第百四十九話 栞子にお仕置き
始業式と入学式も無事終わり、春近達は晴れて二年生となった。
しかし、春近は先輩となった喜びより、妹に嫌われたショックが大きく塞ぎ込んでいる。
「うううっ、妹が口をきいてくれないんだけど……」
前日、栞子が自分が正妻だと主張した後に、他の彼女は側室だの旦那様は学園に君臨するハーレム王だのと暴露トークが止まらず、最後に『不束者ですが末永くよろしくお願い致します』と言った頃には、妹は完全に軽蔑の眼差しで兄を見ていた。
それ以来、春近が話し掛けても『ツーン』という感じの対応なのである。
「まさか、こんな早く全部バレてしまうとは……。でも、夏海からしたら、オレを頼ってこの学園に入ったのに、兄が遊び人のウェイ系になっていると思って裏切られた気持ちなのかな……。全然ウェイ系じゃないけど……」
そんな春近に、栞子は自分が原因だとは思ってもいないようである。
「旦那様、どうかなさいましたか?」
栞子が心配そうな顔で、春近の顔を覗き込む。
「そうだ、先ずやらなくてはならないことが……」
「何をなさるのですか?」
「栞子さん、ちょっと良いですか? 部屋まで来て欲しいんですよ」
「えっ、わたくしが旦那様の部屋に! も、もしかして、これは初夜……」
春近は栞子を連れ自室へと入る。
この時、春近の心は栞子へのお仕置きで頭がいっぱいだった。
そう、オレにはやらなくてはならないことがある。
これはオレが悪いのだ。
栞子さんのことを中途半端にしていたのだから。
ストーカーっぽい彼女をどう扱って良いのか戸惑って、真剣に向き合うのを避けていたのかもしれない。
俺は心を鬼にする。
鬼といってもルリたちのことではない。
鬼畜っぽい意味である。
オレは『お兄』から『鬼い』になる!
ギャグっぽいが春近は本気だ。
「どうぞ、ベッドに座って下さい」
「はい、ドキドキワクワクですわ」
「こうして横になって」
「はい」
「手をコッチに伸ばして」
「こんな体勢で?」
「で、この手錠で動けなくすると」
「えっ?」
栞子は手錠で手足をベッドの柱に固定され、完全に身動きができなくなる。
以前から杏子が調教用にと渡してきた、ベッドの下に隠してある調教道具が役に立つ日が来たのだ。
「あの……旦那様、これは一体……?」
てっきり初夜を迎えるのだと勘違いしていた栞子は、自分が何故固定されているのか理解できていない。
「栞子さん、何で妹に色々話しちゃったんですか?」
「そ、それは……わたくしが正妻ということを広め既成事実に――」
ベチッ!
春近は、調教用の鞭を栞子の体に振り下ろす。もちろん手加減はしているが。
「ああっ! い、痛いです」
突然の鞭打ちに、栞子が表情が強張らせた。
「あと、オレの居ない時に部屋に忍び込むのは禁止って言いましたよね!」
「え、えっと……それは……」
「何で守れないんですか?」
鞭の先端で、栞子の端正な顔や顎の辺りをぐりぐりとする。
「うう~もうしませんわ」
「信用できないですね。これから栞子さんをお仕置きして、二度と悪さができないように調教します!」
「えっ、あの、旦那様? 冗談ですよね?」
「冗談じゃありません! 栞子さんが二度と逆らえないように、徹底的に鬼畜攻めをします!」
「へっ………………」
制服のボタンを外すと、栞子の玉のような肌が露出する。
着痩せするタイプの瑞々しいハリのある肉体が薄っすらと紅潮するように染まり、胸の谷間を伝う汗が途轍もないエロスを醸し出している。
春近は調教道具の中から、くすぐり用の筆と刷毛を取り出す。
「あ、あの……」
何か言おうとしている栞子に、春近は有無を言わせず刷毛を落した。
「栞子さん、もう泣いても許しませんよ。今のオレはいつものヘタレじゃないんです。鬼畜キャラが憑依した鬼いちゃんです!」
大きく開いた栞子の腋をくすぐる。
腕を上げた状態で固定されがら空きになった彼女の腋に、容赦のない刷毛によるくすぐり攻撃だ。
コチョコチョコチョコチョコチョ――
「はああぁぁぁっ! ちょ、待ってください! くすぐったいですわぁ!」
栞子が、腋への刷毛攻撃に耐えられず、ジタバタとカラダを上下させる。
「栞子さん、動いちゃダメですよ」
春近は、栞子の上に跨り動けないようにしてから、刷毛を二本持ってダブル刷毛攻撃を加える。
二本の刷毛は、両腋をフェザータッチでコチョコチョと刺激し続け、腋から脇腹へと上下に滑らせる。
「んんんっっ! ああっ! だめぇぇぇぇ!」
上に乗られて完全に動けない状態のまま、容赦のないくすぐり攻めが続き、栞子は快感に耐えられず絶叫してしまう。
「栞子さん、あまり大声を出すと近所迷惑になってしまいますから」
カポッ!
春近はタオルを栞子の口に入れて声を抑えるようにした。
「まだまだ、ここからです」
「んんんんっ! うぐううううっ!」
スルッ!
衣類をズラし、更に激しいくすぐり攻撃が始まった。
刷毛で丘の周囲から少しずつ山頂へと滑らせ、焦らしながら戻ったり登ったりを繰り返す。
両手に刷毛を持ち、クリクリと回転させるように執拗な集中攻撃を繰り返し行う。
「んんんっー! んんんっっっー! ふぐぅぅぅぅぅぅー!」
永遠に続くかのように繰り返される刷毛や筆のくすぐり攻め。遂に栞子の限界が到来しビックンビックンとカラダを痙攣させてから、ぐったりとベッドに沈みピクピクと小刻みに震えて静かになってしまう。
「栞子さん、疲れて喉が渇いてませんか? 水分補給しないと」
春近がペットボトルのお茶を持ってきて、動けない栞子に飲ませてあげた。
「ううっ、旦那様……もうしませんから……許して……」
「栞子さん、何か勘違いしてませんか? お仕置はこれからですよ」
「へっ?」
再びタオルを口に戻すと、次は腋や胸だけでなく、足の裏、太もも、その他と、更に色々な所を攻めまくる。
「んんんっっっ! ぐふっっっ! ふうぅぅぅっ!」
首筋や耳までコチョコチョと筆で走らせる。
「ううううううっっん! うぐううううっっ!」
終わりのない無間地獄のようなくすぐり攻めに、遂に栞子は大きくカラダを跳ね上げるように痙攣すると失神して動かなくなってしまうった。
「うっ、ううっ………………」
――――――――
春近は、栞子の手足の手錠を外して開放し、汗でびしょびしょの体をタオルで拭いてあげている。お仕置きは終わり、いつもの優しい春近に戻っていた。
「栞子さん、もう悪いことしちゃダメですよ」
「はあっ、はあっ、はあっ、こ、こんなに、気持ち良いお仕置きなら、わたくし……また悪いことしちゃいそうですわ」
チラッ、チラッ!
栞子は、息も絶え絶えになりながらもチラチラと流し目をして、ちょっと悪戯っぽい顔で春近を挑発する。
「栞子さん、何か誤解していませんか? 悪いことしたら、もう二度とお仕置きはしませんよ」
「もう絶対、悪いことしません! 良い子になりますわ!」
栞子は改心して良い子になった――――
もう、ストーキングや忍び込みや私物漁りは、しない……かもしれないし……するかもしれない……。
お仕置きで俄然やる気になった栞子は、夏海の誤解を解くべく動こうとしていた。まあ、誤解ではなく事実なのだが。
「妹さんのことは、是非わたくしにお任せください! すべて解決してみせますわ!」
「いや、今までのポンコツぶりを見ていると不安しかないのですが……」
果たして、春近は妹と和解することができるのか?
そして、春近はノリノリでお仕置きをしてしまったのだが、栞子を帰した後も興奮が収まらずイケナイコトをしてしまった。
鬼畜キャラが憑依しても、やっぱり恋愛関係には少しヘタレだった。




