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最下階層攻略(不安)

やっと投稿する事が出来ました。

遅くなったのに物語があまり進んでいません。

次話はもう少し早めに投稿して物語を進めて行きたいと思います。



 漸く訓練の日々が終り、最下階層を攻略の為、迷宮に潜り始める。

 まだ最下階層には着いてはいないが二回ほどミノタウロス数体と遭遇し、戦闘をする事になったが、その時にリーゼ達の訓練の成果をミノタウロスを相手に確認する事ができたのは良かった。

 万全の状態で然程、苦労する事なく普通のミノタウロスを倒す事が出来ていたので、迷宮ボスのミノタウロスも作戦通り俺が攻撃を防げば後はリーゼ達が倒してくれるかもしれない。


 もう、かなりまずいレベルで魔術等の力を三人には見せているので、これ以上は力を見せるのは勘弁したい。

 毎回、秘密にしてもらうために暗示系の魔術を使う訳にも行かないので楽が出来るのは助かる。


 さて、倒したミノタウロスから素材を取ってから最下階層を攻略する為に移動を再開しよう。











「改めて、コウセル殿の強さを確認する事ができましたが私達とは格が違うな」


 アスリラが相手にしていたミノタウロスを倒し終わると援護に来ようと走っていたのか、スピードを落としながら、こっちにリーゼがやって来る。

 近くまで来たリーゼの表情は少し悔しそうなものだ。


 改めて力の差を自覚してショックでも受けているんだろうか。

 肉体はともかく、精神はリーゼの二倍近く生きているんだ簡単に差を縮められたらたまらない。

 差を縮められるにしても、もう少し彼女には頑張って貰おう。


「確かにミノタウロスを簡単に倒しちゃんだから、もうコウセル一人だけで良いんじゃないかな」


 戦闘が終了したからか緊張が抜けた顔でアスリラが軽口を叩いて来るが、幾分か本気で言っているように感じる。

 本当にそう出来れば余計な苦労をしなくても済んだんだが、儘ならないもんだ。

 

「あれくらい出来ないと迷宮ボスを倒すなんて言えませんよ。それと今回は迷宮ボスを倒す事で得られる名誉をリーゼさんに手に入れて貰うのが目的ですよ。俺一人で倒しに行くわけにはいかないですよ」


「一人では倒せないとは言わないんですね」


 さっきの戦闘では魔法が上手くいかなかったのか一人で考え込んでいたが、今回の戦闘は上手くいったのか考え込むことをせずラーネルが話に入ってくる。

 俺の言った言葉が傲慢に聞こえたのか、ラーネルの表情は少し不愉快そうだ。


 命の危険が有るのに最下階層の攻略に同行しているのに、一人でも大丈夫だと言われたら良い気がしないのは分かるが、もう少し優しくしてくれても良いんじゃないだろうか。

 本当にラーネルからは嫌われているな。


「迷宮ボスのミノタウロスを見ていないので、はっきりしたことは言えませんが、普通のミノタウロスで武器を持っているだけなら一人で倒す自信はありますよ。

 でも、迷宮ボスのミノタウロスは多分、普通のミノタウロスよりもきっと身体能力は高いでしょうから、ラーネルさん達が一緒に来てくれて本当に助かります」


 本当に助かっている。戦力的な意味では無くて対外的なモノだが。

 一人で迷宮ボスを倒して戻ってきたら、一体どうなっていたか。絶対にジッフル男爵より、ややこしい高位の貴族が出て来ただろうと予想できる。


「任せてくれ、コウセル殿。迷宮ボスのミノタウロスが普通のモノより強くとも私達なら倒せるさ」


「ラーネルも居るし、なんとかなるのかな」


「全力でやらせていただきますが、危なくなったらみんなで撤退しますよ」

 

 見事に三者三様、態度がバラバラだ。


 リーゼは頼られた事が嬉しいのか緩む顔を必死に引き締めようと顔をピクピクさせており。アスリラは自分が戦力的に不足していると思っているのか、魔法使いのラーネルが居れば何とかなるかと困惑した顔で他力本願な事を考えている。

 ラーネルは元々、最下階層の攻略は反対していたからか憮然とした態度で攻略よりも安全を重視している。


 これは下手に苦戦しているような所を見せるとラーネルが撤退を指示し、アスリラは、すぐに応えて撤退をするだろう。

 そうなればリーゼも二人が抜けたからと撤退する筈だ。俺が実際は大丈夫だとしても関係無い。

 迷宮ボスとの戦いでは魔術が使えなくても大丈夫とは思うが気を付けないといけないな。






 倒した三体のミノタウロスから魔核と素材取り出し迷宮を潜るのを再開する。

 他の探索者達は、まだ三十六階層には来ていないのか遭遇する回数が増えていき、何度も戦闘をする事になったが新調した装備を慣れさせるのと対迷宮ボスの連携の確認、練習が出来たので丁度良かった。

 途中で何回か休憩を入れつつ約一日かけて漸く、四十二階層の下に降りる階段の有る部屋に辿り着く。


「疲れた~」


「お疲れさま」


 階段の有る部屋に居た五体のミノタウロスを全部仕留め終わるとアスリラは地面に座り込む。

 休憩しながたとはいえ一日中、薄暗い洞窟を移動しながら戦闘をするんだ肉体的にも精神的にも疲れるだろう。


「地面に扉が有るのと他の部屋より広いだけで変わりはないんだな」


 戦闘が終わり、落ち着いて部屋を見回せるようになったからかリーゼが部屋の感想を漏らす。


 確かに今、居る部屋は他よりも広いだけで他とは変わりは無い。

 前世で複数の迷宮に転移装置を設置しに行ったが、そこでも変わっている所も、あれば変わらない所もある。

 多分、迷宮を作っている迷宮の主(ダンジョンマスター)に因って違いが出てくるんだろうが、リディアの迷宮は他の迷宮と比べて規模の小さい迷宮だ、だから迷宮の主(ダンジョンマスター)の嗜好と言うより、違いが出てくる前に迷宮の主(ダンジョンマスター)が討伐され迷宮の成長が止まったのが原因だろう。


 本当ならリディアの迷宮は、もっと迷宮を成長させて大きくしてから迷宮の主(ダンジョンマスター)を討伐して成長を止める予定だったそうだが。

 昔、何処かの誰かが勝手に迷宮の主(ダンジョンマスター)を討伐してしまったそうだ。

 幸い、迷宮は唯の洞窟(枯れた迷宮)にはならず、成長が止まった(止まった迷宮)なったので良かったが、それでも当時は大きな混乱が起きて内乱一歩手前まで国が荒れたらしい。

 何処かの誰かという曖昧な表現をしているが内乱が起きかけたんだから大貴族の身内が迷宮の主(ダンジョンマスター)を討伐して、その身内を当主が庇ったから国が荒れたんだと思っている。


 過去、しかも俺が転生する前の話だ。今さら何を言っても変わらないが余計な事をするなよな、と思わずにはいられない。

 普通の規模の迷宮なら魔術を研究する材料も事欠かなかっただろうに。残念だ。


『お疲れ様でアリマス』


「コウセルさんでも流石に疲れますか?」


「えっ?―――まあ、疲れてはいますけど、まだまだ動く事は出来ますよ。そんなに疲れたように見えましたか?」


「はい、元気の無い顔で溜め息を吐かれていましたから。違うんですか?」


 俺の傍まで来たハチには念話で労わってきたので『ああ』と念話で返し、一緒に傍まで来ていたラーネルに疲れたのかと心配されたので大丈夫だと返事したが、そんなに元気の無い顔をしていたんだろうか?

 ……してたかもしれないな。転生してから魔術の研究なんて一度もしていない、しかも出来る可能性が有ったのに、どっかの馬鹿のせいで、その可能性は潰れている。


 ―――ハァ~、もっと自由に動きたい。






 倒した五体のミノタウロスから素材と魔核を取り、いつもなら死体は、そのままにするのだが今回は、今居る部屋で約一日、迷宮ボスが現れる時間まで過ごさないといけないので地面を掘りミノタウロスの死体を埋める事にした。

 

 その後は時間的に夜になるので食事と睡眠を取る事にしたんだが。

 食事は魔法の鞄(マジックバック)が有る、お陰で食材と調理道具を持ってこれるので暖かい料理を食べることが出来た。

 魔物の素材や魔核を全部回収することも出来るのでシューバから魔法の鞄(マジックバック)を借りて本当に良かった。


 さて、睡眠の方はハチが居るので全員寝ても大丈夫と言ったんだがリーゼ達はハチでは不安なのか二人一組で見張りを立てて、交代で睡眠を取ることになる。


 ハチは信用されないことが不満で念話で『不本意でアリマス!』と俺に文句を言い、リーゼ達には吠える事で抗議をするが、姿がダックスフンドに似ているせいか、勇ましいというよりは可愛らしいという感じしかしない。

 実際はミノタウロスと戦える程の力を持っているが、それを教える訳にはいかないからな。


 俺も感知の結界を張っているので抜かりはないが、それを知らないリーゼ達は安心できないので見張りを立てないと安心して寝る事は出来ない。

 面倒だが俺はアスリラと一緒に交代の時間が来るまで見張りをする事になる。


 見張りを始めてそれなりに時間が経つが何も起こらない。聞こえる音はリーゼとラーネルの寝息ぐらいだ。

 アスリラは疲れているのか、見張りを始めてから元気の無い顔でハチを抱きかかえて喋ること無く座り込んでいる。


 このまま、交代の時間まで時間が過ぎると思っていたが唐突にアスリラに話しかけられる。


「ねえ、コウセルはさあ。不安になったりしないの。迷宮ボスと、Bランクの魔物と戦うんだよ」


「う~ん、特に不安に思ったりはしないな」


「そうなんだ。私は……すごく不安」


 簡単に答えすぎたかな。でも、俺も不安だと言うと余計にアスリラが不安になりそうだしな。


 アスリラは感じる不安を紛らわす為か抱きかかえているハチを強く抱きしめて俯いてしまう。


 抱きしめる力が強いのかハチが『く、苦しいでアリマス。ご主人様、助けてでアリマス』と念話だけで話して来る。

 普通の犬のように鳴かず、念話で訴えてくるのはアスリラことを思って何だろうが、それでも苦しいのかハチが俺に助けを求めてくる。


 アスリラが本当に不安に思って重い空気の筈なんだが、ハチの助けを求める声で、どうも脱力というか空気が軽く感じてしまう。

 アスリラをこのままにしておく訳にはいかないが、脱力したまま話す訳にもいかない。ハチには悪いが少し黙っててもらおう。


『悪いハチ。少し黙っててくれ』


『うぅ、了解でアリマス』


 しぶしぶながらハチは黙ってくれたが恨めしい視線を向けてくる。


 犬の顔まんまなのに顔を見ただけで気分が分かる。表情が豊かなヤツだ。

 今度、ブラッシングなんかをして機嫌をとってやらないといけないな。


「迷宮ボスと戦うのが不安だ、て言うけど特に何を不安に感じるの、やっぱり迷宮ボスへの挑戦が失敗するかもしれないのが心配なの?」


「挑戦が失敗する心配はないかな。只ね、私は生き残れるかな、と思って。

 ネルは魔法で迷宮ボスから離れた所で攻撃をするでしょ、リーゼは近づくけど動きが阻害されない程度に鎧を着てるから多少なら大丈夫だと思う。けど、私はさぁ、鎧も着ずに近付くことになるんだよ、一回でも攻撃を受けたら多分、死んじゃんじゃないかな」


 アスリラの言っている事は殆ど間違いはないと思う。ただ、リーゼに関しては鎧を着ていたとしても迷宮ボスのミノタウロスが持つ戦斧は大きな質量を有した物だろうから少し疑問に思う。

 まあ、ここで何を言っても意味がないので流していくが、それより気になる事がある。


「迷宮ボスのミノタウロスを見た事が無いから何とも言えないけど、そんな事にならない様に俺が正面から抑える事になってるだろ。というか俺に対しては何に思わないの」


「え! コウセル?……コウセルに関しては何も思わないかな」


「ひでぇ、ちょっと冷たくないか」

 ―――あれ? 俺、アスリラから嫌われていたのか。


「ああ、違う違う。コウセルは心配する必要が無いと思っているの。想像が出来なんだよね、コウセルが怪我したり死んだりする所なんて。きっと何があっても、コウセルだけは怪我無くケロってしてそうなんだもん」


 確かにBランク程度の魔物なら余程、特殊な力が無い限りは油断しなければ死ぬ事も怪我をする事もないだろう。


「それにコウセルは、訓練の時もそうだけど、迷宮に潜ってからも本気になった事は無いでしょ。私達が必死だけどコウセルは何時も余裕が有るように見えるよ」


 魔術を使わないだけで、かなり力を抑えてる、つもりだったが他の部分も、もう少し加減しないといけないかも知れないな。

 魔術師と名乗る以上は、ある程度、目立つ事になるだろうが珍しいではなく使える奴だと思われると面倒くさい今後は、そこら辺も考えないといけないな。


「別に手を抜いてる訳じゃないぞ」


「それは分かってるよ」


 一応、手を抜いていると勘違いされているのかも知れないので否定はしておく、アスリラも特に手を抜いている事を疑っている訳では無いみたいで、少し笑いながら納得してくれる。


 少し気が楽になったからか笑みを浮かべてはいるが、それでも、まだ不安が解消、軽くなった訳ではない。

 

「アスリラさんの心配事は一応、分かった。何かあったら俺が何とかするから、俺を頼ればいい」


「いや、まあ十分に頼りにさせてもらうけど自分の事で手一杯じゃないの?」


「それでも本気を出せば何とかなるよ。俺の魔力量はBランクだからな」


 基本的に魔力量のランクと魔物のランクが同じなら一対一で戦っても倒す事が出来ると言われている。

 実際は色々と制約などが有るので、その通りに行くわけではないが今回はアスリラの不安を軽くするには役に立つだろう。


「えっ、そうなの? でも、まだ起きていな分の魔力もあるでしょ?」


 特に魔力量のランクについては話していなかったせいかアスリラに驚かれ、魔力が目覚めていない分が有るだろうと疑問に思われる。


「俺は、もう全魔力、目覚めてるよ。魔術を覚える過程で全魔力を目覚めさせる事が出来るからな」


「ど、どうやって?」


「魔力の感覚を掴む精度を上げていけば良いんだよ。魔力操作の訓練より地味で成果も、やり遂げるまで殆どないけど」


「ああ、それは私には無理だ。魔力操作より地味なら途中で絶対止めちゃうな」


 まあ、そうだろうな俺でもやり切る自信は無い。

 そういった問題や成果が出るまでの時間を短縮するために地球では紫色のドロドロとした毒薬じみた霊薬を飲む事になるんだが、これも単純に良いとは限らない。

 この薬を使うと、とにかく酷い目に遭う。


 あの激痛と不快感は最悪だ―――親の前で逆らえないほどの醜態をさらすハメにもなるしな。


「どうしたの、いきなり溜め息なんてついて」


「いや、昔の訓練の事を思い出しただけだよ」


「ああ、やっぱりしんどい訓練なんだね」


「ん、まあ……そうだな」


 アスリラが勘違いをしているが訂正せずに頷いておく。前世とはいえ自分の醜態なんかを話したくないからな。


「俺の昔の話は置いておくとして、Bランクの魔力量の俺が本気を出せば軽く迷宮ボスを倒して無傷でケロッとしてるよ」


 気楽そうに迷宮ボスの事は何の問題も無いように言うと、アスリラは目を丸くしてからクスクスと笑い始める。


 面白い事を言ったつもりはないんだけどな。


「―――そっか、そっかコウセルからすればBランクの魔物なんて問題じゃないんだね。そっか、コウセルからすれば私達は本当におまけでしかないんだね」


 いや、ある程度、不安を軽くするために言ったんだが丸々信じたのか? そんな事は無いよな? 軽い冗談の類だっていうのは分かってるよな?

 まあ、本当にアスリラ達はおまけに過ぎないし、Bランクの魔物も問題じゃないけど。


「それじゃあ、何かあればコウセルを頼らせてもらうね。私を守ってね」


「お、おお、任せてくれ」


 今更、否定的な事を言う訳にいかないので頷いておく。


 アスリラにどう思われているかは分からないが少し失敗したかも知れない。


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