それはつみでは?
毎時間投稿中です、完結まで
21 無自覚って時に罪だよね
部活動も終わりに差し掛かり、日も落ちかけていたころ
部活動メンバーも談笑しながら戸締りをしていた
俺もヘラとラッセルと談笑していたところに
いつの間にかボロフードの人影がたっていた
「あれ、ネビュラ、もうみんな帰るところよ?」
ラッセルさん?多分反応違う気がするんだ?正解は分からないけれど、とりあえず驚かないかい?
「うん、しってる、この時間帯からが好きなだけだから」
正式な称号の奪い合いの時に見せたハキハキとした姿の面影が無く
くらめーな、じみめーな、印象を持った
「ネビュラ…でいいのか?」
「うん、それでいいよ」
「もう帰るところだけどどうした?」
「……」
え、そこで黙るの?
「ラッセルに会いに来た」
「お、おう」
「…」
「…」
「チェリー、もう入口だけだよ」
タフラスがオドオドと近寄ってくる
「おう、そうか…まぁ寮に戻るか」
ネビュラはなんというか負のオーラのようなものを感じる
圧があるのだ
そのうえで黙られるとなにか話さないといけないのではないかという気になる
部室に挨拶をして鍵を閉めた
鍵は合鍵が何個もあるから管理は結構ガバだけどな
「ふふん、召喚獣の出番ですね!今日は私に任せてください」
ラッセルはそう言うと杖からセルを召喚する
「この子はドラゴンとは違って守り寄りの子です、感知した範囲の魔物にミニを貼り付けて倒してくれるんですよ!」
新しいおもちゃを自慢するようにキラキラとした目で杖を自慢するラッセル
張り付かれたら怠惰感に襲われるあれね
メンバーのみんなはおぉーと感心したように武器を見ているが、そのミニとやらを散々貼り付けられた俺からすると…うん…
「しかもお金も回収してくれるんです」
「そこ見るとドラゴンより便利じゃない?」
「見た目もどこか可愛らしいですね」
オウギ先輩とタフラスはセルに対して好印象のようだ
「杖の形状はチェリーのように武器に模すことはできませんね」
杖には鈴のような装飾が付いており鈍器のような使い方は出来なさそうとパルが言う
「…俺も鈍器として使いたくはないんだけどね?」
虎さんが出てくれないのに大きさは槍ぐらいで杖の先にパラジウムの矢じりをつけたから本格的に槍として使い始めてる
実に有効的な活用法だろう
◇
遠くに見えた魔物すらミニが付いておりこちらに近づくまでもなく消滅して行った
「らっちゃんの新武器凄いなぁ…」
「オウギと同感かもな、ただ近接武器の俺からすると出番がない」
コラプト先輩、オウギ先輩は完全に傍観者だった
「僕も届かないですね」
「私もですね」
「わたしもー」
タフラスの投擲も届かない位置
ソフルとヘラの魔法も届かない
「私は弓矢がギリギリですが視界の悪さもあるので…」
パルも遠すぎて届くが微妙という感じ
「…えへん」
「ラッセル、すごいのは分かったが全力でサボることを許す」
「…まぁ、私の独り占めになってしまいましたからね…えぇ」
既に寮の前で完全な安全が確保されたが、お金は全てラッセルの元に落ちたのでこれが絶対に良いとは言えない空気
さすがにラッセルも申し訳なさそうに言っていた
「じゃあおつかれー」
寮の中でパラパラと解散していく
「…ネビュラはどこまで来るんだ?」
既に離れに続く廊下の途中だ
ネビュラは意識を向けないとその存在を見落とすようなレベルで影が薄い
影が薄いのは悪い意味ではなく褒め言葉として捉えて欲しいが…
まぁややこしくなるだけなので言葉にはしない
「ラッセルについてってるだけ、ラッセルはどこ行くの」
「うん?私はチェリーの部屋に行くよ」
「…」
「え、いや、おかしいよね…ね?おかしいよね?ヘラ」
ラッセルはどうして来るのが当たり前みたいにいってんの?
「そうね、まだベッドがふたつしかないわ」
「そうそう、いや、そうじゃない」
「どっちよ」
「いや、あれ?ラッセルが来るのはおかしくないか?」
「なんで?非契約奴隷なんでしょ?」
そうなの?
「ちなみに学生同士の奴隷契約は学園内では禁止ですよ」
口元に人差し指を当ててしっ〜っと微笑むラッセル
すると顔の見えないネビュラから圧、というか魔力が漏れ出ているように思えた
「やっぱり奴隷…」
そう呟くと…向きなおられた気がした
「ラッセルはこれのどこが好きなの?」
「血ですかね?」
何その返しこわぁ
「正確には魔力が好きです」
「ちっ…」
なんで舌打ちされたの?
ついでにこの世界だと恋愛観ってそういうものなの?
…いや、小銭稼ぎしてた時期は冒険者同士の男女が甘い空気になっているのを傍から見ていたことはあるから
うん、そんなずは無し
「非契約奴隷って契約してないなら奴隷じゃなくないか?」
「つまりは口約束ってことですけどね」
あぁ、そういうことか
…してないことは無いけどさぁ
そんなこと言っている間に部屋の前まで来た
「ラッセルまじで来るのか?」
「ここまで来てそれ言いますか?…というか今朝は朝食を一緒にとったじゃないですか」
なんなら押し付けてきたじゃないですか、と顔を赤らめながらボソボソ言わないで欲しい
生理現象だからゆるして?
「わたし、ラッセルの部屋の前で待ってたんだけど」
「夜にはこっちに来てたからね、ヘラとちょっとお話をしてましたから」
おはなし?
知らないぞとヘラを見る
「チェリーには内緒ですから」
ふふん、と見たことないような仕草でヘラが返してきた
ラッセルのような仕草だがヘラがやると新鮮でドギマギする
ヘラとラッセルは顔を見合わせて微笑んだ
「そう、ですか」
ネビュラが一瞬悲しそうな顔をした後俺を睨む
「…今日は帰ります」
沈んだ声音でネビュラはそう言うと部屋の前から立ち去った
「ラッセル、どう思う?」
「ネビュラは強いですよ?」
「…」
そっかぁ、どこに戦闘開始の引き金があったのか分からなかったなぁ…
でもさ、ラッセルを慕っていて、俺に取られたから面白くない…って感じだと思うんだけど
引き金は引かれていたとして、何かの確信は今得ていたよね?
「ラッセルが持ってきた厄介事な気がするんだ…」
「…わたし、またなにかやってますか?」
無自覚って時に罪だよね?
冷ややかな目線をラッセルに送っていたらなんとなーく自覚は持ってそうな返事で返されてしまった
部屋に入り、食事をして
湯船でラッセルが入ってこようとしてるのをヘラが止めたりして…
夜が更けていく
日課となった筋トレは風呂の前に済ましたし
寝る前の武器の手入れも終わらせた
何かが引っかかってモヤモヤする気もするがあとは寝るだけ
「…ねるか」
モヤモヤも寝れば気にしなくなるだろう
「ねぇチェリーさん」
ベッドに入るとスススっとラッセルが来て潜り込もうとしてくる
「…今日は眠い」
「あら?今日はということは明日はいいんですか?」
「そう言う意味じゃなくて…」
ゆっくりと意識がまどろむ
あぁ…もう寝るなぁ
目を瞑ったら寝るんだろうなぁ…
確信がある
「…一緒に寝ていいですか?寝ますね?」
「へーらぁー」
この女の子話聞かないよぅ…
「ふぁぁ…あっ!?ラッセル何してんの!?」
「ヘラ…いえ、ちょっと一緒のベッドで寝ようと思っただけですよ」
「そういう意味で聞いてないからね!?」
ねむい…まどろみ、ここちのよい
…ねむり
「……女の気配がする」
「まぁ…分かるんですか?ふふ、じゃあ一緒に寝ましょうよ…」
寝るなぁって、寝たくないけどなぁって、抗えずに寝ること、ありますよね、ウンウン