青き精霊の衣服を纏ったランスロット(3)
白銀のサーベル・タイガーは精霊の泉の近くの住みかにいた。
(あの子が来てから3年か…。早いものだな…。)
不思議な事にランスロットが来てから、このあやかしの森も変わりつつある。不毛だった、沼近くに緑が生い茂り、精霊の大木からは新たな精霊の実が育み産声が上がる。一角ウサギ達も増え、トレント達も生き生きと過ごしている。気まぐれな精霊女王アウロラはめったな事には姿をその姿を現せなかったが、最近はしょっちゅう精霊の大木の下に姿を現すようになった。
そして、一番変わったのは今世では孤独だった私だ。
魔王と破れて転生した一匹のサーベル・タイガー。
あやかしの森の住民なって数百年…。前世での記憶をもつサーベル・タイガーは、昔一緒に魔王に戦いを挑んだ友を憂い思っていた。
私がここに転生したのだ…。
かつての仲間の友もどこかで私と同じように転生しているやもしれない…。
「サー・サーベル!ここにいたの?」緑の髪のセシリーが精霊の粉を撒き散らしながら飛んで来た。
「ランスロットあの子凄いわよ!もう基本的精霊の言語を完璧に自分のものにしちゃったわ!私、教える事はもうないわよー。」
サーベル・タイガーの下にはランスロットの話ばかりが毎日のように舞い込む。
サーベル・タイガーほほくそ笑む。
「そうか…。」
人間で基本的精霊の言語を獲得するとは、大したものだ。並大抵には獲得は出来ないと、サーベル・タイガーは前世の記憶を照らし合わせながら思った。
(まるで、大賢者みたいだな…。)
サーベル・タイガーは昔の仲間に思いを馳せていた。
「それでね。サー・サーベル、相談なんだけど。上級者的精霊の言語をあの子に教えようと思うの。」
上級者的精霊の言語?
確かに精霊の言語は多岐に渡るエルフ語からドワーフ語まで、その数は数十以上にもおよぶ。
「でね。私は無理だからリーゼに託そうと思うの!」
(何?リーゼにか?)じろっとセシリーを睨むサーベル・タイガー。
「解ってる!リーゼは人間嫌いで、無愛想な精霊って事は!だだ、リーゼは私よりも精霊言語に優れているのは確かなの。いずれ、ランスロットのためにもなると思う。」
(精霊のリーゼ。人間嫌いではあやかしの森の者なら誰しも知っている。リーゼがランスロットにちゃんと勉学を易々とは教えてはくれないだろうに…。)
(ランスロットの為か…。セシリーもあの子の可能性を信じているのだな。)
「セシリー。私には精霊の言語は解らない。そこまで、お前がいうのなら、ランスロットを頼んだ。」
あやかしの森に居られるのもあと6年、たったそれだけで上級者的精霊の言語を獲得できるとはサーベル・タイガーは思わなかった。(ただ、あの子にはできる限りの事はしてやりたい。私があの子の養育者になったからには…。)
「ありがとう。サー・サーベル。さそっくリーゼに話をつけてくるね!」一目散にセシリーは飛んでいった。
何だ、まだこれからの話だったのか…。サーベル・タイガーは、いつものようにため息を着いた。