して。優しくするから~」


「そ、そうですよね。あの時の天音さんは、ちょっと興奮し過ぎちゃっただけですよね。こ、怖くないですよね。もう、ビックリしたなあ」


「もうっ、ダメだぞっ、ハル君♡ 私は~いつでもハル君に優しくしてあげるからね。うふふっ♡」


「ははは……」



 そんな二人を少しビミョウな感じに見つめる二人が――――


「春近君……何か天音に手玉に取られているような気がするのよね……」

「ハルちゃん……それ騙されているぞ。その女は天使の笑顔で恐ろしい事をしてくるんだぞ」


 渚と和沙が、お人好し過ぎる春近を心配な目で見つめていた。


 何やら、天音があの手この手で春近を自分に依存させようとしているようにも見える。

 ただ、傍から見ると腹黒い女に見えるかもしれない天音だが、春近を想う心に嘘偽りは無く本心であり、春近が好き過ぎて心の中が様々な感情がドロドロと渦巻いて制御不能なだけなのだ。

 大目に見て欲しいのだ。


 そう、今もこんな感じに――


 はあぁぁぁ~っ♡

 ハル君……今日も可愛いなぁ♡

 はあっ♡ はあっ♡ はあっ♡ じゅるり♡

 今日は、どうしてくれようか……

 ああっ……ハル君の事を考えると、カラダの芯が疼いてたまんなぁああぁい♡

 もう、ハル君をメチャメチャにしちゃいたいよぉ♡

 ふふっ、ふふふっ……うふふふふっ♡


 天音が朝っぱらから危険な妄想をしていると、渚が首根っこを捕まえて引きずって行ってしまう。


 グイッ!


「ちょっと、渚ちゃん! 何するの? 今日はハル君と……」

「あんたはあたしと海に行くのよ。春近と一緒にさせておくと悪いことしそうだし」

「それは渚ちゃんも同じでしょ!」

「あたしは良いのよ。愛ある調教なんだから」

「それ、同じだよっ!」


 お互い自分は良いと思っているようだ。

 二人は春近に対してイケナイコトばかりしてしまう妄想を抱いていて、少しだけ方向が違うだけの似た者同士なのかもしれなかった。

 一人だけでも愛が重過ぎて厄介な女性なのに、何人も強烈な女性を彼女にできる春近は、実は凄い大物なのかもしれない。




 ルリたちが出掛けようとしているところに、春近が駆けよって来た。


「皆、気を付けてね。危険だからあまり深い場所まで行っちゃダメだよ」

「うん、大丈夫だよハル」


 ルリが答える。


「変な男に声掛けられても付いて行ったらダメだよ」

「もう、ハル君ってば、私たちがナンパされるのを気にしてるんだぁ」


 天音も答える。


「でも、ナンパ男が多いし。ああっ、もし、皆が危険な男の毒牙にかかったりしたらと思うと心配で心配で……」

「そんなに心配なら、ハルも来ればいいだろ!」


 咲にツッコまれた。


「まあ、そうなんだけど……」

「へへっ、ハルって意外と独占欲強いんだよな。前にアタシが藤原と話していただけで、ハルってばチョーあせってたし」

「ぐっ、しまった……恥ずかしい記憶が……」


 去年、咲が藤原と話しているのを見て誤解した春近が、咲への想いが止められず暴走してしまい、公衆の面前で『咲は誰にも渡さない!』と情熱的な告白をしてしまったのだ。

 自分はハーレム王だとしても、彼女が他の男と仲良くするのは嫌なものなのだ。


「ハル、束縛が激しい男は嫌われるぞ」

「ぐっはぁぁぁぁぁーっ!」

「うそうそ、ハルのことを嫌いになるわけないだろ」

「咲ぃぃぃ~! 冗談がキツいよ」

「あははっ、昨日はハルに泣かされたから、ちょっと仕返しってことで。それにしても、ハルってばアタシら好き過ぎだろ」

「ううっ、何も言えねえ……」


 そんなこんなで、彼女たちは海へと出かけて行った。

 春近が心配するまでもなく、皆春近が大好きな上に最強の力を持っているので、何も心配は要らないだろう。




「さーて―― ゲームも終わったし、少し寝ようかな?」


 春近が、寝室に行こうと起ち上る。

 二泊三日旅行で今夜も添い寝が待っているので、今の内に寝ておこうとしていた。


 しかし、その春近を狙う視線が――――

 アリスが、少し離れた場所から、春近の動きを観察し狙っていた。


「激しい女たちが海に行ってしまい、現状でここに残っているのは、杏子、一二三、黒百合、栞子のみ。わたしを入れて五人です。これはチャンスなのです! 今の内に……ハルチカと、ニャンニャン……しても良いかニャ……」


 このアリス……見た目は小っちゃいけど、実のところ中身は結構エッロい女だった。

 普段からエッチなことばかり考えているのだが、強靭な精神力で抑え込み表には見せないようにしているのだ。



 スッ!


 春近が寝室に入ろうとした時、さりげなく脇を擦り抜け一緒に入ってしまう。

 そのまま自然な感じにベッドに腰かけて、それとなく一緒に寝たいことを告げる。


「あれ、どうしたのアリス?」

「あの……その、ちょっと一緒に寝たい気分なのです……」

「そうなんだ。アリスもおねむなんだ。じゃあ、一緒に寝ようか?」

「は、はいです!」


 ――――


 しかし、実際はアリスの思惑とは全然違い……


「これは……どういうことです……?」


 睡眠不足で疲れていた春近は、アリスを抱きしめて一緒に布団に入ると、そのまま抱き枕のようにアリスを抱いたまま熟睡してしまった。

 ガッチリと春近の腕に包まれて動けないまま、アリスは不本意な顔をしている。


「おい、ハルチカ。起きるです。わ、わたしがこんなにドキドキしているのに、何もしないで熟睡とか、どんな了見ですか」


 アリスが春近の顔を見ると、気持ちよさそうな顔をしてスヤスヤと寝息を立てている。

 そんな春近の顔をみていると、起こすのも可哀想な気になってしまい、諦めて一緒に寝ることにした。


「ハルチカ……不思議な男です……。十二の力の根源を取り込んで最強になったはずなのに、全く強そうには見えない……」



 誰かが言ったが本当に強い人は、威張ったり強さをひけらかしたりしないそうだ。

 一見大物には全く見えない春近なのだが、アリスは案外大物なのかもしれないと思い始めていた。


「ハルチカ…………」


 ――――――――




 皆の姿が見えないのを不思議に思った栞子が、春近の部屋のドアを開けた。


「旦那様――――」


 栞子がドアを開けると、そこには気持ちよさそうに眠る春近が。

 アリスを抱えて、更に傍らには一二三と黒百合も添い寝していた。

 アリスも一二三も黒百合も、とても安心したような幸せそうな顔をしている。


「源さん」


 その光景を見つめている栞子に、後ろから杏子が声をかけてきた。


「皆気持ちよさそうに寝ていますから、そっとしておいてあげましょうよ」

「――――そうですわね」


 実は栞子も、春近とイチャイチャしようかと思って忍び込んだのだが、彼女らの幸せそうな顔を見ていると無粋なことをしてしまうのもどうかと思う。

 少しだけクンカクンカやペロペロしようかとも思ったが、それも杏子が見ているので止めておいた。


「わたくしたちも寝ましょうか?」

「いいですね」



 夏の日の午後――――

 つかの間の休息をとった。


 彼女たちも、一切の不安や苦しみも無く幸せそうに。

 もし、世界が幸せと安らぎに満ちていたのなら、どんなに良かったか。

 だが、世の中は不安や苦しみや悲しみが際限なく押し寄せてくる。

 でもしそんな苦しみや悲しみから解放して安らぎを与えてくれる人や場所があったのなら。

 誰もが願うだろう、その穏やかで安らかな愛の楽園を――――


 今、春近も彼女たちも、そんな夢物語を思い描いていた。


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