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陰陽学園の鬼神嫁 ~十二天将の力を全て手に入れたら、愛が激しい美少女たちと永遠になる物語~  作者: みなもと十華@姉喰い勇者2発売中
第六章 幸せの形

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第百七十三話 引き返せない運命

 それは深く暗いトンネルのような物だった。

 体が穴の中に涼みこんで行くと、何かが体の中で混ざり合うような感覚となる。

 やがてそれが細胞の一つ一つまで行き渡ると、根源的な何かが変化して別の存在になった気がした――――


『なんだ……ここは……?』


 暗くて何も見えないが、穴の底まで到達した感覚は有る。

 まるで暗い海の底に沈んだような……

 誰も居ない深海のような……


『誰か……居ないのか……ルリ! 咲! 誰か!』


 声は虚空に消えて行くだけだった――――


『誰か居ないのか! そんな……近くに感じる気がするのに……オレは、ずっと一緒だと誓ったんだ!』


『本当に良いのか?』


 何処からか声が聞こえた気がした。

 それは自分の中から聞こえたような、それともただの幻聴のような気もする。

 もしかしたら、自分の細胞の中に雑じった力の根源なのかもしれなかった。


『このような事例は初めてだ。もう五つも混じっている。複数の鬼の根源が混ざり合うなどありえないことだ。もう、手遅れかもしれない』


 再び声がした。


『は? 何だよ! 誰なんだよ? 鬼の根源って何だよ!』


『本来は鬼神や半神の如き鬼王や大天狗と(ちぎ)るなど有り得ぬこと。体液の交換と魂の契約という完全な契りにより、その身と引き換えに恐ろしき力と運命を背負わされるであろう。しかもそれを複数と契るなど、未だかつて誰も想像さえしなかったことをしておるとは。このままでは引き返せなくなるやもしれぬな。これ以上混ざり合えば……破滅の運命か……それとも人ならざる者へと進化するのか……』


『えっ、もしかして、オレがチートスキルの無敵主人公に?』


『余程……豪胆(ごうたん)なのか、それとも、とんでもない愚か者なのか……その時が楽しみだ……』


 ――――――――

 ――――――

 ――――




 チュンチュンチュン――――

 昨日の雨が嘘のように天気は回復し、朝の陽射しが室内に射し込んでいる。


「んん~っ! 気持ちの良い朝だぜ。あれ……? 何か夢を見ていたような……? 気のせいかな?」


 春近はベッドから出て洗面所へと入る。

 おもむろに鏡に映った自分を眺めた。

 いつもと変わらない自分のようでいて、何気に少しだけ体が引き締まっているように見える。


「あれ? 何か前よりも少し筋肉付いた? もしかして……ルリたちの激しいエッチで鍛えられ筋トレになっているとか……? ありえそうで怖い……」


 鏡の前でポーズとってみる。

 弱そうだった昔と違って、少しだけカッコよくなった気がしてきてニンマリした。


「もしかして、ちょっとイケてきたのか? 遂にオレの時代キタァァァァァー! いや、まてまて……落ち着けオレ! 急に調子に乗ると『イキりハーレム太郎』とかあだ名を付けられそうだし自重しなければ……」


 自分で言っておきながら、桃太郎じゃないから太郎は無いだろと思ってしまう。

 朝っぱらから中二っぽい妄想をしつつ、朝食や身支度を終えて寮を出た。




「春近!」


 寮の玄関を出た所で、突然渚が抱きついてきた。


「あれ? 渚様、おはようございます」

「もうっ、昨日は春近とラブラブできなくて寂しかったんだぞっ! ぷんぷんっ!」

「ん? んん????」


 なっ、渚様が壊れた!?

 いや、これは何かのトラップなのか?

 まてまて、渚様の姿をした別の何かかもしれない!

 最近は渚様が天使になったという噂も聞くし……もしかして天使にジョブチェンジしたのか?


「ちょっと、何で黙ってるのよ!」

「うわっ、本物だ!」

「本物に決まってるでしょ! せっかく春近が好きそうな美少女何とかというのをやってあげたのに」

「それ、誰の入れ知恵ですか?」

「黒百合が言ってたのよ。春近はこういうのが好きだって」


 黒百合(ブラックリリー)の仕業だったか。

 渚様……多分それ、からかわれてますよ……

 でも、可愛いからこのままでも良いかな?


「何ニヤニヤしてんのよ!」


 渚が春近の腕を取ってギュッと強く抱きつきながら、顔を近づけて鋭い目で睨んでくる。


「いえ、けっこう可愛かったと思って」

「もうっ、春近が好きそうなの色々やってあげてるのだから、もっとあたしに優しくしなさいよね!」


 そういえば……渚様って凄く怖いイメージだけど、この前もドジっ子メイドをやってくれたり、実は彼氏に尽くす健気な性格なのでは?

 そう考えると、渚様が凄く可愛い女の子に見えてきたそ。

 まあ、元から可愛いけど。


「そういえば、昨日はお楽しみだったみたいね! 随分と見せつけてくれるじゃない!」

「ええっと……おかげさまで……」

「あたしは、居ても立っても居られない悶々とした気持ちを抱えたまま、ずっと一人ベッドの中で春近を想い続けていたのに」


 密着状態になったまま、ほぼゼロ距離から耳に囁いてくる渚ボイスがたまらない。脳に直接甘い毒を流し込まれているような感覚になる。

 耳をくすぐる吐息と、良く通る美しい声と、体に流し込まれる甘い毒との多重攻撃により、春近の体も精神もドンドン追い込まれて行く。


「渚様、朝から刺激が強すぎます。ちょっと離れて」

「は? あたしが昨日どんだけ寂しい想いをしていたか知らないの? 本当なら二十四時間ずっと繋がっていたいのに、自由にさせてあげてるのだから感謝しなさいよね!」

「ううっ、愛が重い……激しすぎます……」

「ふふふっ、激しいのが好きなくせに……ちゅぱっ」

「うわっ、耳の穴に舌を入れないで!」

「あははっ、春近って反応が面白いわね。最高よ」


 校舎に入るまでずっと渚の重い愛の囁き攻撃を受け続けた。




 教室に向かう廊下で杏子の後ろ姿を見掛ける。


「あっ、杏子だ」


 昨日の今日ということもあり、春近はちょっと恥ずかしいようなくすぐったいような不思議な気持ちになった。


「杏子、おはよう」

「あっ、春近君……おはっ……ようござい……ます」


 杏子は顔を赤く染め、恥ずかしそうに俯いてしまう。

 まさに初めての体験の後の初々しい女子の御手本のようだ。


「これだよ! これ! この初々しさ! 愛情表現が激しい子が多かったから忘れていたけど、この恥じらいや初々しさが大事なんだよ」


 杏子の反応に春近が感動している。


「杏子ちゃん、なかなかやるわね」

「うわっ!」


 天音が後ろから顔を出した。


「あの計算されていない自然な恥じらい。私も見習わないと」

「天音さん、心の声がダダ漏れですよ。あと、もう手遅れです」


 天音は、『ハル君成分補充!』っと言って抱きついた後、渚にウザ絡みしならが自分のクラスに戻って行った。


「渚ちゅわ~ん」

「暑苦しい。離れなさいよ」



 春近が教室に入ると、真っ先に和沙が駆けよって抗議し出す。

 もはや恒例行事のように。


「ハルちゃん、そっ、そろそろ、私と初体験しても良い頃なんじゃないのか? 私はもうそろそろ限界みたいなんだ。他の子とのラブラブなのを散々見せつけられて、一人寂しく自室のベッドで自分を〇める寂しさと自己嫌悪で押しつぶされそうなんだぞ」


「和沙ちゃん、あの……ちょっとここでは」


「頼む! もうキミの鬼畜攻めに耐えるのも限界なんだ! キミの命令になら何でも従おう。例えば、ここで脱げと言うのなら全裸になって衆人環視の中で羞恥と屈辱にも耐えて見せよう! だから……」


「わぁーっ! わぁーっ! 言い方! そんな酷いことしないよ!」


 和沙が大声で変態っぽい事を喋るので、皆の注目を集めてしまう。


「そろそろ可哀想だからしてあげたら?」

「そうだよ。さすがに鬼畜すぎるだろ……」


 クラスメイトから和沙に同情する声や、春近を咎める声が上がった。


「くっ、どんどん外堀を埋められて行くような気がする」



 和沙ちゃん――

 実際の所、和沙ちゃんには色々とトラブルというか迷惑もかけられているけど、何だか憎めないしけっこう好きなんだよな。

 真っ直ぐな性格で多少融通が利かないけど、優しくて親切な人なんだよな。

 ルリが捕まった時も、蘆屋満彦からルリを守ってくれたそうだし。

 ただ、こんなに連続してエッチしてしまって良いのだろうか……


 春近は、一人の人を愛し続けるという理想とハーレムの現実の間で戸惑っていた。

 そして、おかしな夢のことはすっかり忘れていた。


 果たして、春近は愛の重い彼女たち全員と円満に恋人同士になれるのか。

 そして、その先に待ち受ける運命とは――――


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