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七年経過、只今勉強、修行中 3


父ザーインから、上級魔術が失われていると聞いた、翌日、家族揃って畑に居た。俺とザーインは鍬を持っている。


「ザーイン、コウセルに鍬を持たせるのは、早過ぎると思うんだけど。畑仕事も私が耕した方が早いと思うし」


母マリスは俺が鍬を持つことに不安なようだ。


まあ、分からない事はない。七歳の子供が自分の身長よりも長い鍬を使うというのだから。


「大丈夫だ、マリス、私がコウセルを見ている心配しなくても良い。コウセルここで一回、鍬を振ってみろ」


「うん」


身体全体に身体強化を施し、身体強化を終えると、鍬を持ち上げ振り下ろす。ちょっと、バランスを取るのがむずかしかな。


「ほら、大丈夫だろ、心配するな。マリスは堆肥を撒き終われば、家事をしてくれ」


「大丈夫だよ、お母さん、危ないことはしないよ」


「分かったは、コウセル、無茶しちゃ駄目よ。ザーインもちゃんと見ていてね」


マリスは、まだ、心配そうな顔をしているが、姉シェッタと一緒に堆肥を撒く仕事に取り掛かっていた。


俺とザーインが畑を耕し、マリスとシェッタが作って置いた堆肥を撒く。


畑仕事を続けていると、教会の鐘が聞こえてきた。太陽も真上まで昇って来ており、もう、昼になっている。


鐘は日に六回、鳴らされる。朝、昼、晩と、朝と昼の間に一回、昼の鐘が鳴ってから地球時間で一時間後、そして昼と晩の間に一回鳴る。


昼の鐘から一時間後に鳴る鐘は、昼休みの終わりを告げる鐘らしい。


前世の記憶では、都や大きな町だと基本十二回、小さな村だと五回鳴らす、この村は六回鳴らすので少し変わっている。


「ザーイン、コウセル、お昼にしましょう」


マリスが声を上げた呼んできた、ザーインも聞こえたらしく、耕す手を止めて、マリスの元へ向かい、俺もマリスの元に向かった。


マリスに食事の前に手を洗うように言われ、桶に入っている水で手を洗う、温い水だが、身体が火照っているせいか、冷たく感じて気持ちが良い。


畑を見ると、堆肥はもうすぐ、撒き終わるだろう。耕すのは、まだまだ時間が掛かる。


俺と比べてザーインの方が耕している面積が多い。身体が小さいと効率も悪い。


ああ、前世で開発した農業魔術が使えれば楽なんだが、農業魔術を使えれば耕すのも、土壌の質を良くするのも簡単だ。


「コウ、お昼の準備できたよ」


「うん、分かった」


シェッタに呼ばれ、返事を返しながら、思考を打ち切る。


家族で円に座り食事を始める。


「「「「いただきます」」」」


お昼はサンドイッチで具材は、キャベツ、タマネギとイノシシ肉を焼いた物だ。


肉が有るだけで、十分贅沢なのだが、調味料が欲しい。


「コウセルが畑を耕せる様になると、仕事が早いわね」


昼食が終わると、マリスが畑を見ながら声を掛けてきた。


俺が身体強化でマリスと同じぐらい仕事がこなせる様になり、仕事の進行が早い。


「でも、コウセルも疲れているでしょ、膝枕して上げるから、次の鐘が鳴るまで、横になって休みなさい」


そう言って、膝をポンポンと叩き、アピールしてくる。横になって休もうと思っていたが、少し恥ずかしいな。


俺が恥ずかしがって躊躇していると。


「私の膝枕は嫌なの、コウセル」


悲しそうな顔と声を出してきた。卑怯だ、俺が恥ずかしがているのをからかう為に、悲しそうな顔と声をだすなんて、こっちが折れるしかない。


「そんな事ないよ、膝枕してくれる」


俺からの返答を聞いて、マリスは嬉しそうな顔をする。少しばかり嗜虐的なモノが含まれているように思うが。


マリスの膝に頭を置いて横になる。横になって見上げた、マリスの顔は母性を感じる笑みを浮かべて、頭を撫でてくる。


頭を撫でられる感触が気持ちがいい。気持ちがいい感触に身を委ねて俺は眠りについた。






教会から鐘の音が聞こえてくる、寝ていたのはだいたい四十分ぐらいか?。


「コウセル、時間よ起きなさい」


マリスに優しく揺り起される。う~ん、もう少し寝ていたかったな。


マリスも残念そうな顔をしていたが、仕事を再開する為、堆肥をシェッタと取りに行き。


俺も鍬を手に持ち、畑を耕すのを再開した。


堆肥を撒き終わったマリスとシェッタは家に戻り、ザーインと二人で仕事をしていたが、ザーインは用事が有るから、残りを耕しておいてくれと、俺に言い、俺を置いて、村の方に行ってしまった。


父よ、少し酷いんじゃないだろうか。


残りを耕し終えると、日が沈み、そろそろ晩の鐘が鳴る頃だ。・・・・せっかく一人なんだし、農業魔術でも使ってみるか。


何をしよう、あんまり改良し過ぎると気味悪がれる、土質はザーインも知っているから弄れないから、病原菌と害虫の駆除、魔力による栄養素の補給にしておくか。


病原菌と害虫は完全駆除して、急成長すると怪しいから栄養素の補給はほどほどに、あっ、害獣避けの結界も張っておくか、違和感がないように隠密性も付与しないと。


怪しまれないようにする為に、あまり改良は出来なかったが仕方が無い。


農場魔術を一通り行使すると、晩の鐘が聞こえてきたので、俺は帰宅した。


俺が帰宅するとマリスとシェッタが夕食の準備をしていた。ザーインはまだ、帰って来ていないようだ。


「コウセル、ザーインはどうしたの」


「お父さんは畑仕事している途中で、用事が有るからて、村の方に行ったよ」


「そう」


この時マリスは表面上、怒っていなかったが。ザーインが帰ってくるなり張り手でザーインの頬を叩いた。


後姿しか見ていないが、きっと魔物すらも逃げ出すような、凄い形相をしているんだろ。滅多に表情が変わらないザーインの顔が引きつっていた。

――――どうして、こう身近な女性は鋭い張り手をするんだ、サティアの張り手も鋭かった。


「ザーイン!どうしてコウセルを畑に置いて行ったの、鍬を使うから見てるんじゃなかったの!」


「マリス、待ってくれ、村で大切な用事があったんだ」


「コウセルも、連れて行けばいいでしょ」


「コウっ、子供を連れて行けなかったんだ、それにコウセルは仕事を終えていなかったんだ」


「貴方も一緒に耕せばすぐに終わるでしょ。畑にイノシシが出たばかりでしょ、またイノシシや野犬が出てきたらどうするの」


そのときは全部、魔法で返り討ちだな。


その後も、マリスの説教は続き、夕食が遅くなった。父よ、俺を置いていくわ、夕食を遅れさせるとか、本当に酷いぞ。






翌日、マリスの怒りは収まっていなかったが、それ以外は普通の朝で、朝食を終えて、朝は畑仕事を手伝い、お昼からはリムス神父の元を訪れた。


魔術の教習も受けたいが、今は歴史の勉強がしたい。


今まで、歴史については後回しにしていたが、ザーインの話が本当なら、魔術の衰退が激しすぎる。魔術師としてこれは見過ごせない。


「こんにちわ、リムス神父様、いらしゃいますか」


「こんにちわ、コウセル君」


生活スペースからリムス神父が出て来る、手には本を持っている。恐らく、それが魔導書なんだろう、本の厚さは薄く、魔力を帯びていない、術式だけが書いてあるのだろう。


魔術の教習も受けたいが、歴史の勉強の事も言わないと。


「リムス神父様、魔術を習う以外に、お願いしたい事があるんですが」


「歴史の勉強の事ですか」


あれっ?何で知ってるんだ


「不思議そうな、顔をしていますね。昨日、ザーインさんからお願いされて、魔術以外にも歴史や算術、他にも色々、教えてやって欲しいと」


ザーインの大切な用事て、俺の教育をリムス神父に頼む事だったのか?


う~ん、これは本当に感謝しないといけないな。田舎の農民に歴史や算術の勉強など、はっきり言って必要ない。


計算は足し引きぐらい出来れば、十分だし、歴史の知識なんて無くても生きていける。


リムス神父から受ける教育は外に、村を出て行って暮らす為の知識だ、遠回しだが村を、家から出て行く許可を貰ったに等しい。


きっと金銭の受け渡しも有っただろ、勉強を見て貰うのにリムス神父を長時間拘束する、対価として金銭が支払われている筈だ。


ザーインは相変わらず、無茶をする。教育費に、それなりの金額を払っているはずだ、冒険者時代に稼いで貯蓄している、お金も全部使っているかもしれない。家族に負担を掛けないために、仕事の量を倍のままにするだろう。


何より、未来の最大の労働力も無くなり、老後が厳しくなる。


だから、期待に応えよう、いや、期待以上に応えてみせる。本格的に動くのは、まだ先だが、今からでも隠れながらやっていこう、目指すは貴族すら楯突く事が出来ない豪農だ。


とりあえず今は、リムス神父との勉強だ。


「リムス神父様、勉強、よろしくお願いします」


腰を折り、頭を下げて、お辞儀する。礼儀は大切だ。


「はい、わかりました。コウセル君、頭を上げてください、庭で回復魔術の練習から始めましょう」


俺はリムス神父の後に続いて庭に出る。


庭に置いてあるテーブルにリムス神父と一緒に座る。魔術は一日で覚えると異常すぎるから、一ヶ月経ったら出来ることにするか。それでも十分早いだろう。


リムス神父がテーブルの上で魔導書を開くが、殆どのページを飛ばして後、三ページしか残ってないぞ。


「リムス神父様、前半部分を大分飛ばしてますが、いいんですか?」


はぁ~~、と深い溜め息を吐かれた。聞かないほうが良かったのか?


「この魔導書の著者は火属性の魔法使いなんです。飛ばした部分は彼の自伝で面白くないし、何の教訓にもなりません、残っているページは彼が使う事の出来た魔術の術式が載っています」


ただの自伝本かよ。でも、リムス神父は、そんな物、何で大事に保管してるんだ?


「こんな物でも、魔術の基礎言語が記載されています。今では魔術の基礎言語は最盛期の十分の一も残っていません」


「はぁ?」


最盛期が何時か知らないが、前世の俺が生きていた時代だとすると、全然進歩していない事になるぞ。


「ああ、すみませんね、コウセル君、回復魔術の練習でしたね。今から私が唱える呪文を復唱しながら魔導書の文字を見ていて下さい」


これが今の魔術の習得方法なのか、効率が悪過ぎるし、完全に一つの魔術だけを覚えるだけだ、ここから発展していかない。


どうやら魔術の現状は俺が思っているよりも悪いみたいだ。


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