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最下階層攻略(模擬戦)

やっと更新できました。

もっと早く更新したいのですが、なかなか時間が出来ません。

もうちょっと早く更新できるように頑張ります。



 俺の指示を聞かないラーネルをどうにかして言う事を聞かすために魔術か、魔法のみで模擬戦をする事になった。

 勝敗については彼女の腕前ではどうあっても負ける気がしないので、どうでもいいのだが、その後が問題だ。

 明らかに下に見ていた人間に負ける。言い訳のしようのないように圧勝するつもりだ。心が折れなければ良いんだが。










 十メートルほど離れてラーネルと対峙する。表情は険しいままで俺を睨んでいる。


「本当に模擬戦をするつもりですか。魔術師が魔法使いに勝負を挑むなんて無謀ですよ」


「勝つ自信が無いんですか」


「――どうなっても知りませんよ」


 少し馬鹿にするように言うとラーネルはさらに怒りを募らせた表情をして一言だけ返し黙り込む。


「そ、その二人とも良いか? どちらかが降参するかアスリラと私どっちかが勝負がついたと判断したら、そこで模擬戦は終了だ。良いな」


 俺とラーネルの会話を聞いて表情が引きつるリーゼが開始の合図を出す前にルール確認を言いよどみながらもしてくる。


 リーゼとアスリラ、ハチは模擬戦の巻き添えを喰らわないだろう位置まで離れ心配そうに見ている。

 いや、ハチは顔を犬なので良く分からないが力量差がある事を知っているので多分のほほんと見ているだろう。


 それぞれリーゼの確認に「はい」と返事をしてからラーネルは片手で持っている杖を前に出し、杖の頭を前に出すように傾けて構える。

 俺の方は槍を置いているので素手で右腕だけを前に突き出して特に構えずに開始の合図を待つ。


「それでは……始め!」


 リーゼの開始の合図が出るとラーネルが詠唱と共に魔力を杖に込めようとする。

 訓練を始める前と比べると魔力の流れが良くなっている、これなら素早く発動させたり威力を上げる事が出来る。が、俺からすればそれでも遅いし弱い。


 突き出した右腕から無詠唱で(投石)を放つ。


「!?」


 先に攻撃をされるとは思っていなかったのか目を見開いてラーネルが驚くが(投石)を横に飛ぶように避け地面を転がる。


 一応、訓練の成果が出ている。訓練をし始めた頃なら(投石)に気付いても反応しきれず受けていただろうが避ける事が出来ている。 

 贅沢を言うなら地面に倒れることなく、俺の魔術を避けて欲しかったが仕方がないか。


 再び(投石)を放ち、うつ伏せで地面に倒れているラーネルに攻撃を仕掛けるがラーネルは「風よ」と詠唱して魔法で風を吹かせ、その力を利用して後ろに跳び、飛んでくる(投石)を避ける。


 「ま、待ってください、コウセルさん。貴方は魔法使いだったんですか」

 ―――はぁ? 何を言ってるんだ?

 

 体勢を崩すことなく着地したラーネルは困惑した表情を浮かべながら慌てた感じで魔法使いなのかと質問をしてくる。

 多分だが無詠唱で魔術を使ったから魔法使いと思ったんだろう。魔術は魔術言語を詠唱しないと使えないと思われているみたいだし無詠唱は魔法の高等技術という事になっているからな。


 今は模擬戦の途中だ、普通ならラーネルの質問を無視して模擬戦を続けるが今回は質問に答えるか。

 今、答えなくても後々答えを求められるだろうし、今、答えてそれで俺が上だと認めてくれればそこで模擬戦は終わる。まあ、素直に認めてくれるとは思わないが。


「違いますよ。俺に魔法の適性はありません」


「ですが今、無詠唱で魔法を使ったじゃないですか」


 やっぱり無詠唱で魔術を使ったから俺を魔法使いと思ったのか。


「何で魔術を無詠唱で使ったと思わないんですか」


「魔術を無詠唱で使えるなど聞いた事がありません。それに初めて会った時に水を出すのは詠唱してたじゃないですか」


「魔術を無詠唱で使える事を知らなかったのはラーネルさんの勉強不足で、初めて会った時は変に目立ちたくなかったから詠唱して魔術を使っただけですよ」


「……」


 強いショックを受けているな。

 質問の答えを告げるとラーネルの表情は酷くショックを受けて呆然としている。


 現在は知らないが前世では魔術師が無詠唱で魔術を使うとモータルセンヌの魔法使い達はラーネルと同じか、それ以上に驚いていた。

 だから現在で無詠唱で魔術を使えばかなり目立つと思って使わないでいたが間違いではなかったみたいだな。 

 ここに居るラーネル達三人には無詠唱で魔術を使える事を知られたが他言しないようにお願いすれば良いだろうし、軽く暗示の魔術も使うつもりなので多分、大丈夫だ。

 それに仮に誰かに話したとしても冗談やふざけているだけだと思い、信じる人はなかなかいないだろう。


「もういいですか、ラーネルさん。もういいなら模擬戦を続けますよ。それとも降参しますか?」


「……まだです。まだ私は負けた訳ではありません」


 思った通りラーネルは降参する事を拒んだ。

 模擬戦を続けようとするラーネルの言葉だけ聞けば模擬戦をを諦めず挑もうとしているみたいに思えるが、その表情は暗く悲愴感が漂っている。


 ラーネルは、もう自分では勝てない事を分かっているんだろう。彼女の唯一の勝機は魔法・魔術の発動速度の差だ。

 魔術(投石)を普通に詠唱して使うとすれば五節の詠唱が必要になる。それに比べてラーネルの魔法ウインドカッターは「風の刃よ」と一言で済む。

 おそらくだがラーネルは、発動速度の差を活かして一方的に攻撃をする事により、勝とうとしていたんだと思うが俺が無詠唱で魔術を使う事により、その作戦は崩れた。


 作戦が崩れた以上、ラーネルには、もう勝機は無いと思っているはずだが降参しないのは魔法使いのプライド故か。

 こっちとしては面倒なだけだが勝負がつくまで付き合うしかないな。


「それじゃあ、続けましょうか」


 再開を宣言してから(投石)で攻撃を再開する。

 今度は無詠唱で来ると分かっていたからかラーネルは身体強化を使い余裕を持って(投石)を躱していく。

 そして数分間、俺が(投石)で攻撃、ラーネルは身体強化を使いながら回避という状態が続き、ラーネルの動きが段々と鈍くなってきたので(投石)が身体に掠り始めるとラーネルは杖を突きだし――


「―――ッ 風の刃よ!」


 ――魔法を使ってきた。


 迫ってくる(ウインドカッター)は左腕に展開した(結界)で何でもない様に防いだが内心ではラーネルが魔法を使ってきたことに驚いている。

 魔法を使うまで時間が掛かったり、動きが鈍くなっているのは改善しないといけないが、今まで身体強化を使い動きながら魔法を使うという事が出来ていなかったが、それができる様になっている。

 必死になっているからか、それともこの瞬間に努力が実ったのか、あるいはその両方か。まあ、要因はどうでも良いか、それよりラーネルができる様になったことの方が大切だ。

 これで彼女は迷宮ボスのミノタウロス戦で連れて行くだけではなく戦力として扱える。俺が戦闘を全部やらなくていいので大きく目立たずに済むだろう。

 今回の模擬戦は面倒だったがラーネルが大きく成長したので結果的には良かったのかもしれない。


「ラーネルさん、やれば出来るじゃないですか」


「うるさい!―――風の刃よ!」


 感心して声を掛けるがうるさいと怒鳴り返される。まあ、さんざん馬鹿にするようなことを言ったから仕方がないんだが。


 さて、そろそろ決めにかかろう。このまま(投石)を使い続けるだけで勝つことが出来るが、それだと実力というより魔力量の差になる。

 動きを予測して(投石)を当てる事も出来るが、それよりも今、自分がやっている事の応用を見せてやろう。

 

「ラーネルさん、そろそろ決めに行かせてもらいますよ」


「やれるものなら、やってみてください!」


 鈍くなっていたラーネルの動きが良くなり速さが増す、魔法を使うより避ける事に専念する事にしたんだろう。

 しかし、動きはもう大体、予測できるようになっているので問題は無い。


 発動する魔術を(投石)から(土壁)に換えタイミングを見計らって二つ(・・)同時に発動させる。


「――ッガ!?」 


 本来の(土壁)は地面から真上に厚さ十センチ、畳一枚ぐらいの大きさの土の壁が出てくるが、今回は真上ではなく斜めに出るようにしてラーネルを間に挟んで二つを発動させ(土壁)の上部でラーネルを挟み捕らえる。

 捕らえたとしても挟んでいるだけでしかも土なので然程、拘束力はないが一時的に動きを止める事はでき、その動きを止めた瞬間(投石)をラーネルの肩に撃ち込む。

 

「そこまで!」


 ラーネルに(投石)が当たると同時にリーゼが終わりを告げ、リーゼとハチを抱えたアスリラは心配そうな顔でラーネルの元に駆け寄る。

 ラーネルは(土壁)に挟まれながら(投石)が当たった肩に手を当てって立ち尽くす。


「大丈夫ですか、ネル」


「どう―――大丈夫です、打撲をしているかもしれませんが骨とかは折れていません」


 ラーネルが模擬戦を終わらせた事に対して怒鳴ろうとしたみたいだが、リーゼとアスリラの心配そうな表情を見て、怒鳴るのを止めて普通に答える。


 模擬戦を終らせられた事を怒りたいが終らせた理由が自分の心配だ、怒るに怒れないだろう。それに手を当てている肩が単なる打撲である事が加減されたという事に気が付いたんだろう。

 俺が本気で(投石)を使えば肩を粉砕する事も出来る。それほどの威力が有る事はラーネル達は知らないが丸太に(投石)がめり込むほど威力が有る事は知っているので肩が打撲程度で済んでいるので加減された事には気が付いているはずだ。


「ラーネルさん、出れますか?」


「はい、大丈夫です」


 俺もラーネルの元に寄って声を掛けると怒っている感じはしないが、気落ちしている声で返事が返ってくる。

 かなり落ち込んでいるな。リーゼと抱えていたハチを下ろしたアスリラに手伝われながらも挟まっている(土壁)から出てくるが表情は暗い。

 下ろされたハチは俺の傍までやって来ると念話で『お疲れ様でアリマス』と声を掛けてから傍に座る。


 落ち込んでいるラーネルに俺が何か慰めを言ってもしょうがない。アフターケアはアスリラ達に任せよう。とりあえず、模擬戦の結果だけ確認を取っておくか。


「ラーネルさん、模擬戦の結果ですが俺の勝で良いですね?」


「はい」


「では、俺の指示に従ってもらいますよ」


「分かりました」


 負けて喜べ何て言うつもりは無いが少し落ち込み過ぎではないか? 俺の我儘かもしれないが、なんか釈然としないな。

 はぁ、気にしても仕方がない、先を進めていくか。


「―――それじゃあ、ラーネルさんは休んでもらって。リーゼさんとアスリラさんはどうします。 訓練しますか、それとも間を置きますか?」


 リーゼとアスリラに訓練をするか、間を置くかと聞いてはいるが実際はアスリラに遠回しに今、ラーネルを慰めるかどうするかを聞く。


「そうですね。訓練をするのは三人一緒にしたいんで私達も休ませてもらいます。

 それにコウセル殿も疲れているでしょ。休憩をして下さい」


 アスリラに言ったつもりだったんだが返事をしたのはリーゼだ。

 リーゼにはラーネルを慰めてほしい事は言っていないがアスリラから聞いたのかな? 慰めるのは一人より二人の方が多分、良いだろう。

 ラーネルを慰めるのを二人に任せて俺は休ませてもらおう。ああ、休む前にラーネルの治療だけはしとかないとな。


「あの、コウセルさん。お聞きしたい事があるんですが良いですか」


 ラーネルの治療をする為に近づこうとする、その前に声も顔も暗くなっているラーネルから声を掛けられる。


「良いですよ。何を聞きたいんですか」


 模擬戦を終ってから、すぐに声を掛けられた事に軽い驚きを感じながら返事をする。何を聞きたいのだろうか。


「私は貴方が魔術を扱うように魔法を使える様になれると思いますか?」


「それは魔法の無詠唱や二重発動の事を言っているんですか」


「はい。私は師はいませんが自分なりに考えたり調べたりして努力をしてきたつもりです。それなのに年下の貴方の方が魔法ではありませんが魔術を上手く使いこなしてました。

 魔術は魔法より扱いが難しいというの。私には魔法を扱う才能は無いのでしょうか」


 後から訓練をする時に色々と説明をしようと思っていたが、今、話した方が良いかな。ついでに暗示の魔術も掛けておこう。


「魔法の才能が有る無しは俺には分かりません。師が居ないと言いますが誰かに師事するのも師事する人がキチンと知識と技術を持っていないと師事しても意味がありません」


「では、貴方には才能が有り私には才能が無かったという事でしょうか」


 俺に才能か。無いという訳ではないが俺ぐらいの才能を持っている奴は地球ではゴロゴロいる。特別、優秀という訳ではない。

 俺が今、色々と出来るのは前世の記憶が有る事、それと知識量の違いだろう。ラーネルは知らず俺は色々と知っている。

 ただ、この事を馬鹿正直に話す訳にはいかないのでなんて話そうかな。


「ん~、別に俺に特別、才能が有る訳ではないですよ。俺に魔術を教えてくれた人は覚えるのは早いと言ってくれましたが」


「その覚えるのが早い、というのが才能ではないんですか」


「まあ、それが才能と言えば才能なんでしょうが」


 と言うか現在モータルセンヌに残っている魔術の大半は俺が残したものだ。余程、特殊な物でない限り、覚える必要なく使う事が出来る。

 

「けど、魔法の無詠唱と二重発動は今のラーネルさんでも出来ますよ」


「私には無理です。変な慰めは止めてください」


「別に慰めで言っている訳ではないですよ。実戦で使えるかと聞かれれば、まだ無理でしょうが使えるかどうかなら使う事が出来ます」


「どうして貴方に分かるんですか! 私が出来ないと言っているのに!」


 憐れまれ慰められていると思っているのかラーネルが再び怒気を表すが、説明をするんで少し待ってほしい。


「考え方を少し変えるんですよ。ラーネルさん詠唱しなくても風を吹かせる事は出来ますよね」


「それは出来ますけど、だから何ですか」


 ラーネルの怒気は収まってはいないが渋々、俺の質問には答えてくれる。


「それが無詠唱の第一歩なんですよ。詠唱無しで風を吹かせる事が出来るなら後は詠唱無しでイメージだけで(ウインドカッター)等の魔法を使える様になれば無詠唱で魔法を使っている事になります」


「無理です。詠唱無しで魔法の力を扱うのが、どれだけ難しいか知らないから、そんな事が言えるんです」


「難しいのは当たり前じゃないですか。だから無詠唱は高等技術と言われているんですよ。

 まあ、俺は魔法の力を使う感覚は分からないので、これ以上、何も言えませんが、少なくとも俺が無詠唱で魔術を使えているのは魔術を詠唱して使う時に動く魔力の流れを自力で再現しているからですよ」


 ラーネルの疑問に答えながら(投石)が当たった肩を(回復)を無詠唱で使い癒していく。

 治療されている所を見るラーネルの表情は怒気が潜み、複雑そうな顔をしている。


「では、二重発動はどうして使えると思っているんですか」


「簡単ですよ。ラーネルさんは身体強化を使いながら魔法が使える様になりました。それは要するに魔力を二つに分けて別々に扱う事が出来るという事です。

 今のラーネルさんなら少し意識するだけで魔法を二つ同時に使う事は出来ますよ」


「……そうですか」


 二重発動についての説明は自分でも納得できる部分が有るのか、あからさまに疑う事はして来なかった。


「はい。両方とも使いこなすとなれば、まだまだですが、これからの訓練次第では実戦で使えいるようになりますよ」


「分かりました。ありがとうございます」


 ラーネルから礼を言われた。これはアスリラ達がフォローを入れなくても折れる事はなさそうだな。

 あくまで俺の私見だから何とも言えないが必要ならアスリラ達がフォローを入れるだろうから、後は二人に任せよう。


次回は今回よりは早く更新できると思います。

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