暗黒企業の魔王あんど聖女
なろうラジオ大賞2、参加作品です
「君には期待している」
肩に手をかけ眼の下に濃い隈を作り疲労困憊の様子の中年社員に労いの言葉をかける。和やかな笑顔、穏やかな声音に疲労に色濃い表情が明るく輝く。
中年社員が退出すると、別室から出て社長の魔王に言葉を投げ掛ける。
「大概にしなさい、魔王」
魔王、コイツは佐々木魔王。この会社の創業者で私、鈴木聖女の幼馴染。
二十四時間闘えますか?が口癖で四十九時間働く事をにこやかに強要する正しく暗黒企業の大魔王。
その魔の手から社員を護る立場に私はいる。社長秘書にして社員の労務管理担当、暗黒企業の聖女が別名。
「何時まで姉貴振る気だ、聖女」
「ふん」鼻で笑うわ「偉そうね、昔はこんなだったのに」親指と人差し指でちょっとのポーズ。
私は成長が早く小学生の頃には165センチ、今では172センチB90(F)W60H88のナイスバディ(え?聴いてない?)
チビだった魔王も今や198センチ130キロのガチムチ肉ダルマ。あの太い腕と分厚い胸板に抱き締められると・・・あーダメダメ、まだ朝よ。夜まで我慢ガマン。
「あ?なんだって?そんなら今夜思い知らせてやるぜ?『ああん、スゴイぃぃ、おっきぃ、奥まで届くぅ」ってなw」
「いいわよ?先に逝った方が奢るでどう?」
「ほほぅ、いいぜ。俺が勝ったら『ナポリタソ』にしとくわ」
「『ナポリタソ』?そんなのでいいの?」
「ああ、聖女が初めて作ってくれた思い出の品だからな」
「バカ・・」
「それより、お仕事だろ?」
先ほどの中年社員が出て行ったドアを魔王が見る。私は魔王の首に腕を廻し唇を重ね彼を追う。
聖女と魔王、転生者でお互いに殺しあう間柄だった。
でも、こっちの世界に二人共転生して来たからには前世のことは無いことにした。
ホントはアッチでも魅かれあっていたから。
相討ちになって別世界で一緒にって。
だから今は本当に幸せなの。
◇
中年社員は疲れた様子で休憩室のマッサージチェアで揉みもみしている。
ホント、ブラック企業だわ、ここ。
彼氏(旦那)にこき使われて彼女(嫁)に癒される。
マッチポンプマッチポンプw
さあ、聖女の力で彼の者を癒せ♪
私達二人の幸福の為に頑張って、みんな♪