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陰陽学園の鬼神嫁 ~十二天将の力を全て手に入れたら、愛が激しい美少女たちと永遠になる物語~  作者: みなもと十華@姉喰い勇者2発売中
第四章 殺生石

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第百十九話 愛を知らぬ妖

 大天狗四人による大天狗五行結界陣が発動した。


 四人なのに五行とかツッコミを入れたくなるかもしれないが、一人欠けた四人で大結界術を無理やり完成させたのである。超強力が拘束力を持つ結界により、玉藻前の尻尾の呪力を抑え込む。


 遥は昨日から殆ど寝てないうえに周囲への警戒で神通力を使い続け疲労が蓄積されていたのと、管狐が上位存在の九尾に通用せず動揺して結界術のことを忘れていた。

 残りの暴走三人組は、何となく忘れていただけだが……


 春近が変なモノマネを始めた時は、この大変な時に何をやっているのだと思っていた。しかし、あの時の満彦の発言を使ったモノマネで、呪詛で使役され結界を張ったことを思い出したのだ。もはや、春近と天狗少女たちの阿吽(あうん)の呼吸である。


 四人も玉藻前が先を読んでいるかもしれないと思っていたので、春近のおっぱい発言の意図を汲み頭の中はおっぱいがいっぱいなのだ。

 それでも結界を完成させてしまうあたりは、さすが大天狗の力を持つ少女たちである。



「今だ! 結界で封じている内に尻尾を狙え!」


 春近が、満彦のモノマネをやめ、おっぱいも忘れて指示を出す。

 同じくおっぱいでいっぱいなルリも、自分の巨乳でオシオキしようとするのも忘れて攻撃に転じる。


「あっ、そうか! 空間歪曲!」

 グワァアアーン!


 ルリが空間操作で玉藻前を捻じ曲げて潰そうとする。


「おのれ! 空間干渉!」

 ギャァアアーン!


 玉藻前も空間操作して対抗する。

 封印は完全に六本の尻尾を封じ込めておらず、動いている尻尾が有るのだ。


「ダメだ! あと一角足りない! 四人では完全に封じるのは無理だ!」

 和沙が言うように、結界の足りない一角から玉藻前が抜け出ようとしている。



 バッ、バリッ! ギュワァアアアーン!


「おのれ! おのれ! おのれ! (わらわ)を封じようとするとは! 許さぬぞぉぉぉぉぉ!」


「マズい! 結界が破られるぞ! 何とか抑え込んでくれ!」


 春近の声に天狗少女たちも必死だ。


「ハル君、これで限界だよっ!」

「くっそぉおお! 止まれぇ!」

「ふんす!」

「もう力が出ない……」


「ひゃっはっはっはっはっは! あと少しじゃ! あと少しで決壊を打ち破れる。結界を抜け出たら全て殲滅じゃ! 強き鬼たちを倒せば、もう(わらわ)を脅かす存在など皆無! ひゃぁっはっはっは!」



「どうする、どうしたらいい、あと少しなんだ、何かないのか? あの尻尾を!」

 春近は祈るような気持ちで叫ぶ。




 ズドドドドドドドドドドド――

「ぅぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!」


 その時、遠くから雄叫びを上げながら突進してくる光が!

 それは黄金(ゴールド)白金(プラチナ)に輝きながら、スーパースポーツバイクのフルスロットルのような怒涛の走りで突進して来る。


「あれは、忍さん!」


 春近は見た。眩い光を放ちながら迫る勝利の戦乙女のような忍の姿を。



「うぉおおおおっ! 金剛拳(こんごうけん)!!」


 忍は突進する勢いのまま正拳突きを繰り出す!

 そのパンチは音速(マッハ)を超え音速の壁を突破した。衝撃波(ソニックブーム)を生み出し周囲の空間に破壊振動を発生させながら、結界を抜け出ようとしていた玉藻前に命中する。


 ズパアアアアアアアアァァァァァァン!!


「ぐあああああああっ!」


 結界と音速(マッハ)パンチに挟まれ、玉藻前の姿が波紋のように波打つのが見えた。


 忍は、そのまま玉藻前の尻尾に抱きつき、プロレスのベアハッグや相撲のサバ折りのような体勢でガッチリとロックする。

 結界と忍により、六本の尻尾は完全に動きを封じられた。


「今です! 今のうちに!」

「放せええっ! 放さぬか!」

「急いでください!」


 玉藻前と組み合いながら忍が声を上げた。


「咲ぃぃーっ! 頼む!」

 春近が叫ぶ!

 そうだ、咲なら、次元を切り裂く呪力なら!


「任せて!」

 咲はステッキを構える。


「大丈夫、アタシならできる! 忍を傷つけずに玉藻前の霊体にダメージを与えられるはずだ!」

 咲の持つ金属製のステッキが光り輝く!


 シュピィィーン!


次元斬六連(じげんざんろくれん)!!」

 シュバッ、バッバッバッバッバッ!!!!!!


 夜の闇の中に閃光が走り、六本の軌跡となって玉藻前の尻尾に吸い込まれるように通り抜けた。まるでスローモーションのように残像が残り、美しい大輪の打ち上げ柳花火のような光景だ。



「そんな……何故じゃ……何故じゃ何故じゃ! おのれえぇぇぇぇぇ!」


 玉藻の前の絶叫と共に、六本の尻尾は切断され光となって消えて行く。

 咲の攻撃が忍の体を通り抜け、別次元に存在する玉藻前の霊体に大ダメージを与えたのだ。


「尻尾が消えた! 今なら倒せるはず!」


 春近が叫ぶが、玉藻前は一瞬の隙を突き森の中に逃げ込んでしまう。


「は? 逃げた? まさか、『三十六計逃げるに()かず』か! やっぱり玉藻前は兵法を知っているのか!」

 

 ※南朝宗の檀道済(たんどうせい)によって著された三十六の兵法。三十六番目の走為上(そういじょう)は、万策尽き勝ち目がない時は兵力を温存する為に全力で逃げるという策である。



「待て! 逃がさない! 今度は絶対に!」

 ルリが後を追って森の中に飛び込んで行く。




 玉藻の前は全力で逃走していた。

 尻尾を全て破壊され大部分の呪力を失ったが、残る全てを逃げ足に使って走っている。

 もはや恥も外聞も無い。

 逃げ切って再び力をためてから復讐すればよいのだから。

 

「何故じゃ! 何故、(わらわ)が! こんなはずではなかった! 強き鬼たちには警戒をしておったはず! 何故じゃ! あの、脆弱(ぜいじゃく)なる人間か? あの人間が局面を変えてしもうたのか!?」



 玉藻前の脳裏に春近の顔が浮かぶ。



「あの、ふざけた男……貧弱で脆弱なる存在……人間など虫けらと同じはず……。(わらわ)の瘴気で簡単に死んでしまう……そのはずじゃった。しかし、あの人間によって、このような窮地(きゅうち)に立たされるとは……」



「待て!」


 玉藻の前は戦慄した――――

 十分に引き放したはずが、すぐ後ろに迫られている。


「何故じゃ! 何故、(わらわ)がこんな目に!」


 ついにルリは玉藻前を射程に捕らえた。

 強力な呪力により、周囲の空間が歪み始める。


 ミシッ、ミシッ、ミシッ!


 ぐにゃりと空間が歪み出す。玉藻前の周りの空間が隔絶され捕らえられる。


「もう、終わりだ!」


 ギュワァアアアアーン!


「ま、待て、其方(そなた)(わらわ)と同じじゃ! 同じ、忌むべき存在として虐げられてきたはずじゃ!」


 玉藻前とルリが向き合い、呪力同士が接触した時に、ルリの脳内に玉藻前の思念が入り込んでくる。

 それは幼い日の記憶とリンクする。


『鬼の子だ……呪われている……恐ろしい……』

『私は……誰にも望まれていない……私は……皆から嫌われて……』


「ううっ! あああっ!」


「そうじゃ! 其方は化け物じゃ! 其方の居場所は無い! (わらわ)と一緒に来るのじゃ! そうすれば、この国の半分を分け与えてやろう!」


「わ、私は…………」


 ドクン……ドクン……ドクン……

 暗闇の中から暖かな光が現れる――――

 それは、ルリの冷たくなった心を、灯火(ともしび)となって温める。



 ハル……

 そうだ、私は一人じゃない……私を好きだと言ってくれた人がいる……私には帰る場所が有る……


「私は、私はアナタと同じじゃない!」

 パリィィィィィィン!


 ルリは、玉藻前の精神支配の呪縛を破った。

 昔のルリだったら破れなかったかもしれない。

 だが、今のルリは愛する気持ちを知っているのだ。


「な、何故じゃ……其方も同じ妖のはず……」


「可哀想な人……。アナタは愛を知らない……全てを呪って……多くの人を殺して……多くのものを傷つけてきた……そうして何千年も……もう、終わりにしよう……」


 ルリが呪力を込めると空間が捻じれて行く。

 玉藻前は現世に具現化していた実体を維持出来なくなり怨霊へと戻って行く。


 ギュワァーン! バシッ! ビリッ!


「待て! やめよ! まだ(わらわ)は! ぎゃああああっ!」


 遂には怨霊の形態も維持できず、殺生石に戻ってしまう。

 そして……その殺生石は……ルリの空間歪曲の呪力によって圧縮粉砕され塵へと返って行く。


 ギュバババッ! ビシッ! グチャ! バリンッ!



「終わった……」


 ルリは、塵となって消えて行く玉藻前を見送りながら考える――――


「もし、私がハルと出会えなかったら……もし、この世を呪い続けていたら……」

 すぐに(かぶり)を振り、否定する。


「私は大丈夫だ」


 ルリは山を登り、皆の待つ場所に戻って行った。


 ――――――――






 その頃――――


 麓の街に続く道に、一人で渚が立ってた。

 時折通過しようとする車のドライバーに呪力を掛けUターンさせている。

 街に残る瘴気の被害が出ないように、一人残って街に入ろうとする人を防いでいたのだ。

 

「寒い! 春近、あたしのこと、忘れてるんじゃないでしょうね!」


 玉藻前の消滅と共に瘴気も消えてしまったので大丈夫なのだが、ひたすら向かって来る車をUターンさせていた。


「くしゅん! だから、寒いのよ!」



 こうして、大災厄は未然に防がれたのだった。


 皆が協力し頑張って防いだのだが、その女子軍団全員の欲求を春近一人が受け止めることになってしまう。温泉旅館での、凄まじいご褒美なのかお仕置きなのかよく分からない攻めが、春近の身に迫っていた。


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