第32話 ある異世界勇者の下校
俺は少年少女を転ばせただけだ。
うん、大丈夫だ。二年後女にもぎゃーぎゃー言われない筈だ。
校舎裏を後にしながらそんなことを考えていた。ん?気配を2つ感じるな。
1つは呟く女だな、もうひとつは・・・・・・知らない奴だな。気にしないで良いだろう、俺は暴力は使っていない。さて、二年後女か隼人を見つけないと俺は家に帰れないぞ。
とりあえず呟く女と合流すれば最悪家まで送ってくれるかもしれないな。俺はそう思い呟く女の気配の方向へ歩き出した。
樹の影で全く見えない!
素晴らしい素質だな・・・・・・と呟く女を発見し声をかける
『暴力は使っていない。』
『見てた。暴力は使ってない』
『二年後女か隼人と合流したいのだが、どこに居るかわかるか?』
最悪〈気配察知〉で探し当てれば良いのだか一応聞いてみる。
『ん、沢木さんは私が結城君が校舎裏に呼び出されたのを伝えたから来るはず。東絛君は、知らない』
フム、ではそろそろ二年後女が現れ・・・・・・たな。
『太一!(やられた人は)大丈夫?』
『あぁ、暴力は使っていないぞ。少し転ばせたがな。向こうに転がっている』
はぁはぁと息を切らせている二年後女が「良かった」と言いながら息を整えている。
『結城君、確かに暴力は使っていない』
と呟く女が保証してくれた。いい奴だな。
『だけど転ばせて女子のスカート捲り、下着を堪能していた。』
ん、半分程合ってはいるが堪能もしていないし、わざと捲りあげたように聞こえるぞ呟く女よ。
『ふふ、太一?私があなたを心配してめんどくさい人に絡まれて大変な思いをしてまで駆けつけたのに、あなたは・・・・・・女子のスカートを・・・・・・ふふ』
般若バージョンの二年後女だ!
『待て。落ち着け、その顔は人に見せていい顔ではないぞ。にねんご・・・・・・グハァ!』
俺はそこでスキルの限界を知った。〈気配察知〉を持ってしても避けられないとは!
二年後女の右ストレートからの左のコンパクトアッパーのコンビネーションで俺は危なく倒れそうになったのを踏ん張る。
『パンツ見てパンチ食らう勇者』
呟く女が酷いことを呟く。
『それで?どうゆう状況?』
と何事もなかったかのように状況確認をする二年後女、呟く女が説明してくれている。
『なるほどね、まぁそれくらいは仕方がないかぁ』
と言いながら校門へと向かう。
校門の手前で隼人が待っていた。呟く女がまた説明してくれて、隼人は「あ~、また見逃した~」と騒いでいたが放っておこう。その後帰り道を教えて貰いながら俺は家へとたどり着いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
彼が奴等を弄んだのを見守り、平田さんと沢木さんと連れだって視界から去ったのを機に我に返った。
『凄かったですわ・・・・・・でも、事故で記憶がない?どういう事なんでしょう?』
と麗香は独り言を言ってしまっていた。
「お姉様に聞いてみるのが早いですわね」と頭の中で答えを出すと、志水さんと吉川さんに「今日は急用が出来たのでお先に失礼致します。」と挨拶をして結城家に向かう麗香であった。




