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第0話 現代の・・・・・・

少し改稿いたしました。

時刻は夜10時、暦の上では夏の終わりから2週間もすぎた8月下旬この時間になっても全く気温が下がる様子もない熱帯夜、空を見上げても満天の星なんか見えやしない。

それはそうだこの場所は日本で一番夜が明るい都市、東京である。ここから見えるのは南西を見れば新宿の高層ビル群、南東には豊洲の高層マンション、東を見れば世界一高い自立式電波塔634mである。見下ろせば首都高速5号線、流石にこの時間になれば渋滞の多いこの路線も交通量は減ってきている。


見下ろせば。


そう、ここはビル屋上15階 地上からおよそ45mの場所である。そんな場所に同年代の少年より幾分小柄な少年、小学生と言っても間違いなく通用するであろう14歳の男子生徒が空を見上げ、都会の夜景を鑑賞し、高速道路を流れていく赤いテールランプを眺めているのだ。



少年は考える

毎日目が覚めて『おはよう。ごはんできてるわよ~。』とのんびりとした声で挨拶をする、いつでも僕の味方であってくれたあの優しい声の持ち主の事を


少年は考える

僕の学校が終わる頃にはすでに仕事を終えていて、僕を見つけると走り寄ってきて『ゲームで勝負しようぜ。今日こそ負けねぇ。』などと子供相手にいつでも何事にも本気で僕にぶつかってきてくれたあの強い声を


少年は考える

お兄ちゃん子で今でも僕の後ろをチョロチョロついてきては、甘えてくるあの可愛らしい声を


少年は考える

いつの頃からか全く会話が無くなってしまったがいつも習い事に一緒に連れて行ってくれ僕が迷子になった時にも一番に見つけてくれた最近では女性に近づきつつあるあの頼りになる声を


少年は考える

経営から退いてからはすっかり無口になってしまったが小さいころにはよく聞いていたあの怒鳴り声を


少年は考える

小学校3年生の頃に知り合い、同じ中学校になってからはほぼ毎日一緒に居たあの女の子が大好きでロクでもない、しかしとても寂しがり屋であった親友の声を


少年は考える

中学校入学と同時に遠くから転校してきた僕よりも背が低い女の子、物事をハッキリと判断し的確に発言してくる、だけれども誰よりも人を見ていたとっても小さなあの子の声を


少年は考える

中学1年体育の剣道の時に知り合い、しつこく剣道部に勧誘してきたあの大きくて正義感の塊、しかし考えなしに行動しいつも周りから注意されても強心臓で動じないあの大きな声を


少年は考える

産まれた頃からほぼ毎日顔を合わせていたであろう所謂幼馴染であるために毎日聞いていて教室に居ても廊下で話をしている声が聞こえただけでも彼女だと解ってしまうほどに聞きなれた声を


少年はこれが最後だとばかりにもう一度だけ夜の闇に沈むことのない都心の夜景を見渡す。その少年の表情からはどんな心情なのか読み取ることができない。


少年は進みだす、真っ直ぐに、ただ真っ直ぐ、やがて少年の足は虚空に向かって



まだまだ暑さが抜けない8月下旬の熱帯夜、満天の星なんか見えやしない日本で一番夜が明るい都市、ここはビルの屋上15階地上からおよそ45mの場所、そこには人影は無く東京の喧騒だけが遠くに聞こえていた……


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