第22話 ~回想~ある異世界勇者の初陣
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悲しい・・・ 現代に戻るので外した方戻って来てください~~!!
北側はゴブリン100匹以上の襲撃だった。マルクが村長の屋敷の前までたどり着いた時には既に村人は5人程しか残っていない。ボルタニアの警備兵は5人残っている。そのほかに先ほど助けた農村警備兵の3人が戦っていた。片腕の兵士はいなかった。マルクは取り敢えず中級治癒魔法の範囲回復魔法を起動する。回復速度は遅いが段々回復してくる所謂リジェネーションってやつだ。
マルクは敵影が一番厚めの所に中級風魔法の範囲攻撃を撃つ。竜巻が発生してゴブリンを5~6匹10m近く上空に巻き上げる。続いて初級火魔法の炎の矢を連続で撃つ。3~4匹倒せたか?警備兵達が段々押され気味になってくる。視界に村長の屋敷の方から人影が見えた、片腕の兵士だった。彼は剣を片手で持ち猛然とゴブリンへ切りかかっていった。
幾度倒しても次々と沸いてくるようなゴブリンに警備兵達は疲労の色を隠せない。村人が1人、また1人と倒れていく。そこへ1回り大きなゴブリンが現れた。こいつが親玉だろう。
マルクは1回り大きなゴブリンへ炎の矢を撃つ・・・・・・が 効いていない。魔力が少し心配だが中級火魔法の火の嵐を撃つしかないだろう。マルクが起動を始めると、村長の屋敷の扉が開いて少女がふらふらと出てくる。そこへ1匹のゴブリンが少女に向かって襲い掛かる。片腕の兵士は少女の方に向かおうとするがゴブリンとの鍔迫り合い中で動けない。マルクも中級魔法を起動中なので今動くと制御出来ずに暴走させてしまう。
「まずいな・・・・・・」マルクは考えた。このままでは少女はゴブリンに殺されてしまうであろう。中級魔法を起動中断なんかしたら辺り一帯が火の海だろう・・・・・・どうする?どうしたらいい?考えてる間にもゴブリンはもう少女の目の前であと数十cmの所だった。
『アン!逃げろ~!!』
片腕の兵士が叫ぶと少女は我に返ったかのようにハッ!とするがもう目の前にはゴブリン今さら逃げても間に合う距離ではない。マルクはまだ考えていた。どうにかできないか・・・・・・考えながら左手だけに中級火魔法を集中させる。右手には初級火魔法<炎の矢>を起動してみる。すると右手に炎の矢が起動された。
左手に炎の嵐、右手に炎の矢。ものすごい制御が難しいがやるしかない!右手をゴブリンへ向け炎の矢を撃つ、左手をゴブリンロードに向かって炎の嵐を放つ。ものすごい脱力感とともに2つの魔法は無事放たれた。
少女の腕を掴んでいたゴブリンの頭部に炎の矢が突き刺さる。ゴブリンロードにはちゃんと炎の嵐が当たっている。「やった・・・・・・うまくいった。」マルクは片膝をついて肩で息をしている。
少女は無事であった。片腕兵が切りあっていたゴブリンを蹴り飛ばして少女の元へ駆け寄る。
『アン!大丈夫か?くそ・・・・・・腕が、アンの腕が・・・・・・』
彼女の右腕が引きちぎられかけていた。片腕兵は剣を投げ捨て少女を抱える。
『私・・・・・・お父さんが心配で・・・・・・ごめんなさい。』
『バカだな・・・・・・俺の事なんかより自分の事を考えろ・・・・・・』
『だって・・・・・・お父さんまでいなくなったら、私・・・・・・』
そこへまたゴブリンが襲い掛かる。マルクは少女たちの方へ向かっているがうまく歩けていない。
とうとうゴブリンが親子の元へたどり着いてしまった。
片腕兵が少女を俺の方へ突き飛ばした。少女は俺にぶつかり俺は倒れてしまった。ゴブリンは片腕兵の頭に石斧を振り下ろす。少女が声の出ない叫びをあげている。
『治癒術士様・・・・・・せっかく治癒していただいたのに申し訳ありません。申し訳ついでに娘の、娘のアンを・・・・・・』
ガツン! 音と共に倒れた片腕兵
少女は泣き叫んでいた。
マルクは魔力ギリギリまで使って中級治癒魔法を左手に起動する。片腕兵の最後の頼みだ。彼女は必ず助けると決めた。彼女に中級治癒魔法を使いながら片腕兵の落とした剣を足で上空に蹴り上げて右手で掴む。
片腕兵に石斧を振り下ろしたゴブリンを右手1本で切り払う。泣き叫ぶ少女に向かってくるゴブリンも返す剣の勢いで切る。左手の治癒魔法の起動が完了した。少女腕に治癒をかける、右手で切り払う。少女の右腕の傷が塞がる。マルクは魔力枯渇だった。頭は完全に真っ白だった。だが右腕の剣はゴブリンを切る。
遠くで声が聞こえる、父上の声がきこえた気がした。そこでマルクは意識を失った。
『東は殲滅完了だ!警備兵南へいけ!騎馬3もだ!騎馬5そのまま村を突っ切り西を殲滅しろ!残りは私に続け!北を殲滅する!』
ハルクが声を上げる。騎馬20が戻ったのだ。
ハルクが北側へ着くとゴブリンロードが居た。
(ち・・・・・・だからこんなにも組織的に動けていたのか)
北側は熾烈を極めていた。大量のゴブリンの死体。立っている村人の姿はもうなく、農村警備兵が1人とボルタニア警備騎士隊が3人。離れた所に少女がマルクを抱えて座り込んでいる。
敵はゴブリンロード1匹とゴブリン20匹といったところだ。
『騎馬隊ゴブリンを殲滅!私はロードをやる!』
ハルクがゴブリンロードへ1騎駆けを仕掛ける。ハルクがゴブリンロードの横をすり抜け踵を返すと・・・・・・
ゴブリンロードは倒れていた。
それから2時間マルクは寝ていたらしい、起きるとベッドに寝かされていてそのベッドの縁に腕を枕にして寝息を立てている少女がいる。赤い長髪を高い位置で結んでいる。あの片腕兵の娘の少女だ。
寝顔を見てみるとどうやら大分泣いていたのか頬には涙の後があった。
マルクは少女を起こさないようにベッドから降り彼女にシーツをかけて部屋をでる。そこは村長の屋敷であった。ハルクが村長と何か話していた。ハルクがマルクに気が付くと声をかけてくる。
『マルク、もう大丈夫なのか?』
ハルクは心配そうに聞く
『はい。ハルク副隊長殿。戦場で意識を失うなどという失態、申し訳ありませんでした。』
『いや・・・・・・お前がいなかったら北側は抜かれていたであろう。警備兵と農村兵から事情は聞いた。』
『実は・・・・・・少女を助けたあたりから記憶が曖昧でして。』
マルクは恥ずかしそうにそう答えた。実際記憶がないのだ
『ふむ、私も聞いた話だから何とも言えないが、どうやらマルクお前は魔法を<並列起動>させたらしい』
ちょっと困ったかのように言うハルクに対してマルクが
『え?並列起動というと勇者が使うと言われているスキルということですか?』
『あぁ、お前魔法を同時に2つ起動したのであろう?どんな魔術師でも2つの魔法の同時起動などできないのだ。』
『確かに俺・・・・・・私は魔法を2つ起動させましたが普通に右手と左手に魔法を起動させただけですが?』
確かに右手と左手に別々に起動した。
『それが普通は出来ぬ事だというのだ。それから魔力枯渇状態からゴブリンを数十体剣で倒しているらしい』
『ええ?私がですか?少女を治癒した後魔力枯渇状態になり意識はありませんでしたが・・・・・・』
マルクは驚く、記憶が無い状態でゴブリンと戦っていたのか?!
『それは恐らくスキル<並列思考>だと思うのだ』
『並列思考ですか・・・・・・また勇者のスキルですね。』
『うむ、極限状態であったから身に着いたのかわからぬが、ボルタニアに戻ったら王都に呼ばれるやもしれんな』
『そうですか・・・・・・』
『まぁ・・・・・・とりあえず風呂にでも入って今日はゆっくり休め。』
『はい。失礼します。』
マルクは先ほどの部屋に戻りかけて少女の事を思い出す。流石に少女が寝ている部屋に入ってまたそのベッドに横になるのは気が引ける。どうしようか躊躇しているとドアが開き赤髪のポニーテールの少女が顔を出した。
『先ほどはありがとうございました。私なんかの為に・・・・・・あっ私は「アントニエッテ」と申します』
『私はボルタニア警備隊のマルクです。・・・・・・お父様の事、力及ばずすみませんでした。』
『お父さん・・・・・・父は村を守れて本望だったと思います。それこそ治癒術士様・・・・・・騎士様?』
『ああ・・・・・・今は治癒術士だよ、騎士隊の方に行きたいんだけどね。』
『あれほどの剣の腕前ですものね。すぐに行けるとおもいますよ。』
『はは・・・ありがとう。』
『お礼が言いたくて、看病させて頂いたのに私が寝てしまいすみませんでした。それでは私はこれで失礼させていただきます。命をすくって頂きありがとうございました。』
とたとたと走って出ていく少女アンリエッテを見送ってからマルクは部屋に入りベッドに横になった。
風呂に入らなきゃ・・・と思いながらまた眠りについてしまったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『以上が俺が生まれてから初陣までの話だな』
太一がふぅ~とため息をつきながら話し終える。
『へ~太一、向こうの世界では失礼じゃなくて紳士なんだねっ!!なんで私には失礼なんだろうね~?』
語尾が強くなったり、伸びたり忙しい2年後女だな と太一は思った。
『警備騎士隊!』
亮介はなんだかうれしそうに天井を見上げていた
『普通は勇者しか使えないスキル・・・・・・それがマルクは使えた』
絵里奈は色々思考を巡らせているようだ
『たいっちゃ~ん!そんなことよりそのアンちゃん、どうしちゃったの~?』
と下品な目をしながら太一を肘でうりうり~としてくる
『俺も気になるな』
将太である。
いつの間に?!とみんなが将太を2度見した。
『最初は部屋の外にいたの!でもメーディス大陸の説明の辺りではそこにいたの!』
と奈菜が言う
『開始7行?!』ハモったこえがきこえた。
『7行ってなんの事なの?お兄ちゃんはしゃべってたの!』
『まだ貴族じゃないの?アンタ』
と夏帆もいた・・・・・・
『わたしは~鮮血飛び散るバイオレンスって~あんまりすきじゃないかな~』
弘子が言う・・・
『そ~れで?アンちゃんは?惚れるフラグでしょ~』
『フラグ?よくわからんが、アンは両親が亡くなり独り身になってしまったので警備兵になるために帝都で2年修行してたな。』
『その場で物にしなかったの~?もったいな~~い。あれ?その割にその後の事詳しいんだね?』
と太一が首をかしげながら聞く
『ああ・・・・・・アンは俺の嫁だからな』
え~~~!?どよめく一同に
『その単語では架空の嫁になっちゃうの!』
あぁ・・・回想パートやっぱりだめだったのか・・・
読んで下さりありがとうございます。一生懸命頑張りますので
帰って来て~~;;




