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最下階層攻略(他者合流)

早くと言ってましたが遅くなりました、申し訳ないです。



 訓練の日々が終わり漸く迷宮に潜る事が出来た。

 一日丸々使い最下階層に降りる階段前まで着き、後は迷宮ボスが再出現するのを待つだけだったんだがアスリラから自分は死んでしまうのではないかと不安を聞かされる。

 不安を軽くするために俺が本気を出せば大丈夫だと言ったんだが、アスリラは言ったことを全部信じたみたいな感じだ。

 本当に全部信じた訳じゃないよな?

 別に俺の言ったことをアスリラが全部信じたからといって困る事はないが・・・・無いよな?









 


 アスリラの不安が解消した後は雑談をしながら見張りの交代の時間まで過ごし、見張りを交代してからはすぐに眠り、次の交代の時間まで過ごす。


 アスリラの誤解という訳ではないんだが俺が言った事を全部信じているのを何とかしたいんだが、今更、否定的な事は言えないので、そのままにするしかない。

 ―――どうしてこうなったんだ?


「暇だ~」


 夜の時間を過ごし朝の時間帯になると全員で食事をを取り、迷宮ボスが再び出現するまでは今、居る部屋で待っておかないといけないので、それぞれの方法で時間を過ごしていく。


 リーゼは無理が無い程度に訓練をしながら過ごしている。

 何度か模擬戦をお願いされたり悪い所は無いかと聞かれるので、模擬戦の相手をしたり分かる範囲で教えたりした。


 ラーネルは食事の準備と食器洗いをする時以外は瞑想をしながら殆ど過ごしているが、偶に俺の槍による突きについての質問をしてくるので、それを参考にした魔法の開発をしているのかもしれない。

 単純に風で突き刺すというのを再現するのは難しいように思うので工夫は必要だろう。


 アスリラは不安を解消したからか暗い顔をする事は無く、素振りなどの軽い訓練をしてからはハチで遊びながら過ごしている。

 まあ、それでも一日中だと疲れるのか飽きてくるのか愚痴を零したりしている。


 俺はリーゼ達に付き合う以外では自分の訓練と色々と過ごし易い様に部屋をいじってからは殆ど寝て過ごした。

 暇つぶしの何かを持って来れば良かったのかも知れないが、それだと緊張感が無さ過ぎるので止めておいたがアスリラのだらけ具合を見るに、持って来た方が良かったかもしれない。


 そして腹の具合からの推測になるが夕方ぐらいの時間帯に俺達以外の人が通路から現れる。


「―――俺はクラン〈迷宮の標〉のアコウだ! 俺のパーティと、もう一組パーティが居る! 部屋に入らせてもらうぜ!」


「ああ、分かった! この部屋に居るのは私達のパーティだけだ!」


 通路から出てきたのは二人組の男だ。アコウと名乗った男は俺達が居たことに驚いたのか少し固まってから部屋に二人組のパーティが入ると声を掛け来て、リーゼの返事に手を振ることで応えて通路に戻って行く、もう一人の男は俺達が居ることを不思議そうに見ていたがアコウに連れられて元の通路に戻っていく。


 確か〈迷宮の標〉は迷宮の案内と護衛を専門としているクランだったな。

 シビアの探索者が入ることを憧れるクランのひとつで、規模は大きくないが少数精鋭で迷宮の正確な地図と高い実力の探索者が居り、シビアの貴族が風習で下層部の入り口、二十一階層に降りる時に、よく雇われていると聞いたな。


 探索クランというよりは迷宮を専門とした護衛クランというのがというのがしっくりくる。


「ねえ、リーゼ。〈迷宮の標〉と一緒に来てるパーティって最下階層に挑むのに雇われた探索者か冒険者かな?」


「そうだろうな。〈迷宮の標〉は毎年、外から来たパーティを案内しているからな」


 アスリラとリーゼは、もう一組のパーティについて話し合っているがシビアの外から雇ったパーティで意見は一致している。


 シビアの外から雇ったパーティは最下階層、迷宮ボスの討伐のみやらせるみたいだな。

 〈迷宮の標〉や雇ったパーティの報酬などで色々と金が掛かっていそうだが依頼した貴族は利益は得られるんだろうか?

 それに今回は俺達が迷宮ボスを討伐する。かなりの損害がでそうだ。

 ……まあ、そこら辺は俺には関係ないよな。何かあってもアルナーレ男爵の問題だ俺が考える事じゃないな。



 リーゼとアスリラが話し合いを終えるとリーゼ達、三人から(洗浄)と(消臭)を掛けてくれとお願いされる。


 全く知らないだろうパーティに会うんだから身嗜みを整えたいんだろうが、リーゼは訓練で身体を動かして汗を掻いていたので分かるが、他の二人は特に汗を掻いていないので魔術を掛けなくてもいいのではないかと思う。

 まあ、そんな事を言えばデリカシーの無い奴だと言われるだろうから黙って(洗浄)と(消臭)を掛ける事にする。


 『ご主人様、来たでアリマス』


 (洗浄)と(消臭)を三人に掛け終わってから、少しするとハチが吠えると同時に念話で二組のパーティが近くまで来ていると報告してくる。

 報告を受けると同時に張っていた結界にも反応が出てくるが結界に接触すれば反応するだけの結界なので人数までは分からない。

 

「コウセル殿、ハチが吠えているが魔物が近づいて来たのか? それとも〈迷宮の標〉が戻って来たんだろうか?」


「あまり警戒はしていないんで多分〈迷宮の標〉だと思います。唯、何かの気配に気付いただけなんで他のパーティの可能性もあります」


「そうか」


 ハチが通路の方を見ながら吠えた事に疑問を覚えたリーゼの質問に答えながら視線をアコウと名乗った男と、もう一人の男が戻って行った通路に向け、他の三人も武器こそ構えてはいないが何時でも構えられるようにしてハチが向いている方に視線を向けて待機している。

 通路から二組のパーティが出てくるのを待っていると大人数の足音が聞こえてきて、アコウと名乗った男を先頭に総勢十一名の集団が部屋の中に入ってきた。

 部屋に入ってきた集団は俺達から離れた所で立ち止まり、集団から二人の男が出て来て話しかけてくる。


「今の時間だと今晩はでしょうか? 私は〈迷宮の標〉のサブマスターをしているロマシリアと申します。以後、お見知りおきをクートゥリーゼ嬢」


 ロマシリアは立派な口髭を蓄えたダンディという言葉が似合う剣士の男だ。

 今、部屋に着いたばかりというのに疲れた感じを見せず、柔らかな物腰でリーゼに話しかけている。


「今晩は、クートゥリーゼ・フォン・アルナーレだ。まさか〈迷宮の標〉のサブマスターに名前を憶えて貰っているとは思わなかったな」


「リディアの迷宮に関わっている者でクートゥリーゼ嬢を知らない者は外から来て日が浅い者ぐらいでしょう」


 そうなのか。リーゼ達は目立つだろうと思っていたが知らない奴は居ないというほどの知名度が有ったのか。

 リーゼ達に会った時期はシビアに来てから、まだ日が浅かったし、クラン〈勇猛の穴熊〉のパーティと争いになりかけて迷宮内での暗黙の了解などを調べていたから探索者の事などは聞いていなかったんで知らなかった。


 リーゼはロマシリアから話を聞いて驚いているがアスリラとラーネルは知っているのか驚いてはいない、自分達が目立っているという事に自覚が有ったんだろう。

 初めて遭った時にラーネルが以上に警戒していたのって、知らない相手という事と噂を聞いて近付いて来た奴だと思たのかもしれないな。

 それならあの警戒も納得できる……のか? まあ、過ぎた事だから良いか。


「クートゥリーゼ嬢、私達が依頼で案内して来たパーティのリーダーを紹介したいのですが宜しいですか?」


「ええ、お願いします」


 ロマシリアが一緒に来ていた男に自己紹介をするように促し、男が自己紹介を始める。


「初めまして。僕、じゃなくて、私は〈黎明の剣〉のパーティリーダー、ラルベルグと言います」


 ラルベルグと名乗った男は貴族が相手という事だからなのか、緊張しているみたいだ。


 ラルベルグの姿は動きやすそうな鎧姿で長い金髪を後ろで一纏めにしている、こちらも剣士で美男だ。

 迷宮ボスを討伐する為に雇われているんだから実力の方も高いんだろう。努力もしているんだろうが色々と恵まれているよな。


「初めまして。私はクートゥリーゼ・フォン・アルナーレだ。言葉遣いが悪いからといって不敬だと言うつもりはない、だから、そんなに緊張しなくても良い」


「は、はい」


 俺の時は堅苦しい言葉遣いをしなくても良いと言っていたが、今回は気にしない、というだけで丁寧な言葉遣いをさせるんだな。

 多くの他人が居るからかな。特に〈迷宮の標〉は貴族ではないがシビアでは大きな力を持ったクランだ隙を見せる訳にはいかないんだろう。


「さて、パーティリーダーだけですが自己紹介も終わりましいたので、クートゥリーゼ嬢、お聞きしたい事があるのですが宜しいですか?」


「ああ、なんだろう?」


「その、クートゥリーゼ嬢は最下階層、迷宮ボスに挑むために、ここまで降りて来られたのですよね」


「その通りだが、それがどうかしたのか?」


 リーゼの返事を聞いたロマシリアは苦い顔をして横で聞いていたラルベルグも戸惑った顔をする。


「クートゥリーゼ嬢、大変失礼だとは思うのですが怒らずに聞いて頂きたい。貴方のパーティで迷宮ボスに挑むのは無茶ではありませんか」


 ロマシリアの言葉を聞くとリーゼの顔をムッとした感じに歪む。


 口調こそ丁寧だが迷宮ボスを倒すのは無理だと真正面から言われたんだ、リーゼの機嫌が悪くなるのは分かる。

 リーゼも三ヶ月丸々とはいかないが迷宮ボスを倒すためにパーティメンバーと一緒に俺の指示のもと訓練をして来たんだ、最初の頃の希望的なものではなく、強くなった事での確固とした自信がある筈だ。

 それを知らないとはいえ正面から頑張りを否定されたんだ機嫌も悪くなるだろうな。


「勿論、クートゥリーゼ嬢がお強いのは分かっていますし、魔法使いであるラーネルさんが居る事も知っています。

 最下層部をソロで活動している『犬飼』も居る事も知っていますが、戦力になるのは三人だけでアスリラ君は戦力というには実力が足りないでしょう。

 実質三人だけで挑むのは無謀です。考え直してはいただけませんか?」


 リーゼ達のパーティは有名なので色々と知られているのは分かるが、俺の事まで知っているんだな。

 力の強いクランだけあって高い情報収集力を持っている。今回の俺達が最下階層の攻略に乗り出した理由も知っていても、おかしくないな。


「考え直す必要なんてない。私達なりに勝算があるから挑むんだ」


「あの、私も止めた方が良いと思います。今回の依頼に私達のパーティが選ばれたのはパーティメンバーが五人で職業の方も充実しているからです。

 他にも同じランクのパーティもいましたが人数だったり職業などを考えた上で無理だと判断されてギルドも依頼の話はしていないそうです」


「ラルベルグ殿は、私達のパーティが自分のパーティより劣っているから、迷宮ボスに挑むのは止めろと言いたいのか」


「いえ!? そんな事は有りません! 僕は、ただ…えと…」


 ロマンシアから迷宮ボスに挑むのを考え直してはという意見をバッサリとリーゼが切り捨てるが、そこにラルベルグも止めた方が良いと説得に加わって来るがリーゼの機嫌が余計に悪くなっていく。

 ラルベルグの言い方も、どうかと思う所が有るがリーゼの受け取り方も悪すぎる。

 ラルベルグの口調から悪意の有る言い方ではないのは分かる筈なんだが、無理だと言われたのが、そんなに腹が立つんだろうか。


「クートゥリーゼ嬢、お怒りを抑えていただけませんか。彼も決して馬鹿にしている訳ではないのです。唯、彼は貴方達の心配をしているだけなのです。そして私もです」


「はぁ。心配は有難いが、だからと言って迷宮ボスに挑むのを止めるつもりはない。挨拶は終わったので失礼させてもらう」


「待ってください、クートゥリーゼ嬢。もう一度考えてはいただけませんか―――」

 ―――少し、しつこくないか?


 リーゼが溜め息を吐いて怒りが少し治まり冷静になったのか話を終らせて、その場から離れようとすると、ロマンシアが引き留め迷宮ボスに挑戦するのを止める様にと説得している。


 ラルベルグは焦りと緊張した顔をして黙り込んでいるので何も無いんだろうが、ロマンシアは心配そうな表情をしながら、しつこく迷宮ボスに挑戦するのをやめるように説得してくるが、ここまで、しつこいと心配以外の別の何かが有るんじゃないかと感じる。

 ロマンシアの表情こそ心配そうなモノだが、有力クランのサブマスターだ腹芸の一つや二つは難なくこなせるだろう。

 心配以外で迷宮ボスの挑戦を止めさせよとしている理由は簡単に思いつくのは〈迷宮の標〉を雇った貴族が利益を(実際は違うが)奪われない様にする為か、それか〈迷宮の標〉が雇った貴族を満足させるためにリーゼに止めるように説得しているという所かな。


 まあ、どちらでも、そうでもなくても止めるという選択は無いから考えるのは良いかな。

 それよりも、そろそろロマンシアの説得を止めないといけないんだが、ラーネルに止められないかな? ラーネルは元々、最下階層の攻略に反対だった、止められる可能性もある、どうするかな。


「コウセルさん、少し良いですか」


「はい、どうかしましたか」


 これから、どうするかと考えている所にラーネルから話掛けられる。


 迷宮ボスに挑むのを止めようとは言わないよな。


「あれ以上、ロマンシアさんと話しているとリーゼの機嫌が悪くなるばかりです。止めさせる事は出来ますか」


 ロマンシアを止めていいのか?

 ロマンシアの説得に便乗して迷宮ボスに挑むのを止めさせようとすると思ったがラーネルから、ロマンシアを止めるように言って来るのには驚いた。


「良いの? ネル。ネルからすれば止めるチャンスだよ」


 暇なのかハチを抱えたアスリラが話に入って来るが、そこを突っ込むな。

 やっぱり、リーゼを止めますと言い始めたら、どうするんだ。


「どんな理由であれ、今、迷宮ボスに挑むのを止めればリーゼとアルナーレ家、両方にとって汚点となります。ここまで来てしまったら止める訳にはいきません」


「え、何で?」


 アスリラが止める事の何が汚点となるのか疑問に思ったのかラーネルに訪ねるとラーネルが説明を始める。


 どんな理由であれ敵対している者から退くことが問題らしい。

 今では殆ど忘れられていたり、守られていないが、民を守るという貴族の義務上、敵が強いからと退くのは問題が有る。

 もちろん場合によりけりだろうが今回は自分達から挑もうとしているのに直前に止めたというのが不味い。

 リーゼ個人では騎士になろうとする者が敵対者から逃げるというのは騎士になる資格は有るのかと問題にしてくる奴が出てくるかも知れない。


 秘密にすれば良いのではないかと思うが、ついうっかりと漏らした仕舞う可能性もあるし、〈迷宮の標〉は、これをネタに強請って来る可能性、強請って来なくても何かあった時に持ち出して来る可能性が有る。

 その為、極力、弱味を見せたり、汚点を付ける訳にはいかないそうだ。


「理由は分かりました。それで俺が止めに行くのは臨時のメンバーだからですか」


「はい。コウセルさんは一時的に私達と組んでいるだけで本来はパーティ外の人です。混乱を避ける為にリーゼの指揮に入っている事になっていますが、探検者としては対等な立場です。

 今、リーダー同士の話し合いをしている場に入るなら、私やリラよりもコウセルさんの方が良いでしょう」


 あくまでマシていうレベルかよ。

 行かないという選択は無いんだが説得を止めさせて〈迷宮の標〉に逆恨みされないと良いんだが。


「でも、コウセルはロマンシアさんを止める事出来るの? リーゼ相手にあんなにしつこいよ」


「そこはプライドを少し突けば止める事は出来ると思いますから、大丈夫ですよ」


 ただ単に大丈夫だと言っても止めない感じだから別の所を攻める必要がある。

 一応、攻める所の目途は有る。これで止めないならどうしようもない。

 この場でロマンシアに納得してもらわないと後々、面倒になりそうだが仕方がないが無視するしかない。


「そうなの? なら良いんだけど。止めるの頑張ってね」


 アスリラが抱えているハチの前足を手で持って振りながら見送り、ラーネルは軽く頭を下げながら、ハチは気楽な感じで「お願いします」『ご主人様、頑張ってでアリマス』と俺を送り出す。


 気楽に言ってくれる。もう少し心配してくれても良いんじゃないか?


 多少、二人と一匹を恨めしく思いながらリーゼの所へ向かう事にする。



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