第23話 ある異世界勇者と迷子センター
ブックマークが15に戻りました~!
帰って来てくれたのか、新規に入れてくれたのかわかりませんがホントにありがとうございます!!
私は夏休みの間、この大型温水プール施設のアルバイトをしている。ここの施設は屋外に9つのプールと屋内に5つ、それと水着で入れる温泉があるアミューズメント型プールだ。
敷地面積もかなり広く聞いた話によると東京ドーム6個だか7個だか入る大きさらしい。いつも不思議なのは広さの比較で必ずと言って良いほど「東京ドーム」が比較対象で挙げられるが東京ドームの広さは一般常識って事なの?!と1人ツッコミをしている。
これだけ広いとかなりの迷子の子供が出てくる。私の配属された職場である「迷子センター」ここは毎日の如く熾烈を極めている。夏の終わりの夕方のニュース特番で海の家とかの迷子センターの様子をさも大変な事が起こった、やれ感動的な再会だ。などと色々放送しているが、私はそれを毎日経験しているのだ。
そして目の前には3人の少年少女。
『何故、ここから出てはいけないのだ!』
『奈菜なの!』
『勇者が迷子。・・・・・・ふふふ』
ぎゃーぎゃーと騒いでいる子供達。
騒いでいるのはまだましな方だ、泣き続けて会話にならない子供の方が対処に困る。と最初は思っていたのだが、これなら泣き続けている方がマシだったかもしれない・・・・・・と20分程前の事を思い出す。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私が迷子センターの自分の机に座っていると、先輩アルバイトの人が1人の男の子を連れて入って来た。
『後輩ちゃん、この子迷子みたいお願いね。』と言って男の子を置いて出ていった。小学校3、4年生くらいかな?
私はその男の子の前にしゃがみこみ、話しかける。
『僕?お名前と歳いえるかな~?』
『ん?お前、女なのに自分の事を僕と呼んでるのか?それに自分の名前と歳を人に聞いてどうする?バカなのか?』
ぽかーんとした私、おそらく人に見せられない顔をしていただろう。最初少年の言ってる意味がわからなかったが、意味を理解して「このガキ!」と思ったが、落ち着いて深呼吸!
『違うよ、お姉さんがキミのお名前と歳を聞いてるのよ』と優しく声をかける。この子も両親とはぐれてきっと悲しいはずなのだ。
『ふん、人に名前を聞くなら先ずは自分が名乗るのが普通であろう。無礼な女だ』
殺気の、いや間違えた。さっきの2倍くらいぽかーんとした私は「落ちた目」をはめて、外れた「アゴ」をはめて、まさしく笑顔を作り直した。
『そうだね、私は「真理」ってゆうの、キミの、お名前、教えてくれる?』
なるべく笑顔が崩れないようにゆっくりと語りかけた。崩れていないはず!
『俺の名前はマル、っと結城 太一だ』
まる?なんか疑問に思ったら面倒くさい事になる気がしてとどまった。
『太一君ね、歳はいくつかな?』
『25だ。』
『・・・・・・・』
面倒くさ
『ん~、お姉さんより歳上なんだね。じゃあ何年生まれかな?』
イライラなどしてないわ。うん。
『王国歴1069年だ』
はい!面倒くさい子決定。しかも過去最高かも
『んじゃあ、今日は誰ときたのかな?』
王国歴とか全てスルーだ
『肺のデカイ女と、女を見るとすぐに声をかける男と、二年後女に、イケメン・・・・・・』
『はい!ストップ!うん、わかった。質問変えるね。保護者の人の名前いえるかな?』私はうんざりしながらさえぎる。
『保護者とは?』
お?子供らしい質問きたー。
『えとね、キミの事を心配してくれて、色々してくれる人かな?』
なんか、「お父さん、お母さん」と聞いてはいけない予感がしたのよ。
『賢くて経験豊富な少女の事だな。』
ん?お姉ちゃんの事かな?
『その子と一緒に来てはぐれちゃったのね?』
ああ、通じてきた!会話って素晴らしい!きっと英会話覚えたての人はこんな気持ちなのかしら?
『まぁ、そうだな』
『じゃあその子を放送で呼び出すからその子のお名前教えてくれる?』
よかった。もうすぐこの不毛なやり取りも終わる、。普通の子供、もう泣き続けてる子供でいい!癒されたい。
『賢い経験豊富な少女でいい。』
ん?放送にそれを言えと?
『お名前の方がわかりやすいんじゃないかな~?』
『いや、それでいい。』
もういいや、やってやるわ。
ぴんぽんぱんぽ~ん♪
「迷子のおしらせを致します。
ただ今迷子センターにて25歳のゆうきたいちくんと言う男の子をお預かりしています。お連れ様の「賢い経験豊富な少女」様は、至急迷子センターまでお越しくださいませ。」
言ってやったわ!どうだ!このガキめ!
ふぅ~ふぅ~といきを荒げていると、しばらくして女の子二人が入って来た。
また迷子だろうか?
肩ひもと裾にフリルがついたオフショルダーのスカートタイプワンピースでピンクと水色の色違いチェック柄、お揃いの水着を着ている、こっちのくそガキと同じくらいの子達だった。
『やっぱり結城君。』
『お兄ちゃんなの!』
ん、関係者の迷子が増えただけだった。
『えとね、あなた達はゆうきたいちくんのお友達?』
『お兄ちゃんなの!』
『まだ友達ではないかも知れないけど、これから友達になれるかもしれないだろ? という関係』
ああ、うしろの子絶対面倒くさい。
『えっと、あなたお名前と歳は?』
ピンクの水着の子に聞く
『奈菜なの!』
『奈菜ちゃんね。歳は?』
会話になる。言葉のコミュニケーションって大事ね。
『奈菜なの!』
『七歳なのかな?2年生か。そっちの水色水着のあなたはお名前と年齢いえるかな?』
奈菜ちゃん七歳、首を斜めにして答える。うん、くだらない妄想はやめよう。
『私は、絵理奈。14歳』
うん、25よりはマシだけど14もないわー
130㎝そこそこしかないのよ?この子
まぁ、確かに小さい子はいるけども、ゆうきたいち君が25とか言ってるくらいだ。学校の流行りなのかもしれない。
『そっか、じゃあ保護者のかたのお名前わかるかな?』
『そこの賢い経験豊富な少女だと言っておるだろう!』
太一君が奈菜ちゃんを指差している。
はぁ・・・・・・
『一応迷子センターだから、大人の人が迎えに来ないと帰すことが出来ないの!』太一君に声を荒げてしまい慌てて取り繕う。
『奈菜ちゃんより大きくて太一君のお世話してくれてる人いないかな?』
と私が聞くと
『二年後女だな。』
ナニソレ?
私は今、迷子センターの放送マイクの前で人生の岐路に立っています。手元にはゆうきたいちくんが言った事を悪魔のような少女二人が纏めた原稿。何だか紫色の禍々しいオーラが見える。これを放送で読み上げてしまったら、私の何かが壊れてしまいそうで・・・・・・しかし、彼らはこれを言わないと保護者は来ないと言う。私は迷子センターのお姉さん!迷子の子供を親元に届けるのが仕事!
私は意を決してマイクのスイッチを入れる。
ぴんぽんぱんぽ~ん♪
「迷子のおしらせを致します。
東京都よりお越しの二年後女様、東京都よりお越しの二年後女様、ロキソニア王国の勇者様が二年後になら結婚してやる。早く迎えに来い。と迷子センターでお待ちです。至急迷子センターまで・・・・・・来て、グス、来てください。お願いします。私はもう無理です。」
最後涙声になんかなってないんだから。
ああ、何だか前が霞んで見えるな・・・・・・
すると物凄い足音と共に
チュアンピサ○イの水着 フリルをふんだんに使ってもはや造花を胸に付けているようなトップスに デニムシャツを胸の下で結んだ髪の長い綺麗な女の子が般若のお面、じゃなかった形相で飛び込んできた。
『バカ太一!こんな大勢いるところでなんて放送してるの!バカなの?アホなの?死ぬの?消えたいの?』
と恐ろしい発言をして少女と少年を抱えて出ていった。
お礼も言われない・・・・・・
あの夕方のニュースの特番の迷子センターの感動的な話は作り話なんだと私は悟った。
読んで頂きありがとうございます!
これからも頑張って書きますのでよろしくお願いいたします!




