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陰陽学園の鬼神嫁 ~十二天将の力を全て手に入れたら、愛が激しい美少女たちと永遠になる物語~  作者: みなもと十華@姉喰い勇者2発売中
第六章 幸せの形

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第百五十八話 暗躍

 ゴールデンウィークも終わり、学園内の木々も青々として鮮やかさを増し、そろそろ初夏へと季節が移ろいつつある今日この頃。

 青春真っ只中の若人(わこうど)たちが太陽燦々(さんさん)輝く下で、力の限り恋に遊びに若者の特権を謳歌している中、連休中ずっと部屋でゲームをやっていた猛者(もさ)がここにいた。

 そう、我らが春近である――――



「ハルちゃん、キミは釣った魚に餌をやらない男なのか? ちょっとくらい私を遊びに連れて行ってくれても良いはずだぞ」


 今日も今日とて、和沙が春近に文句を言っている。若干、構って欲しいだけの気もするが。

 そんな和沙に、春近はいつも通りである。


「和沙ちゃん、世の中にはずっと部屋の中でまったりしていたい人も多いのだよ」


 そう、世の中には外に遊びに行かないと納得できない派と、部屋でまったり過ごしたい派との二種類の人間がいるのだ。

 夫婦間で、旅行に行きたい妻と休日はごろ寝したい夫との間でもめる原因でもある。

 ここにも、遊びに行きたい和沙と、部屋で遊びたい春近のカップルがいた。


「くそっ、これが惚れた弱みなのか。何でこんな男を好きになってしまったんだ私は」


「和沙ちゃん、そんな早くも倦怠期(けんたいき)みたいなことを言わなくても……」


「初体……アレもまだなのに、倦怠期になるわけないだろ! もっと私を可愛がるんだ! そうだな、先日のカッコいい感じに」


「あれは、何かアニメキャラ的なものが憑依しないとできないんですよ」


「まったくキミという男は……」



 そんな二人に、別の彼女が近づいてきた。


「やあ、二人で痴話喧嘩?」


 二人の後ろから遥が話しかけた。傍から見てるとイチャイチャしているようにしか見えない。まさに痴話喧嘩だ。


「ち、痴話喧嘩だと! ま、まあ、私とハルちゃんは夫婦みたいなもんだしな」

「遥さんおはよう」


 照れてモジモジしながら話す和沙と、普段通りの春近だ。


「ちょっと、春近君! 私のことは、この前みたいにカッコよく顎クイしながら『遥』ってな感じにやってよ! 手抜き禁止だよ」


「ええっ、だからあれは何かこう変なテンションでないと。ううっ、今思い出しても恥ずかしいぜ……」


 慣れないことをして、後から同じことができず困ってしまう。

 今思い出しても人前であんな恥ずかしい行動をしてしまい、顔から火が出そうな春近なのだ。



 キョロキョロキョロ――――


「おい、何をキョロキョロしてるんだ?」

 キョロキョロ周囲を見回す春近に、和沙がツッコんだ。


「こういう時は夏海が現れる気がして……」


「夏海ちゃんって、春近君の妹だっけ? 会ってみたいな」

 遥が興味津々だ。


「ハルちゃん、私にも紹介してくれ」

 当然、和沙も会ってみたいのだろう。



「どうやら夏海は居ないみたいだな。あいつオレが女子と何かしてるタイミングで現れるからな。まあ、そんなに偶然が重なるわけもないか」



「私、夏海ちゃんに挨拶してこようかな?」

「それは良いな。私とハルちゃんは将来を誓い合った仲だしな」


 二人が夏海に会う気満々だ。


「ちょーっと待ってください! オレが呼んで来るからここで待ってて」


 二人を廊下に待たせて春近は妹の教室に向かった。



「どうせ全員紹介しなきゃならないし、あまり目立つのはマズいからコッソリ呼んだ方が良いよな。突然押し掛けたら妹の迷惑になりそうだし……」


 そんなことを呟きながら、春近は妹のクラスの前に行く。


「なんか下級生のクラスって入りづらいな。おっ、いたいた……」

 廊下の窓から中を覗くと、妹の夏海の姿を見つけた。


「おーい、夏海」


 夏海は、兄に気付くと廊下までダッシュして、兄を押して教室から離れた。

 ズダダダダダダッ!


「ちょっと! 何で私の教室に来るの! おにいは有名人なんだからやめてよね!」

「これでも目立たないように気を使ったのに……彼女を紹介しようと思って……」

「はあ? もしかして、また新しい女? おにいのエッチ! ヘンタイ!」

「ううっ、更にアタリがキツくなってきたような……」


 春近はプリプリ怒った夏海を連れ、和沙たちの待つ廊下へと向かった。



「鞍馬和沙だ。お兄さんには色々とお世話になっている。よろしく頼むよ」

「飯綱遥です。初めまして。よろしくね」


「土御門夏海です。よろしくお願いします」


 挨拶を交わす夏海は、かつてない喜びに満ちていた。


 す、凄い! まともな人たちだ。

 爽やかで頼りになりそうな和沙先輩と、優しそうで落ち着いた感じの遥先輩。

 最初に会った人が強烈な印象だったから身構えちゃったけど、こういういかにも先輩っぽい人たちを待ってたのよ。


 実は和沙と遥も割と強烈な性格だが、知らぬが仏である――――



 まだ紹介していない彼女を思い出した春近が口を開く。


「そうだ、後二人も紹介しちゃうからついて来て」

「えっ……まだいるの……」


 若干、春近を見る目が『こいつ女の敵じゃね?』みたいに怖くなっている夏海を連れ、二年C組へと向かう。



「おっ、ちょうどアリスが居る。小っちゃいから目立つんだよな」


 すぐにアリスを見つけた春近が、教室の中に入って行く。


「おーい、アリス」

 アリスの手を引っ張って夏海の前に連れてくる。


「この子がアリスで……」

「おにい! 前から怪しいと思ってたけど、こんな小さな子に手を出すなんて最低! ロリコン!」

「あ、あの……」


 まさかの展開に、当のアリスの顔が憮然とした。


「おい」

 アリスが不機嫌そうな顔で春近を見る。


「ですよね。そりゃ怒りますよね……」



 春近が説明すると、いや、説明しなくても分かるはずなのだが、夏海がハッとなって頭を下げた。


「すみませんでした。先輩に失礼なことを言ってしまって……」

「いえ、別に気にしてないです」

「ホントすみません。小さ……可愛かったから」


 えええっ……これでホントに先輩なの?

 どう見ても小〇生にしか見えないけど……

 ふふっ、なんか小さな妹みたい。



「おい、ハルチカの妹が失礼なことを考えているです。(ぼそっ)」

「アリス……心を読むのはやめたげて、悪気は無いんだよ。(ぼそっ)」

「読んでないです。わたしが敏感なだけです」


「あっ、春近くん」

 ちょうどそこに忍がやってくる。


「あ、こちらが忍さん。で、こっちが妹の夏海です」


「よろしくお願いします」

 大きな体を少し屈めながら、遠慮がちに忍が挨拶した。


「えっ、あ、こちらこそ、よろしくお願いします」


 夏海は『デカっ』っという言葉を出しそうになった所で、先ほどのアリスの一件を思い出し出掛かった言葉を飲み込んだ。

 まるで日本代表の女子バレー選手のように背が高く見上げてしまう。


 忍先輩、優しくて良い人そう……

 何だろうこの全身からにじみ出る良い人オーラみたいなの……


【夏海好感度バロメーター全員版】


 常識人:遥先輩       こういう人を待ってたのよ。

 良い人:忍先輩       優しそう。

 爽やか:和沙先輩      面倒見の良さそうな先輩。      

 オタク:杏子先輩   

 普通 :咲先輩

 無口 :一二三先輩  

 超怖い:渚先輩

 セフレ:天音先輩

 小〇生:アリス先輩     やっぱりロリ……

 伝説級:ブラックリリー先輩

 ギャル:あいちゃん先輩  

 要注意:ルリ先輩

 問題外:ストーカー先輩


 ※単に夏海の第一印象の好感度です。もっと親しくなって性格を知ると、かなり変動する可能性があります。




 夏海を帰したところで、アリスが春近を人の居ない場所まで引っ張って行く。


「アリス、どうしたの?」

「最近、誰かに見張られている気がするです。気のせいかもしれませんが」


 アリスが先日の違和感を春近に伝えた。


「えっ、誰が……。もしかして陰陽庁が!?」

「分からないです。何かあってからでは遅いです」

「くそっ、何でだよ!」

「一応、報告だけしておくです」

「分かった、他の人にも伝えておくよ」



 一体誰が――

 もしかして、じいちゃんが言ってた組織の中で強硬論を主張する人たちか?

 くそっ! 何で放っておいてくれないんだ!

 何も悪いことはしていないのに……



 教室に入ると違和感に気付いた――――

 いつも元気なルリがいない……


「咲、ルリは?」

「ハル、陰陽庁の職員が声をかけて……一緒に正門の方に……」

「何だって!」


 ダダッ!

 すぐに春近は教室を飛び出し正門方向へと走った。


「何だ、何か胸騒ぎがする……」


 春近は言いようのない不安を抱きながら、全力でルリの後を追うのだった。


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