第27話 ある異世界勇者の始業式
俺は2年B組の教室に入る。まずは中の様子を確認する。ふむ、机と椅子がワンセットで個人の席になっているんだったな・・・・・・。机と椅子は縦6列×横6列の18個ある。俺の席は一番奥の窓側の一番後ろだったはずだ。教室は人がまばらにしかいない。少し視線を感じるが気にしない事にする。俺は自分の席の前にたった。
机には何か黒色のインクで「死ね」「学校クルナ」「チビ」等々、色々と書かれている。
『ふん、くだらんな。』つい声に出てしまったが、まぁ気にしない。椅子を引き出すと注意されていた画ビョウ等椅子には特に異常はなかった。俺は座り周りを観察することにする。隣の席には誰もいない、前の席は・・・・・・お?第一村人発見!じゃなかった。女が座っている。前の女は堂々としていて太一が座ってもこちらを一瞥もしない。次に右斜め前の席もまだいない。自分の席のすぐ近くの確認は終わった。ふと、扉の方を見るとまだ2年後女達がこちらを見ている。ん?いや、増えていた。呟く女だ!
俺はスタスタと扉の方へ歩き呟く女に声をかけた
『おはよう。どうした?』
『ん、勇者の登校。見逃せるわけない』
と呟いている。やはり呟くなこの女。
『そうか、楽しい事はないと思うぞ。お前達も、早く自分の教室に行ったらどうだ?』とだけ言って俺は席に戻る。
席に座り扉のほうをもう一度見ると呟く女だけが残ってこっちをジーっと見ていた。手を降りあっち行けとだけやっておく。暫くすると、段々騒がしくなってきて席も埋まってくる。隣にも人が来た。やがて鐘が鳴ると全部の席が埋まる。
前の扉から若い女が入ってきた。背は160届かないくらいか、顔は・・・・・・普通だな。髪は茶色の肩くらいだ。こいつがこの教室の教官って事か。
誰かの号令によって起立の声がかかる。俺はすぐさま立ち上がり姿勢を正す。一瞬のどよめきの後クスクスと笑い声が聞こえた。「結城~、ビビりすぎじゃね?そんなに素早く姿勢正されたら俺がいじめてるみたいじゃんかよ」笑い声が大きくなる。
(意味が解らんな、教官に対して始まりの礼儀を何故こいつらはタラタラと笑いながら行う?)
太一は周囲の声を無視、直立不動で立つ。やがて若い女教官が「静かに~」と手を叩くと「礼」という号令がかかる。俺はその号令にも即座に反応し素早く頭を45度下げて2秒数える、そして1秒かけてゆっくりと頭をあげた。
爆笑だった!まさしくだ。
何故か物凄い笑われている。
若い女教官までも笑っていた。
解せん。
暫くすると冷静を取り戻した若い女教官が「はい、座って~」と声をあげた。
椅子に着く。
まだ笑いが収まらないが若い女が話し出した。これからの事、夏休みの宿題の事、なんだか理解出来ない事を沢山言っていたが初めて聞いた言葉など理解出きるわけがない。気にしないでおこう。
やがて部屋の左前方のそれなりに大きいテレビから老年期の男が映り、喋り出した。この男が校長と言い、この学校を取りまとめている者か。俺は男の話を聞いていたが、教室の中はガヤガヤざわざわとそれぞれが夏の思い出を近くの席の者と話している。
ここでもまた俺は思う。
(こいつらは礼儀や常識を知らないのか?いや、知らない筈はないだろう若い女教官がこの36人の中隊には、着任しているのだ。では、何故学校長というこの場所で一番偉いであろう人物の話を聞かない?王国であったならば女であろうが子供であろうがその場で首をはねられるであろう。)
と並列思考で校長の話を聞きながら思っていた。
やがて校長の話も終わりテレビが消えた。若い女教官が声を挙げているが、もうざわざわ程度ではなく皆大きな声で会話しており、席を立つ者さえいる。若い女教官は必死で静かにさせようとしているが黙らない。
俺は静かに立ち上がり、机を手のひらで思い切り叩く!
乾いた大きな音がなり一瞬にして静かになる。
俺は椅子に腰をおろして若い女教官の言葉を待った。しかし声をかけてきたのは違う者達だった。
『おい!結城、テメエ何、机なんか叩いちゃってるの?うるせぇよ!』
『びびったじゃねぇかよ!ふざけんなよ!』
『夏休みの間に空手でも習ったか?ハハハ!』
と詰め寄ってきた少男3人組と、少女二人組であった。
はぁとため息をつき目を閉じてやり過ごそうとする
しかし彼らはよしとしない
『おい!結城!テメエシカトしてんじゃね~ぞ!』
『お前、ビビる位なら始めから調子のるんじゃねぇ~よ!』
『お前、夏休みに禅寺でも行って悟りでも開いたのか?ハハハ!』
と少年3人組
後ろに居た少女2人も
『何かっこつけてんの?バカじゃない?』『結城のくせに』
と色々と言っていたが太一はやり過ごそうとする。
『テメエ!マジでぶっ殺すぞ!』
と1人の少年が言う。
俺はこいつが命のやり取りをしたことが有るとは、到底思えない。
〔殺すと言う言葉を発したら、自分も殺される覚悟がなくてはならない。それから人を殺めたという事実と殺めた人を想う人々からの恨みも全て受け止める覚悟だ。〕
俺はそれを口にしようかと思った所で前の席の女が彼らに向かって
『皆さん、お席につきましょう。先生がお話できません。』
それを言われた少年少女5人組は悔しそうな顔をしながら最後に俺に言う
『結城!テメエ後で校舎裏な!』
『来なかったら明日倍だからな!』
『ハハハ!』
前の席の女が
『先生、どうぞ』
と言うと若い女教官が話し出す。
『堀田さん、ありがとう。では・・・・・・』
若い女教官の話が始まり、今日はこれで終わりのようだ。
俺は荷物をまとめて教室を後にしようとすると後ろから
『結城!何帰ろうとしてんだよ!』
『校舎裏に連行~』
『ボコッちゃうの?ハハハ!』
俺は一層深いため息を着いたのだった。
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