精霊女王 アウロラ(1)
あやかしの森の奥深く、精霊の息吹きが満ちる大木の下に精神女王が居ると言う。
大木の下には、今か今かと忙しげに精霊達とあやかしの森に住む一角ウサギとトレントがこれから始まる女王の宴の準備をしていた。
「早く!早く!もうすぐ宴が始まるよ。」と精霊。「木いちごのパイは焼けたのか?オレンジのスコーンは?葡萄酒の準備は出来ているのか?女王様はミントのハーブティがお好きだから、最初にお出しするように。皆、もうすぐ女王様がフル・ブルームーンの宴にそのお姿を表しになる。決して粗相のないように!」眼鏡をかけて蝶ネクタイをした一角ウサギが他の一角ウサギに指示をテキパキと出している。
「トレント、この赤い花は女王様の好みではない。可憐な白い花に変えてくれ。さぁ、急いで頼むよ。」
トレント達が一角ウサギよりも大きな身体を揺らして、宴の準備に追われていた。
セシリーの精霊の粉をたっぷりかけられたサーベル・タイガーと赤子はゆっくりと宴の上空から宴の会場へと姿を表した。
一角ウサギ達が、ビックリした表情でセシリー、赤子、サーベル・タイガーを見る。
会場を仕切っていた眼鏡をかけた蝶ネクタイの一角ウサギが、
「セシリー!一体何事だ?女王様のフルムーンの宴の準備中だぞ!お前は、警備担当だ!現場を離れたのか?」とセシリーに詰め寄る。
「警備をしていての緊急事態よ!女王様はどこ?」
「女王様はまだ姿を表しになっておらん。緊急事態だと?宴の準備以外に緊急な事があるのか?」一角ウサギがまくし立てる。
「これだから、本当に一角ウサギは頭が堅いんだから!おじいちゃんウサギは黙っててよ!」とセシリーも負けてはいない。
「何だとー!!!」と一角ウサギ。
ベーっと舌を出すセシリー。その光景にをみるなりため息をつくサーベル・タイガー。何も解らずに、きゃっきゃと喜ぶ赤子。
サーベル・タイガーは、深く深くため息をついた。
突如、澄んだ美しい声が大気に響く。
「これは、これはサー・サーベル。よく、入らして下さいました。」
精霊女王アウロラの声だった。