第1話 始まりの朝
夢の終わりを合図に私、アーテル・パーガトリーはまだ日の上りきらない朝に目を覚ました。
「またあの夢ね・・・」
と、最近の朝の定番の一言を発しながら体を起こす。いつものように頬を伝う涙を拭う。そして洗面台に行き、顔を洗いながら言葉を漏らす。
「今日の夢は最後に普段はない言葉があったのが気になるのよね」
いつも通りだと濃い紫色の長い髪を血で汚した彼女は、金色の瞳を私に向け緑色の炎に巻かれながら告白し、そして最後の言葉は炎の勢いに負け、私まで届かなかった。けれど今日は最後まで私に届いた。
これまでも、炎に巻かれながらも真っ直ぐに私を見つめるあの瞳にどきりと胸が高鳴り、嘆きに満ちたあの声を聞き、悲しく思ってきた。しかし、
「今回は、とてもじゃないけど私の妄想だなんて言えなくなっちゃってるよね」
そう涙を流し、声を掠らせながら独りごちた。
伝わってくるあの悲しみと愛情は確かに本物だ。決して空想なんかではない。
正面の鏡に目を向ける。濁り混じりの鏡面でもわかるほど、私は酷く悲しげなひどい顔になっていた。
「彼女は一体、私にとっての何?」
その問いに答える声はなく、ただただ静かな時間が過ぎていった。