では、しんでください
前回のあらすじ(1時間前)
「は、はい!」
15 では、死んでください
「よい返事です、さぁ武器を構えて、殺し合いをしますよ」
「まてまて!よく分かってないんだ!殺し合うってことは死ぬんだぞ!?」
「この空間で死んでも元の世界では死なないから安心して死んでください」
そういう問題なの!?
「星屑の煌めきは今ここに集う、光となりて我が剣とならん
さぁ姿を表して…スターダストドラゴン」
スターダスト…ドラゴン…だと!?
なんてかっこよくて中二心をくすぐる名前なんだ
てか勝てるしない!
ラッセルの構えた杖に光の球体が現れ
…形どっていく
「くるるるるるぅぅう…」
これが…スターダスト…ドラゴン…
「…エビ?」
エビだった、えびだ、海老じゃん
エビ、エビフライのあの、エビ
白いエビだわ、エビw
いやエビて
「なにか失礼なことを言いましたね」
光速で目の前に移動してきたエビ
そのまま胸に体当たりされる
その瞬間、意識が遠のくほどの痛みが胸を中心に広がる
激痛、まるで胸に穴が空いたような、いや、実際貫通した、エビは俺の胸を突き破っていった
「……!?」
二重の意味で驚く
ひとつは信じられない激痛だったこと
もうひとつはエビは体を貫通して行ったことだが、傷はひとつもなかったことだ
顔を上げて目が開かれる、想像以上の痛みだ、心が折れそう、俺でもいい気がする
「がふ…」
しかし気力で耐えた
「…完全に初見なんですよね?私も見せたことはないはずですし、バカにされた気もしますし」
どこからそんな気力がきたのか
ひとつ、確かめないといけないことがあった
「あぁ…効いたぜ、痛いくらいになぁ…」
たった一撃で外傷はないのに既にボロボロだ
実際痛いし
「負けて私の元に落ちてくださいな」
「それが目的なのか?」
「えぇ…この空間なら内緒話にもうってつけですし、教えてあげましょう…どうせすぐの未来ですし」
うんうん、と頷きながらラッセルが喋り出す
「称号のスターダストは私の家名でもあります、奪うには立会人の元おこなう戦いが必要なものですが
スターダスト家はこのドラゴンスタッフを受け継いできた家系で、召喚獣の家系なのです
そして、スターダスト家が召喚獣を使役するなかで最強でなければならない
だからこそ、全ての召喚獣の杖を我が元に集めるのです」
…それで、この杖が欲しいと
「アトリもなんの不運か召喚獣の杖を得てしまってね?可哀想ですが従属させました、致し方なしです」
よよよ、と悲しそうに語るラッセル
目は笑ってない、そうなることが当然という顔だ
「その杖は特殊なのです人を選ぶのもありますが…私から、スターダスト家から逃げるんですよ」
「…杖が?」
「えぇ…土地の武器という世界の神秘の武器だからですかね?
そんな杖に選ばれるなんて…あぁ、なんて恐ろしい、ついにスターダスト家が没落、しかも私の代で…
いえ、まぁそんなことなさそうでとても安心しました
…まさか召喚獣を出せないとは、そうなら生徒会室でさっさと殺すべきでしたよ
…ほら、何を考えているのか知りませんが策があるなら実行してください
そのうえであなたを殺します」
最後の方は俺の事をまるでゴミ…道具、ただ従属させるだけの存在としか見てなかった、冷ややかな目はまるで作業するように殺すような、何も感じられない冷酷な目となっていた
策も何も時間を稼いでありったけの魔力を杖に込めているだけだ
ラッセルが言っていたように召喚獣さえいれば勝ちの目が逆転するかもしれない
…しかし杖は反応がなかった
「選ばれただけで力が引き出せるとは限りません、特に召喚獣は…まぁ魔法武器はその傾向が強いのです
…やれ」
丁寧に希望の芽を詰んでくれるラッセル
いつの間にか頭上に居たスターダストドラゴンが頭の上から足の先まで通っていく
全身が弾けたのではないかと思うような衝撃
「ごはっ…」
口から漏れたのは血だった
…外傷はない、そのはずなのに
明らかに死が近づいたことに気が遠くなりそうだ
一歩、大きく踏み出すことで倒れるのを防ぐ
…それほどに消耗している?
「…ひとつ、聞かなきゃならねぇ」
「どうぞ」
つまらなそうに俺を見るラッセル
「俺が勝ったらなんでも言うことを聞くんだな?」
「…ふふっ、勝てるとでも?」
「聞くんだな?」
「…ええ、聞きますよ、なんでも」
「えっちなこともか?」
「ぶふっ……えぇ、聞きますよ」
ラッセルは笑いながら返事をする
面白いことを聞いたつもりは無い
「一回だけとも言ってないな?」
「…えぇ、何度でもなんなら奴隷に落としてもいいですよ?私、顔もスタイルもいいでしょう?好きにしていいですよ?
『か、て、た、ら、ね?』」
煽るように、実際煽っているのだが
嘲笑うように喋るラッセル
「じゃぁ、希望を抱いて死んでくださいな?」
おいおい悪役かよ…可愛い顔が台無しだ
「残念だな、召喚獣はいるんだよ」
「…は?」
ラッセルの表情が固まる
「大地の鼓動こそ我が命、風は血となり身体を巡る…その姿こそ大陸であり、世界である」
「な、嘘でしょ?……あ、とり?騙したの?」
歪み泣き出しそうな顔になるラッセル
「今こそその姿を!表すがいい!ゴッドリータイガー!」
杖を突き立てて高らかに叫ぶ
「いやぁっ!」
そして
俺はフラッシュバンを投げた
カッ!
一度全身をスターダストドラゴンが貫いて行ったが
勝機はここしかない、虎さん出てこないよ!なぁにが姿が世界だ!相変わらずうんともすんとも言わねぇよ!
全力で走りラッセルに近づく
腰から機械世界産のビリビリ棒を取り出す
カシュンと伸びてバチバチと音がする
警棒を魔改造、魔法改造?強化?したものだ
魔物用なので人には使わないでね
と訓練で教えられた
俺は魔物討伐とか行ったことがないからこれが初使用である
「説明は!負けフラグなんだよ!覚えとけっ!」
ラッセルの腰目掛けてビリビリ棒を振るう
そして腕を捕まれ投げられた
世界が回り
流れる星が綺麗だった
「あぇ?」
ドシンっ!
柔道の投げ技は背中を強打し
一瞬呼吸が出来なくなる
「おまえ…」
頭を踏まれた
見れば怒り心頭なラッセルが
わー、ぱんつみえたー…
「白かー」
知ってたわー
「くそ!くそ!くそが!」
ラッセルは乱れて力任せに俺を踏む
俺にはこれがご褒美になる性癖は残念ながら持ち合わせてない
普通に痛い
鼻血も出たし…すごく痛い
「何が負けフラグだ!くそ!」
悪態付きながら何度も踏む、蹴る
「……はぁ…はぁ…お前は私の体術だけは知ってただろうが、馬鹿か!能無し!」
いたいです
歯も折れました
涙がとまらないです
目元が腫れて視界が歪みます
「はぁ、はぁ……詠唱はなんだっけな…くそ、こんなことなら覚えとけばよかった……燃え盛れ、ファイア」
窮屈そうな赤い魔法陣がラッセルの手元に現れて、そこから火の玉が吐き出された
一瞬燃えるように熱くなり、小さな爆発が起きて体が吹き飛ぶ
魔法らしい魔法だ…街ではすごくたまに見かけた、この学園では初めてだ
「こんな、ゴミなら死んでも良かったじゃないか」
先程の虚仮威しとなったのが相当頭にきているらしい
清楚で可憐なイメージだったんだけど
その姿は見るまでもない
「ほらっもっかい撃ってやる、死なないんだから悲惨な姿になるように殺してやる、心から敗北を認めるようにな」
ゲシッと蹴られて転がる
…手に、何かが触れた
しんでしんで言い過ぎなんですけど…さすがにコレで何かに引っかかりませんよね…?
ひかりさすみちとなれ!とかは危なそうですけど…
うわだれだおいやめ、なにをするっ
(茶番)