小説を書く理由
なぜ私は小説を書くのか
「あなたはなぜ小説を書き続けるのでしょう?」
目の前でボロボロになっても小説を書く男に質問してみる。
「あんたはどんな食べ物が好きなんだ?」
全く関係ないことを言われた。
とはいえ、無視することでもないだろうと、少し考えてみる。
「うーん。あ、たい焼きとか」
「他には?」
「他?……。ソフトクリームとかかな。それがどうしたの?」
「たい焼きとソフトクリーム。そのどこが好きなんだ?」
「どこって、カリカリするところとか、甘いところとか、冷たいところかな」
なぜこんな質問をするのか。そんなことが顔に書いてあったのだろう。男は苦笑した。
「この質問をするとみんな君みたいな顔をするよ。どうしてこのタイミングでってね。俺が思うに、なぜ好きなのかってのはただの理由付けでしかない。好きだから食べるのではない。食べたいから好きな理由を付けるんだ」
「わかったような、わからないような……」
男は笑った。
「今はそれでいい。いつかわかるさ。……さて、もう必要ないかもしれないが、最初の質問に答えよう。なぜ小説を書くのか。簡単だ。俺が書きたいから書いている。理由はただの後付けさ」
そう言った男は、しばらくあとに死んでしまった。
病気で、あっけなく死んでいった。
でも、男は小説を残した。
僕は男のことを忘れないだろう。男の残した小説も。
なぜか今は小説を書きたかった。
理由はなかった。
という訳で書きたいから書いてます