精霊女王アウロラ(2)
精霊女王アウロラ。その姿は見るものの目に変幻自在な姿を見せる。
サーベル・タイガーの目にはゴールドの長く揺れる髪、銀色の目をした人間の年頃に例えたら20台半ばの姿。頭には色とりどりの草花の冠。衣服はふんわりと白い揺れるドレスの裾は青白い月明かりでところどころが虹色に輝いて見える。
セリシアことセシリーに比べると存在の大きさもそうだが、圧倒的なオーラを大気に放っていた。
「久しぶりですね。サー・サーベル。あなたが、ここに来てくれるなんて。今夜のフル・ブルームーンは何て素敵なんでしょう。」
女王アウロラは目を細め、笑顔でサーベル・タイガーに言った。
女王アウロラの周囲を身長30cm程の小さな精霊、セシリーが慌てながら飛び回る。「女王様!!大変です!聖なる泉に赤子が出現しました!フル・ブルームーンの月世に照らされて浮かんでたのです!」
「今夜の警備ご苦労、セリシア。サー・サーベルと居るその子ですね。」
赤子は、サーベル・タイガーの前に座り、女王を見上げ、小さい両手を広げ
「あう、あう、あー。」
声を上げた。サーベル・タイガーが見るかぎり、赤子は楽しそうな表情。
「あら、あら。それは、何て珍しい事なんでしょう。聖なる泉に、生き物が姿を表す。しかも、フル・ブルームーン。」
女王アウロラは赤子とサーベル・タイガーを交互に見ながら、
「まるで、あなたが現れた100年前の話みたいですね。サー・サーベル。」とコロコロと笑った。
サーベル・タイガーもかつては人間だった。世界を暗黒の魔王が支配しようとする聖なる戦いに勝利したものの、命と代償にサーベル・タイガーとして生まれ変わった。100年前のフル・ブルームーンの月光の下、あやかしの森の聖なる泉で。サーベル・タイガーは女王アウロラの目を見つめ、
「そんな事もあったな…。ところで、女王。この赤子は、一体何者なんだ?千里眼の精霊女王はこの子から何を感じる?」サーベル・タイガーはアウロラ女王に尋ねた。